第14話 魔王城再び
「ぐすっ……お父さん、お母さん……」
「うう……うう……」
テントの中からは子供達のすすり泣く声が聞こえてくる。今日は疲れているだろうし、いろいろとあった。しばらくすれば泣きつかれて眠るだろう。俺もあの頃はそうだったからよく分かる。
「明日は面倒なことにならなきゃいいんだけどな……」
地べたに寝転がりながら、空に広がる一面の星空を見上げた。周りには明かりひとつないため、星空がとても綺麗に輝いて見える。
街で購入したテントや寝袋は子供達に使わせた。俺はそのテントから少し離れた場所で横になっている。障壁魔法による結界を展開しているので、魔物や人は入ることができない。
あのあとルトラやビーネやアレクからこの世界のことについて聞いた。やはりこの世界では人族と魔族が長年戦争をしていて敵対関係にあることが分かった。
「これが戦争か……」
これまで彼らの魔族の集落はひっそりとした場所に人族から隠れて住んでいたらしい。そこへいきなり例の人族の騎士団が現れて、彼らの村に住む人達を殺していった。
もちろん村の人達も必死に抵抗をして、何人かの敵を倒したらしいが、戦闘経験の豊富な騎士団に勝てるわけもなく、すぐに決着はついたようだ。
彼らの両親や村の大人は必死に子供達を逃がそうとしたのだが、残念ながら彼らは捕まってしまい、他の子供達は殺されてしまった。
「このだけ話を聞いたら、確かに人族は残虐だと言っていた魔族の気持ちも分かるんだけどな……」
魔族のほうは人族を残虐だと言い、人族は魔族のことを残虐だと言っていた。お互いに殺し合いの戦争をしているのだから、それも当然と言えば当然か。
少なくとも俺にはどちらの種族が悪い、どちらの種族が残虐かなんて比べる気もない。できるだけ穏便に済ませることができればいいんだがな……
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「さて、朝ご飯も食べたし、そろそろ移動するとしよう」
特に魔物が襲ってくることもなく、無事に夜を明かすことができた。オッサンは地面にそのまま寝ていたので、少し身体がガチガチになってしまったみたいだ。……もう歳を感じてしまうぜ。
昨日と同じような焼いた肉とパンや果物などの簡単な朝食をすませた。
「え、えっと、ジンさん。これからどこに行くのですか?」
「とりあえず、魔族のお偉いさん達にお前達の保護を求めるのと、人族との戦争の現状を確認しに行く」
ルーネからの問いに答える。
街でマルコ達から人族側としての魔族に対する見解は確認した。今度は反対に魔族から人族に対する見解を確認しておきたい。
「……お偉いさんって誰のことだよ、おっさん」
昨日よりは多少は落ち着いたのか、アレクは俺に対して多少は普通に受け答えするようになった。
「魔王城にいるやつらだ」
「はあ? 何言ってんだよおっさん!」
「まあ何かあってもお前達は守るから安心しろ。それじゃあ行くぞ、転移!」
「ジ、ジンおじさん!?」
「ちょ、おっさん!?」
ここに来る時と同様に子供達を抱えて転移魔法を発動させた。
「……こ、ここは?」
「うわあ~大きいお城!」
「す、すげえ……」
転移魔法で転移してきた場所は、俺が魔王召喚で召喚された魔王城の空の上だ。
いきなり魔王召喚されたあの部屋に転移することも可能だったが、四天王の中でもリーベラとかいうやつ以外は俺に対する敵意があった。面倒ごとを避けるためにも、正面から入ったほうがいいだろう。
……あんな感じで城を飛び出してきたわけだから、例の魔王軍四天王とやらが俺に対してどういった感情を持っているのかは分からない。
人族と戦争をしているわけだから、同族である子供達の保護はしてくれるかもしれないが、たとえ職業が魔王であったとしても、人間である俺を敵として見なすかもしれない。
その場合には子供達を連れてまた転移魔法で逃げるとしよう。
「頼もう!」
「……汝らは何者だ!」
「鎧など着込んで怪しい奴だ! なぜこんなところに子供がいるのだ!」
魔王城の入り口には5m近くある大きな門があり、周囲には高い壁が存在し、侵入者を防いでいた。
そして門の前には3mほどの巨大な体躯で牛頭のミノタウロスのような兵士2人が門を守っていた。
「魔王軍四天王のリーベラをに用がある。リーベラに魔王がやってきたと伝えろ」
俺が魔王召喚された時、あのリーベラと呼ばれていた女性は一番話が伝わりそうに思えた。まずは彼女と話をさせてもらおう。……言っておくが、綺麗な女性だから彼女を選んだというわけではないぞ。
「リーベラ様だと? そのような話は聞いていないし、魔王軍四天王のリーベラ様がお前ごときと話すことなどない!」
「言うに事を欠いて魔王様だと? 今は亡き魔王様に対する最大の侮辱としてとらえてよいのだな!」
まだ魔王召喚の儀で人間である俺を召喚したことは門番の2人には伝えてないらしい。それならば今は亡き魔王を語る偽物として門番が怒るのも無理はない。
2人はその巨大な身体よりもさらに長い、巨大な槍を俺に向けた。さすがにこのままでは信じないか。
「魔王威圧」
「うおっ!?」
「な、なんだと!」
さすがに魔王城の門番ということだけあって、魔王威圧でも膝をつくようなことはなかったが、一歩だけ気圧されたのを俺は見逃さなかった。
「とりあえず、上に話を通してみろ。こちらには戦闘の意思はない。だが、もしもそちらが敵対してくるようなら、この城ごと吹き飛ばしてくれるぞ」
オッサンなりに精一杯魔王っぽいムーブをかましてみたのだがどうだろうか?





