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呪賦ナイル YA  作者: 城山古城


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第十一話 故に曰く、勝は知るべくして、為すべからず その一

 八


 暦は晩秋(ばんしゅう)である。秋の始まりは夏ように感じ、中間頃から一気気温が下がり、今日に至っては、海風から冬が訪れたと思わせる程の冷え切った風が生徒たちを襲う。それともに太陽が出ていない曇り空が一段と気温を下げていた。生徒たちの服装はすっかり冬模様であり、長袖の服装にもう一枚着込んでも寒いと思うぐらいである。


 翼志館の勢力の人間は緑色の腕輪をつけていた。これは学戦リーグのときに使用した呪防具だった。学戦リーグで収集したデータを基に改良され、自分の位置を把握することができるのと、情報を逐次大会本部、また勢力ごとに誰がどこに居るのかを特定できるようになっていた。


 由美子はそれを見て、吐き捨てる。


「あの銭ゲバめ!!」


 忠陽はすぐに一条咲耶に対しての言葉だと理解し、鞘夏と二人でその光景を微笑ましく見ていた。


 大会委員である(そう)から今回導入した呪防具についてのレクチャーを受け、動作試験、通信確認を行った。機器に不具合がないことを確認すると、宗はその場をニコニコと笑みを浮かべた竹中に譲った。


「さて、諸君。学戦当日だ。今日まで、いろいろと準備が大変だっただろう。だが、今日はしっかりと楽しもう。あっ、だからといって、宗先生を襲うのは止めてくれ。今の先生はあくまで中立だ。まあ、周藤(すどう)くんたちの作戦ぐらい教えてくれるんじゃないかな?」


 竹中は宗を見ると、宗は笑みを浮かべながら首を振った。


「うん。流石にダメのようだ」


 一部から失笑される。


「まあいい。今回は絹張くんが、昨日まで一生懸命に負けない算段を考えてくれた。安心してくれ。その指示に従えは東郷に負けやしないさ」


 その言葉に一同、ピリッとした空気に変わる。


「さあ、皆。油断せずに行こうか」


 その声に殆どの人間が気合を入れた声で答える。


 竹中はいつも通りにニコニコしながら、本拠地の陣営に入っていった。


 防衛部隊四軍はそれぞれの拠点へと向かい、攻撃部隊四軍は本拠より少し離れた位置に移動する。攻撃部隊の配置は互いに一定の配置ラインが決められており、それを越さなければどこでも良い。また、攻撃部隊というのは学生たちが考えた部隊編成であって、正式には最大二十人による部隊を九部隊作ることができるとなっており、攻撃部隊が拠点に戻り、防御戦を行っても良い。その逆も然りである。ただし、本拠地防衛部隊は九部隊とは別として十五名の編成であり、この部隊だけは本拠地防衛のみの部隊である。他拠点防衛、敵の拠点を攻めることはできない。


 忠陽の所属は本拠地の防衛部隊ではなく、遊撃部隊の祝園部隊であった。これは竹中による配置であり、祝園のからも竹中の指示に従うようにと言われていた。


 生徒会長からの訓示が終わると、忠陽は竹中のもとへ訪れる。


 忠陽は昨日ことが許せない自分がいて、竹中に対して無意識に敵愾心(てきがいしん)を向けていた。周りの人間はそれに気づかないはずもなく、緊迫感が伝播していた。


「さて、賀茂くん。君にやってもらうのは敵の威力偵察だ。各拠点、そして、本拠地に単独で奇襲を掛けてくる。君の隠行を使えば大丈夫だろ?」


「はい。でも、それは何のためですか?」


「言ったよ。威力偵察だ」


「今すべきことじゃないですよね?」


「いや、今しかできないことだ」


 忠陽は不満に覚えながらも竹中を見る。竹中はニコニコといつもの笑顔だった。


 忠陽は黙って、その場を去ろうとしたとき、竹中に声を掛けられた。


「賀茂くん、一撃だ。そうだな、君がよく使う石礫(いしつぶて)の大きいやつを防御拠点に放つんだ」


 忠陽は振り返り、また竹中を見る。笑顔ではあるが、目だけ笑っていない。


「分かりました」


 忠陽はそう言い、その場を去った。


 大地は地べたに座りながら、胡座をかいていた。その隣には由美子が居た。


「なぁ、姫さんよー。本当にいいのか?」


「なによ、どうせ作戦伝えても分からないでしょ?」


「まあ、そうなんだけどよ」


「あなたの作戦は簡単でしょう? 敵陣に突っ込む」


 由美子は大地のしおらしい態度を見て、ニヤッとする。


「もしかして、怖気づいた?」


「なんだと!?」


 由美子の挑発に大地は立ち上がった。


「だって、あなたのやりたいようにやらせるのよ? 何が悪いのよ?」


「いや、悪くねえけど、どうもおかしいんだよ。いつもの姫さんなら、あれはするな、これはするな、それはダメ! なんて言うだろう?」


「べ、別にいいじゃない!」


「うわ〜。姫さんって以外に嘘がヘタクソなんだな」


「私が嘘ついてる? バカも休み休み言いなさい!」


「バカ……バカ……バカ――」


 由美子は大地の胸ぐらを掴む。


「わざと言ってるわよね?」


 大地は笑って誤魔化した。由美子は大地から手を離し、鼻を鳴らした。


 大地は頭を掻きながら由美子に言う。


「はっきりと言えよ。言いたいことが言えない仲じゃねぇだろ?」


 由美子は大地の横目で一瞥し、言った。


「私は結局、海風高校あなたたちに迷惑をかけることをしている」


「まあ、気にすんな。勢力が変わってもダチであることは変わらないんだからよ」


 由美子は大地を見て、嬉しそうな顔をしていた。


「ど、ど、どうしたんだよ?」


「え!? たまには良い事言うじゃない」


「あのな、あんたは俺の事をどんな風に思ってんだよ?」


「……不良?」


 大地はため息をつく。


「ごめんなさい。いい不良かな……」


「それ言葉おかしいだろ」


「あ、本当だ」


 由美子は大地に指摘され、悔しい顔になっていた。大地はそれを見て、また、ため息を吐いたが、すぐに気分を切り替える。


「さて、ダチの頼みじゃあやるしかないよな、姫さん!」


「ええ! 味方ごと倒して来てらっしゃい。あなたが暴れれば暴れるほど、海風高校の待遇はよくなるわよ!」


「そんなくだらない事で戦えるか! 俺は強いやつと戦うだけだ」

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