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呪賦ナイル YA  作者: 城山古城


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第十一話 由美子の懸念

 次の日、忠陽は昼になり、食堂に行くと先にテーブルに座って、由美子と鞘夏が待っていた。二人は笑顔で談笑をしており、忠陽に気が付きくと、由美子が手を上げた。


 忠陽はその光景に笑みを浮かべた。


 忠陽がテーブルまで近づくと、由美子が問う。


「どうしたのよ? 今日はご機嫌じゃない?」


「昨日ね、武さんたちに会ってきた。会長の指示だけどね」


 由美子は顔を歪める。


「でも、武さんたちって本当に仲が良くって、見てて良いなって思ったんだ」


「なによ、私達だって仲が良いでしょう?」


 由美子は口を尖らせる。


「うん。そうだね」


 忠陽が微笑み返すと、由美子は顔を背けた。鞘夏はその行為に苦笑いした。


「武さんと松前さんが、神宮さんを褒めたよ。海風高校を改革した手腕は見事だって。今後の北区の統治に関して参考になったって」


 由美子は振り返り、忠陽を見た。


「たしか、この前、海風高校の生徒会長代理の中村さんが、学校を岐湊高校に視察させてもいいかって言われたから、ご随意にって返した覚えがあるわ」


「武さんは北区地域で新たな統治システムを考えてるみたい。その方法を模索してて、海風高校が以前より評判が良くなっていることを聞きつけて、視察したみたいだよ」


 由美子は眉間に皺を寄せながら腕組みした。


「見せないほうがよかったかしら……」


「そのおかげで、岐湊高校の戦力が分かったよ。松前さんがその礼だって言ってた」


 忠陽は満面な笑みを浮かべたが、由美子は釈然としない様子だった。


「賀茂くん、そういえば法西にはいつ会いに行くの?」


「今日は会長のところによって、東郷には行くつもり。だから、来週かな?」


「分かった。私もその方が都合がいいわ。学戦も――」


「神宮さんも行くの!?」


 由美子と鞘夏は大声を上げた忠陽に驚いた。


「な、な、なによ、急に! 大声出さないでよ……」


「だって! ……だって、法西さんに会いに行く必要はないじゃないかな?」


「法西は私に会って、私達に手を貸すか、決めるんでしょう? だったら、行く必要があるじゃない」


「で、でも、危険だよ?」


「なに、危険な相手を私に紹介するつもり?」


 忠陽はグゥーの音も出ない状態になった。


「賀茂くん、私を誰だと思ってるの?」


「えっと……」


「少なくとも、あなたより、強いつもりでいるわよ?」


 忠陽はそれが事実であるから言い返せなく、苦笑いした。


「でも、待ってくれないかな? 答えを出したいし」


「分かってる。明日、学戦もあるし、来週以降でお願いするわ」


 忠陽は学戦という話を聞いて、思い出す。


「そうか、明日は学戦か……」


 忠陽が眉間に皺を寄せるのを見て、由美子は心配そうに問う。


「どうしたの?」


「いや、周藤さんたち会ってくれるかな……」


 鞘夏と由美子は笑う。


「なんで笑うのさ」


「だって、ねー、鞘夏」


 鞘夏は頷く。


「賀茂くん、学戦になんて興味ないでしょ? 賀茂くんらしいと言えば、らしいんだけど」


 由美子と鞘夏は互いの顔を見合って笑っていた。


「なんか、二人だけが通じ合っているのは癪だな……」


 忠陽が不満そうな顔すると、鞘夏は慌てて、立ち上がった。


「なに? 私に嫉妬? 鞘夏は簡単に渡さないわよ」


「ゆみさん!」


 鞘夏の慌てふためきように忠陽も自然と笑みが溢れ、鞘夏は困った顔しながら椅子に座った。


「賀茂くん、放課後、会長のところ、行くんでしょ?」


 忠陽は頷く。


「会長の動きがおかしいの。探ってきてほしいんだけど――」


「分かってるよ」


「だぶん、賀茂くんと私の心配事は違うと思う」


 忠陽は首を傾げると、由美子は忠陽に近づき、小声で話す。


「私のは、このままじゃあ、学戦の前に絹張先輩がパンクしちゃって、まともな指揮が取れなくなるってこと」


 忠陽は辛うじて声を押し止め、目を見開き、声を低くして由美子に問う。


「どうして、そう思うの?」


「会長、今回は絹張先輩たちに任せているんだけど、作戦も指揮系統の整理も全部絹張先輩にやらせようとしてるの」


「それって、普通じゃないの?」


「普通じゃない。ある程度は他の人に仕事を振ってあげないと処理しきれない。絹張先輩、真面目だから全部に答えようとして、余計に頑張っているのよ。これじゃあ、学戦中、絹張先輩がなんでもかんでもやらなきゃいけなくなっちゃう。その結果、指揮が上手くできなくなるわ」


「でも、神宮さんは僕たちを上手く指揮してたよね……」


「辛うじてね。私、賀茂くんが命令無視したこと、忘れてないから」


 由美子の恨めしそうな目が肌に刺さり、忠陽は苦笑いする。


「それよりも、一番は人数の問題。百五十名ぐらいの人数を一つの指示で動かすなんて無理。現場でも指揮官がいないと……」


「そのための部隊長じゃないの?」


「そうなんだけど……」


 由美子は鞘夏を見る。鞘夏は困った顔をしていた。


「昨日、私が生徒会室に人員の件で報告しにいったんだけど、会長が絹張先輩にあれはどうだ、これはどうだって聞いてたのよ。絹張が歯を食いしばってやられているから、帰りに鞘夏に聞いたら、鞘夏がサポートに入ったときから、会長はずっと絹張先輩に質問攻めらしいの。最近、絹張先輩が答えに詰まることが多くなってるみたい」


「それは……」


 忠陽は想像するだけで、辛いものを感じる。


「絹張先輩は、かなり無理をされていると思われます。忠陽様、今日一日でも休むように、竹中会長にご進言頂けませんか?」


 鞘夏は忠陽に真剣な顔で訴えていた。


 忠陽は鞘夏対しての力強く頷いた。言葉がないのに鞘夏は安堵した表情をしていた。

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