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呪賦ナイル YA  作者: 城山古城


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第十一話 新たな統治システム

 (まこと)は忠陽から竹中の話を聞いて、笑っていた。一方、浩平と遠山は苦い顔をしている。


「亮くんはいつもながら大胆だね」


 真は困り顔の忠陽を見て、言った。


「お前もそれでここに来る度胸を褒めたやりたいぞ」


 忠陽を浩平の言葉に苦笑いをしようとしたとき、浩平は続けて言う。


「言っとくが、本当に褒めたいわけじゃないからな!」


 静かな怒りが忠陽の体に突き刺さる。


「まぁまぁ、浩平。どこかのタイミングで亮が動くことは分かってたんだから、亮くんが先にけしかけて来ただけ良しとしようよ」


 浩平は息を吐き、「お前は甘い」と一言呟く。


「でも、真くん、こちらの戦力を話すのはどうなの?」


 遠山が真に聞いていた。


「いいんじゃないかな? 賀茂くん話では、今回の目的は東郷みたいだし」


 忠陽は話がすんなりと(まと)まりかけているのに驚いた


「どうしてですか? これも会長の策略かもしれないですよ」


 忠陽の言葉に真たちは笑う。忠陽はポカーンとしていた。


「賀茂くん、君の言うとおりだよ。だけど、僕は君より亮くんを知ってる。亮くんが君を寄越したってことは、少なくとも僕らに対して友好的に物事を運ぼうと思っているみたいだよ」


 忠陽は喜んでいいのか悪いのか複雑な顔をしていたため、また笑われた。忠陽は笑われて、恥ずかしい気持ちになった。


「亮くんはさ、たまにここに来るんだよ。その時は何か良からぬことを考えてるときなんだ。ああ見えて、友達を騙したりして、心が傷まないわけじゃない。だから、僕の様子を見て、その線引きをする癖があるんだ。これ、亮くんには内緒だよ」


 忠陽は頷いた。


「でも、僕だからってことはないんじゃないんですか?」


「これが安藤や絹張、戸次なら門前払いだ」


 浩平の一言に真も遠山も頷く。


「だが、俺達はお前にいい印象を持っている。それにさっきからお前の言動は、竹中の味方というよりはこっちの味方だからな」


「そだねー」


 遠山も同意する。


「賀茂、お前はなんのために竹中のメッセンジャーをやってる?」


「僕は……。僕は、神宮さんのためにやってます。神宮さんには味方が必要だから……」


「そうか。その言葉を信じよう」


 浩平は納得したような顔だったが、遠山はニタニタした顔で忠陽に聞く。


「ねえねえ、賀茂くん。神宮のこと好きなの?」


「おま、バカ!」


 浩平は遠山に大声を上げる。


怒鳴(どな)らないでよー」


「今のは遠山が悪いよ」


 真に優しく嗜められ、遠山は口を尖らせる。


「なにさぁ〜」


「それで、賀茂くん、遠山への答えは?」


「真、お前まで……」


「聞いたからには答えは聞きたいだろ?」


 浩平の肩を落としていた。


「えっと……好きですよ、神宮さん」


 遠山の顔は一気に笑顔になる。


「妹みたいに我儘なところはありますけど、尊敬できて、面倒みがいいんです」


 遠山はそれを聞いて、忠陽の好きの意味を悟り、舌打ちをする。浩平はその変わりように恐怖していた。


「僕だって、神宮さんとずっと一緒にいられるわけじゃない。だから、今のうちに神宮さんにはいっぱい仲間を作ってほしいなって……」


 遠山は深いため息を吐き、口を開く。


「それ、神宮に言った?」


 忠陽は遠山の圧力に押され、恐怖する。


「いえ……」


体ごと近づけてきた遠山に忠陽は後ずさる。


「ゼッッッッッッタイに、言わないほうがいいよ!」


「は、はい……」


 遠山が忠陽から離れると、真が話題を変えた。


「ところで、神宮は、来年、生徒会長になるの?」


「いえ、神宮さんは出ません。絹張さんが生徒会長になります」


「そっか……」


「どうかしたんですか?」


「いや、これからの事を考えて、いずれはそっちに話を持っていこうと思ったんだけどね……」


 忠陽は首を傾げる。


「賀茂、法西は今の岐湊をどう表現していた」


 忠陽は浩平に問い詰められ、戸惑いながら答えた。


「えっと……、岐湊は元の不安定な状態に戻ると言っていました……」


「そのとおりだ」


 浩平の顔はニヤつく。


「だが、それが分からない俺達じゃない。分かっていて、何もしないわけないだろう」


「どうするんですか?」


「悪いが、教えない」


 不敵な笑みを浮かべた浩平を見て、忠陽はしまったと思い、悔しい気持ちなった。


「浩平、それはダメだよ。カマをかけて、情報を抜き出すなんて」


 真はそう言いながら、忠陽に、にこやかなな笑顔を向ける。


「実は北区の地域を新たな形にしようと思ってる。具体的言えば、どこが主任理事をするということは(こだわ)らない。ただ、新しい統治システムを受け継いでいけばいいと思ってるんだ」


 忠陽はその考え方に驚いた。それと同時にそんなことができるのかと疑問の余地がある。


「この北区は強い奴の学校が主任理事になるというのが掟みたいになっている。だけど、その考え方は従来通りの統治システムじゃあ合わないんだよ。だから、統治システムだけを誰でもできるようなシステムに作り変えて、みんなで運用しようと纏ったんだ」


「本当ですか!?」


「うん。どこまで続くかは分からない。僕たちが居なくなれば、離反が続くかもしれない。でも、統治システムさえしっかりすれば学校は個として上手く行くじゃないかと思って。それに今さら翼志館や東郷のやり方を矯正されても、大人しく従わない癖のある連中だからね。大きな敵がいれば必然と纏まるじゃないかって、考えたんだ。これが、僕らが考えた最善の方法かな」


「すごいですね!」


「これからだけど……」


 真は浩平を見る。


「どうかしたんですか?」


 浩平が口を開いた。


「そこで問題なのが、お前たち翼志館と東郷だ。もし、俺達が居なくなった後、翼志館と東郷が手を結び、学戦で切り取りを始めれば、引き渡した学校はお前たちのやり方に従わざるをえなくなる。絹張や魯では統治方法に対しての柵が多いし、無理矢理やらせるかもしれない。そうなれば今の平和な北区が逆戻りになってしまう。それは俺達の願いとは別物だ」


 忠陽は法西聞いた魯の考えが見透かされているようであり、ただ、真たちの願いが誠実でもあるため応援したいという複雑な気持ちになった。


「だから、俺達は柵なんて気にしなさそうな神宮が生徒会長になれば、俺達が残そうとしている統治システムのまま、受け入れてくれるんじゃないかと思ったんだ」


「神宮さんがですか?」


 真はニコニコと笑いながら言った。


「実は今考えている統治システムは神宮のやり方を参考にしてるんだ。彼女は本当にすごいよ」


 続けて浩平が言う。


「賀茂、海風高校生徒会長の暴行未遂事件は知っているな?」


「はい。その場に僕も居ましたから」


「生徒会長はドラックで精神やられ、今は副会長が代行している。事件のおかげで評判が悪くなっていたが、最近、その地域でも評判がよくて、前よりも学生たち自身で積極的に運営している噂があった。近藤を通じて、自分たちの学校運営の参考のために視察させてほしいと願いたら、副会長から神宮の名前が出てきたというわけだ」


 真は浩平と代わるように話し始めた。


「副会長が念の為、神宮に学校の視察をしていいか尋ねたら、あなた達が決めることですって返ってきたらしいよ。そこは、神宮らしいなと思った。でも、視察してその意味が分かったよ。神宮はね、海風高校に独立自治の精神を植え付けようとしてたんだよ。今まで属校は、どうしても主任理事の言いなりになるしかなかった。それに学戦で負ければ主任理事が変わり、やり方が変わる。今年の生徒会長はその弊害で心が病んでしまった。だから、神宮は学校運営をその学校で運営されば、主任理事が変わったとしても、その根幹が変わることなく、今回の事件みたいなことが起こることもないと思ったんだろうね。それにもし、新たな主任理事が嫌なら元の主任理事と内応すればいいからね」


 忠陽は竹中からは海風高校の件は聞いていたが、そんな事をしているは思わなかった。


 浩平が口を開いた。


「地方分権と言えばいいのかな。代表議会をしているところを見たが、活発に意見を出していたな。まぁ、面白いのは、神宮にダメ出しされるのを見越しての話し合いだったんだが、アイツがダメの一言で否定する顔が浮かぶんだよ。……でも、皆が言うんだよ。ダメでも取り敢えずは出してみよう。その内容は修正されるかもしれないけど、出さないとこの学校は何も変わらないってさ」


 忠陽は海風高校の意識の変わりように驚いていた。


「神宮さんは海風高校に関して、かなりの意見を会長に出してるみたいです。だけど、叶えられていないのが現実だと、会長は言っていました」


 浩平はそれを聞いて、鼻で笑う。


「だろうな。今の翼志館のあり方を変えるのは、竹中には無理だ。あいつにもそれまで受け継いだ思いがある。絹張も同じだ。……難しいものだな、長年主任理事をやるというのは。まるで、呪いみたいだな」


 浩平のその言葉を聞き、全員が自嘲した。


 その空気を察してか、遠山が口を開く。


「私達は真くんのおかげでここまで来れたよねー」


「そんなことはないよ、僕一人だけじゃない。皆のお陰だ」


 真たちは互いを見て笑い合っていた。忠陽は三人の姿を見て、それを鞘夏や由美子や自分自身に置き換えてしまった。生徒会室で笑いあった自分の姿は何かに代えがたい幸福感を示していた。

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