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呪賦ナイル YA  作者: 城山古城
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第十話 草船借箭の計

 サブモニターには母里がリタイヤしたことを示されていた。


「ええ、映像出力の不具合がまだですが、ここで母里選手が自発的なリタイヤを行いました」


 会場からはモニターへの不具合に対して罵声が飛び交っていた。


「たぶん、必殺技の反動じゃないか。あんなに良い技を持っているなんて、スカウトしたいぐらいだな」


 八雲は総将に振る。


「だな。あの一撃はいい一撃だった。母里は確か、伊予島の黒田家の由来の者だったな。あの一撃にも納得ができる。黒田家には黒田武士と呼ばれる昔からの家来衆が居る。その中でも母里というのは呑取りの槍を扱うので有名だ」


「そうなのか? ってか、その呑み取りの槍って何だ?」


 総将は舌打ちをする。


「だから、お前が聞いてどうするんだ?」


 麻希は引きつり笑いをしつつ、総将に問うた。


「そ、その呑み取りの槍って何なんですか?」


「黒田家に伝わる伝承を用いた技だ。伊予島には黒田節と呼ばれる民謡がある。昔、母里の先祖が黒田家の当主から酒豪で有名な大名に使いを出されるとき、酒飲み比べだけはするなと言われた。だが、その大名は母里の先祖が酒豪と知っていたため、執拗に酒を出す。母里の先祖は黒田家の当主から盃を受けることを固く禁じられていたから、ずっと固辞していたが、黒田家をバカにされたため、ついに盃を交わすことになった。大名はその飲みっぷりに喜び、大きな盃を用意し、それを飲み干したら何でも望むものを渡すと言った。母里の先祖はそれすらを飲み干し、大名が大切にしていた大和号と呼ばれる有名な槍を貰ったという話だ。その故事からできた黒田節を舞って放つ、母里だけの技、呑み取りの槍が生まれたと聞いている」


 会場からは驚きの声が上がる。


「本来は大和号があれば絶大な威力を発揮する技だろうが、それがなくても呪防壁を破壊する威力だ。学生レベルではないことは確かだろう」


「あれはそんな逸話から来ている技なんですね」


 総将は場をつなぐために更に話を続けた。


「賀茂くん、真堂さん、今、母里くんがリタイヤしたわ……」


 藤が忠陽たちに報告した。


「氷見さんが頑張った成果ですね……」


「う、うん……」


 忠陽は藤が釈然としない様子である事に気づいたが、敢えて問いただそうとはしなかった。


「賀茂、後二人。真堂とあんたならやれる! 頑張れ!」


「うん。僕らは勝つよ!」


 葉はいつも以上に気合が入っている忠陽に好感を持った。


「賀茂くん、竹中先輩の陣に気をつけて。狙うなら、まずは安藤先輩よ」


「分かってるよ、神宮さん。僕らで絶対に勝つよ」


「ごめんなさい。私のせいで」


「神宮さんのせいじゃないよ。それに皆がここまでの条件までしてくれたんだ。神宮さん、氷見さんのおかげだよ。負けたら、僕のせいだ」


 鞘夏は忠陽の手を掴み、首を振る。忠陽はその手の柔らかさに心が救われるようだった。


「分かってるよ、鞘夏さん」


 忠陽は一ブロック先の居る竹中と安藤が見えた。最初に放っていた式と共有感覚ができるということはどうやら石陣八陣は展開していないようだ。


 忠陽と鞘夏はビルから降り、安藤と竹中が見える位置に立った。そこで安藤と竹中は警戒してか、動きを止める。


「えっと、映像出力が元に戻ったようです。それではメインモニターに映し出したいと思います」


 映し出された映像に会場の人々は歓喜の声を上げる。互いのチームがにらみ合いをしており、今まさに戦おうとしているその姿は会場の人間のアドレナリンを高めた。


「さあ、賀茂はどう出るかな?」


 総将は楽しそうにしていた。


「決まってんだろう。ハッタリと小技の応酬だよ」


 八雲の答えに総将は頷く。


 忠陽は呪符を取り出し、その呪符を光らせた。すると、竹中と安藤の隣にある二つの屋上が崩れ始め、二人の位置へと落下し始める。


「おいおい、まじかよ」


 安藤は頭上の落石を見て、呆れ果てていた。


「どうやら、本当に怒っているみたいだよ」


「だからって、あの落石はねえだろ」


 二人は後退しようとした時、後ろにあるビルも同じく、屋上が崩れるのが見えた。


「前に行くしかないようだね」


「面倒くせえ。亮、俺は腹を括った」


 竹中に笑みが溢れる。


「こうしていると、懐かしいね、一年生の時が……」


「クソ先輩どもに無茶をさせられたときか? あれはクソ面倒くせえが悪くはなかった」


 二人はそういって走っていると、後方は瓦礫で退路を塞がれた。


「よう、亮。覚えているか? あのときに言ったこと」


「覚えているよ。僕らで一番強い翼志館を作る」


「そうだな。俺等はいい後輩たちを持ったなー」


「そうだね。油断せず行こう!」


 安藤は走りながら、銃弾を撃ち始めた。その銃弾は忠陽に向けたものだった。鞘夏はその銃弾から守るために、紫の防壁を張る。その防壁は急所だけを守るように小さな防壁を四方に張り出し、連結するような形であった。


「おいおい、対策済みかよ。だがな、それは囮だ」


 銃弾は軌道を変え、鞘夏の方向へと向かう。だがそれは忠陽が作った土の防壁によって防がれた。


「なるほどね……。亮、行けるか?」


「まだ足りない。頼む、護」


「人使いが荒いこって」


 安藤が動こうとした瞬間、進行方向先から土の槍衾が現れた。竹中は安藤の首根っこを掴み、後ろへと引っ張る。間一髪避けられた安藤は深呼吸をする。


「やっぱり。罠の位置までは分からないようですね」


 忠陽は竹中に呼びかける。


「今まで先輩の占いの対象は生きているものだけだった。だから、罠までは分からない」


「いやはや。お見事というべきか。どうやって分かったんだい?」


「先輩は隠形をしている僕の位置だけが分かると言いました。それで僕はあなたが占いをできる対象が、人だけではないかと仮定してみたんです。その確認のためにさっきの落石で試してみました」


「なるほど、良い手だ。確かに僕の奇門遁甲の陣は人の吉凶を占う。概念呪術で無機物までを対象にすることは考えていなかったよ」


「ここには罠を張りました。僕らの勝ちです」


「ならば、その罠で僕らを倒すがいい。僕らはここに居る」


 忠陽は呪符を取り出し、構える。


「その動き、罠は少ないと見た」


 竹中は前と進む。だが、罠の動く兆候はない。竹中は笑みを浮かべ、忠陽に向かって走った。その前に鞘夏が立ちはだかる。


「真堂君、その位置は凶と出た。君の攻撃は僕には当たらない」


 鞘夏は警棒で攻撃するも当たらず、その隙に鞘夏に打撃を与える。鞘夏は苦痛な表情を浮かべるも、体制を整え、竹中へと向かっていく。


 その間、安藤は忠陽へと走り、魔銃から二、三発放った。弾道は弧描くように動き、忠陽を追いかける。忠陽は建物を使いながら、その弾道を避けた。安藤が建物内入るかどうか迷っていた時、頭上から嫌な音がした。安藤は頭上を見上げると、落石が落ちてくるのが分かった。


「またかよ……」


 安藤が逃げようとした時、忠陽は隠していた呪符を起動させ、安全な逃げ道を塞いだ。竹中の前にも土壁が現れ、鞘夏と分断し、その隙に鞘夏は建物中へと入っていく。土壁は次第に二人の逃げ場をなくし、落石を受けざるを得ない状況を作り出していた。


「亮、頼む!」


「分かったよ」


 竹中は構え、深呼吸をする。そして、落石に向かって飛び上がりながら、蹴りの体制入っていた。


「天野川流、皆伝。昇り竜!」


 足には闘気が纏っており、それが青白く光り輝く。青白い光は竹中を覆い、その蹴りが天高く登り上がる竜に見えた。竜の牙は岩を砕き、空の雲を蹴散らし、灰色の空に一点、青空を見せた。


 会場からは驚愕の声が上がる。


「な、な、何だあの技は! 岩も砕いたぞ」


 麻希は立ち上がり、大声を出した。


「いつ見ても綺麗だね、亮君の昇り竜は」


「そんなことないよ、真くんの方が綺麗だよ」


 遠山が真に答えた。


「あの野郎、やっぱり食えないな。あのまま潰れていたほうが可愛げがあったんじゃないのか?」


「そういう言うな、八雲。むしろ、賀茂はこのことを予測してたんだろう。そっちを褒めろ」


 砕かれた落石はバラバラと地上に落ちる中に竹中は余裕で着地する。


「お疲れ」


「まだ、気を抜くのは早いよ。今ので、こちらの手札を出してしまった。次は何を知りたいのかな」


「お前、楽しんでいるだろ」


「ああ。彼は本物の呪術師だ。楽しくないわけないだろう?」


「お前の性癖が分からねえよ」


 土壁の向こうから鞘夏が現れ、竹中へ向かってきた。


「一人か?」


 安藤が周りを見るも、忠陽の姿は見えない。


「賀茂くん、その位置は凶と出た。君の攻撃は護には当たらない」


「何?」


 風の刃が急に現れた瞬間、安藤は石に躓き転び、間一髪でその刃を避けた。


「隠形か!」


 安藤は風の刃が放れた場所に弾丸を打ち込むも、何の反応もしかなった。


 鞘夏は風の刃が放れた同時に竹中へと打ち込むが、その攻撃を簡単にいなし、打ち返される。鞘夏は下がる瞬間に呪符を投げつけた。


 その呪符を見た竹中は言った。


「真堂くん、君のその位置は凶と出た。君の攻撃は私には当たらない」


 呪符からは土の槍衾が現れ、竹中に襲いかかる。その時、竹中は違和感を覚え、とっさに避けた。


「亮!」


 避けた方向に風の刃が現れ、竹中に襲いかかる。竹中の呪防具は危険と判断し、一回目の呪防壁を発動させた。


「ここで竹中選手、呪防壁が発動した!?」


「天野川流、敗れたりってか?」


「そうだな」


 会場は更にヒートアップし、歓声を上げる。


 竹中の呪防壁が発動したことに真には息を呑む。


「真、あれは……」


 浩平が真に尋ねていた。


「たぶん、亮くんは眼の前にいる真堂さんを占ったんだ。だけど、その攻撃は賀茂くんのもの。だから、亮君の陣が上手く機能しなかった……」


「ということは、俺達も一斉に攻撃すれば可能性はあるのか?」


「その場合、亮くんは自分を占うよ。今回は賀茂くんが自分を見えないことを利用した戦術、いや騙し合いの勝ちだ」


 忠陽は姿を消しながら、竹中に問いかける。


「占いは一人しか対象ができないみたいですね。今の鞘夏さんに対して行っただけど、だから僕には通用しない」


「野郎!」


「止めろ、護……。やはり君は入学当初とは別人だ。五月の学戦時に君と由美子くんを組ませたのは伏見先生の入れ知恵でもあったが、君の陰陽術を偵察に向くかどうかを確かめたかったからである。だが、今の君はそれすらも超え、我が校の一翼を担う存在だ」


 忠陽を称える竹中の目は真剣そのものだった。


「だが、まだ足りない。君が由美子くんとともにこの学校を背負い、繁栄させるためにはそれだけでは足りない」


「僕にはその気はありません」


「なくても、僕がそうさせてあげるよ」


「興味がありません。僕は身近な大切な人々を守りたいだけです」


 竹中は呪防壁が解け、なにもない空間へと走り出す。鞘夏はすぐにその場所へ向かうも、安藤の魔銃で進路を遮られた。苦痛な表情を浮かべるも、紫の防壁を張りながら、一歩ずつ前へと進む。


 忠陽は竹中がこちらの居場所が分かっていると悟り、隠形を解き、姿を表す。竹中は忠陽の苦痛な表情を見ると、笑みを浮かべる。忠陽のその笑みを見た時、誘い出されたことに気づく。


 忠陽は竹中の格闘戦を挑むも、こちらの格闘はすぐにいなされ、逆に反撃を食らう。


「いい格闘だ。だが、基本的なことを忘れている。君は呪術師だ。術者が格闘をするのは悪手だ」


 竹中の拳に闘気が溢れ出した。忠陽は距離を取ろうとするも、竹中はすぐに追いつく。


「天野川流拳法、初伝。正拳」


 竹中は忠陽の急所を突く。忠陽は土壁に叩きつけられ、呪防壁が展開した。


「ここで賀茂選手、一回目の呪防壁が発動しました!」


 会場では更に熱が上がって来ていた。


「陽様!」


「お前の相手は俺だ! よそ見すんな!」


 安藤は弾丸を連続して射出する。その弾丸は隙間を縫うように鞘夏の背後に回った。鞘夏の呪防壁は危険と判断し、一回目の呪防壁を起動させる。そのことに鞘夏は苦痛の表情を向ける。


「いいかい。勝ちを望むのなら、勝つことを捨て去ることが必要だ。欲望は人にとっても、呪術師とっても必要なことだ。だが、それは相手に明確な意志として読まれてしまう。君は僕の事が嫌いだということも分かるし、君のこの戦いへの必死さは今ここにいる誰よりも強い。それは君の行動すべてに理由を付けてしまうんだ」


 竹中はいつもの笑みが失われた。


「君の手札は分かった。もう負けを、認めなさい」


「僕はまだ負けていません。それに、先輩の術はもう僕には効きません」


「そうだ。君は僕が今できる奇門遁甲の陣を破った。それは勝算に値する。だが、それを破るためには真堂くんが必要だ。真堂くんは後一回で戦闘不能だが、護はもう彼女を見逃さない。ということは、君は一人で僕と戦うことになる。この距離で僕は君を逃しはしないし、罠を掛けるにも君は自身犠牲にする必要がある。例え、今、君が自分を犠牲にしたとしても護の呪防壁は残り二回。真堂くんでは護を倒しきれないだろう」


 忠陽の目はまだ諦めていない目だった。


 竹中はため息をつく。


「この手は使いたくなかったが……」


「護、建物中に避難しろ」


「おい、亮!」


草船借箭(そうせんしゃくせん)の計を使う」


「待てよ。それを使う必要はないだろう?」


 竹中は両手添え、その間に呪力を集中し、霧を生み出した。すると、竹中を中心とし、四方三〇メートルを囲う結界を敷かれた。


「な、何が起こっているのでしょうか。また霧に包まれました。遠くの方からは四方で囲いができたようです」


「結界術……」


 八雲は苦い顔をする。


「陣を使えるんだ。そんなに驚くことはない」


 総将はぶっきらぼうに言う。


「この術は、古来中華で起きた故事を結界術として生み出した術だ。私の名前の由来となった人物が用いた策だ」


 竹中が呪力を開放すると、藁人形が数十本現れる。


「とある国同士が連合を組み、強大な敵と戦う事になった。だが、ある国の将軍は連合を組んだ相手の軍師が有能だったため、後日のことを考え、その軍師を殺す口実を作った。十日で十万本の矢を用意するという使命を下し、できなければ軍法に処す。軍師はそれを三日で十分といい、見事に成し遂げた」


 結界の中から太鼓とラッパの音が鳴り響く。太鼓は忠陽の心臓に鳴り響き、不安を増大させる。


「どう成し遂げたか。霧の濃い日に干し草を積んだ船で敵国の陣営に近づき、太鼓を鳴らした。すると、敵はその太鼓が鳴る方へ矢を射掛けた。その矢は船の藁に突き刺さり、無事、十万もの矢を頂いたという。そう、この術は十万もの矢が降り注ぐ結界術。君にも、僕にも逃げ場ない」


 忠陽は拳を強く握る。


「賀茂くん。君がもし、いつものように自分を偽り、冷静なままで居たら、僕らは君には勝てなかった」


 竹中の素直な笑顔を見て、忠陽は悔しがる。空から矢の雨が降り注ぎ、三人の呪防具は危険と判断し、呪防壁を全力で発動させた。降り注ぐ雨はカメラも壊し、観戦会場ではモニターが黒くなった。


 観戦会場では竹中、忠陽、鞘夏が戦闘不能状態に陥ったことを示し、試合終了のブザー音が鳴る。


「最後まで、どうなったのかは分かりませんが、竹中選手の結界術によって、大量の矢が出て、三人とも戦闘不能状態に陥りました……。ち、ち、チーム臥竜の勝利です!」


 会場のざわつきは収まらない。


「解説のお二人はどうでしたでしょうか。何かあればお言葉を頂ければと思います」


「そうだな……。ま、どっちのチームも頑張ったんじゃねえ?」


「相変わらず適当だな」


 総将はため息をつく。


「佐伯三佐はいかがでしょうか……」


「戦いを有利に進めていたのはチーム臥竜だ。これは観客席の人間にも分かっているはずだ。最後まで竹中の術中であったことも。だが、竹中の中でも誤算があったことは確かだ」


「なんだよ、それ?」


「だから、お前が質問するな……」


「いいじゃんか。教えろよ」


 総将は呆れながらも話し始める。


「一つは、お前の妹だ。お前の妹の強さを見誤った。お前の妹が狙われた理由は指揮系統の壊滅。だが、予想以上に神宮の術に手痛くヤラれ、犠牲が出た。いや、本来ならそこで竹中は退場となっていた可能性がある。そこは絹張の直感が良い方向へ働いたと言える。二つ目は、氷見に起こったアクシデントだ。氷見に何が起こったかは分からないが、母里はそれで退場となった。恐らく竹中の想定ではここまで三人は生存している想定だろう。三つ目が賀茂に自らの陣を攻略されたことだ」


「おう。それは小技とハッタリがよく効いていたな!」


「賀茂の怖さは力じゃない。呪術の基本である嘘だ。嘘で相手の情報を取り出し、そして嘘で相手を貶める。呪術師としては及第点を与えることができる。ただ……」


「ただ……?」


 麻希と八雲が首を傾げる。


「戦いは呪術だけではない。最初にも行ったが、姿を表している賀茂は弱い。そして、呪術師は近くに寄られたら、弱い。だから、賀茂は本来、もっと距離を取って戦うべきだった。それができなかったのは怒りと勝ちにこだわり過ぎたからだ」


「怒りというのはなんとなく分かりますが、勝ちにこだわり過ぎたのは何故行けないのでしょうか?」


「勝ちに拘ると、その動きに明確な動機が見えてくる。その動機は相手にも見透かされ、逆に利用される。今回、賀茂が取るべき行動は隠形を使い、逃げ続け、負けない戦いをするべきだったかもしれない。リーグ戦という特性上、戦いは続く。今回で竹中の一つの攻略法を見出したのは他の者にとっても良かったかもしれない。だが、チーム五芒星(ファイブスター)としては黒星をつけることになり、他のチームとの差が広がってしまった。次のチーム美周郎(びしゅうろう)戦負けたら、優勝の目が無くなることになる。それは優勝を目指しているのであればしてはいけないことだ」


「ヒュー。辛口!」


「茶化すな!」


「すいませーん」


 会場内に笑いが起きる。


「勘違いをするな、八雲! 一番叱責を受けるのは賀茂じゃない。お前の妹だ!」


「なんで、ゆみが怒られなきゃいけないんだよ!」


「当たり前だろう! 決勝リーグで優勝するために戦うのなら、そう指示をするべきであるし、一番最初に自身が狙われることも考えなければいけない。チームとして負けた責任はすべてお前の妹のせいだ」


「なんだよ、それ。おかしいだろう!?」


「まあまあ、お二人共。ここは会場です」


 麻希に言われ、八雲は舌打ちをしながら、引き下がった。


「チーム臥竜の方はどうしょうか。ここで勝ち星を付けたことは他のチームにもアドバンテージをつけることに成りました」


「チーム臥竜は白星を取ったことはいいことだが、これ以降が厳しくなる。結界術は術者にかなり負担を与えるものばかりだ。今回で消耗が激しいチーム臥竜は後二戦を耐え凌ぐのは厳しいだろうな。だが、チーム臥竜の良いところは勝ち方を知っていることだ。竹中なら上手く出来るだろう」


「佐伯三佐、総評ありがとうございました。これを持って、決勝リーグ一日目、午後の部を終了させて頂きます。皆様、お疲れ様でした!」


 会場に拍手が響き渡る。

高評価、ブックマーク、感想もよろしくね。


【NGシーン】

竹中「だが、まだ足りない。君が麻美子くんとともにこの学校を背負い――」


忠陽は竹中があまりにもべらべらと話すため、隙ありと台本にない攻撃をしようとした。竹中はそれに気づき、その攻撃を蹴りで受け止める。


竹中「――繁栄させるためにはそれだけでは足りないぞおおお!!!!」


攻撃を蹴りで弾き返された忠陽は、体制を整え、再び攻撃をしようとする。


竹中「君に足りないものは!」


竹中は急に赤いサングラスを掛け、走り出す。


竹中「それは!情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!そして何よりもおおおおおおおおおおおお!!!」


その速度は光の速さまで到達し、忠陽まで回り込んだ。忠陽は人の次元を超え、そして急に熱くなった竹中に驚いたが、それも束の間、鋭い蹴りが跳んできた。


竹中「とわ!」


忠陽を蹴飛ばした竹中は一旦瓦礫の上に飛び、悠然と構える。


竹中「速さが足りない!!」


忠陽はそのセリフに驚いた。確かに竹中のようなキャラには有りえないスピードなのだが、そのセリフは!


忠陽「ストレイト・クーガー!!! 僕も好きです!」


竹中「分かってくれるか、カモネギくん!」


忠陽「会長、賀茂です……」


竹中と忠陽がにやりと笑うの見た安藤はため息を吐く。

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