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呪賦ナイル YA  作者: 城山古城
19/206

第五話 理由なき反抗 其の四

 四


 大地は寺の御堂(みどう)の中で外を見ながら横になっている。そこから地平線へと沈む夕陽を、大地は朧気に見ていた。


 学校に行っても退屈な日々。それを過ごすことが苦痛であった。


 大地は御堂(みどう)を見回す。この御堂(みどう)は、修行でも使えば、典子の父の説法でも使われる。嫌な思い出も多いが、この島の中で一番落ち着く場所だった。


「大ちゃん、やっぱりここに居た!」


 幼馴染みの顔を見て、(ほう)けた顔が少し整う。


「なんだよ、居ちゃ悪いか?」


「いや、別に悪くないけど……」


 大地は典子の顔を見て、活力が少しだけ沸いてきた。体を起こし、御堂(みどう)縁側(えんがわ)まで出てきて、座った。


 それを典子はじっと見ていた。大地の顔が夕陽に照らされ、高揚したように見える褐色の肌が格好よく思えた。


「なんだよ、人の顔を見て」


「なんか悪い?」


 と典子はそっぽを向く。


「別に悪くねぇよ」


 典子は、その言葉が妙に嬉しかった。


「あのさ、昨日ね、バン君と会った」


「洸太と?」


「元気してるみたい。ちょっと(やつ)れてたみたいだけど」


 大地は無気力に答えた。


「でね、今度、忠陽君たちと遊ぼうって約束してきた」


「なんでボンが出てくるんだよ」


 大地は典子を見る。


「学校でさ、たまたま会ったんだよ」


「そっか」


「大地も行くよね?」


「なんで、俺が?」


「大地、忠陽くんのこと気に入ってるでしょ?」


「まあな」


「せっかく、バン君とも会えたし、皆で親睦を―」


「余計なことすんなよ」


「別にいいんじゃん」


 典子は頬を膨らませて、夕陽を見た。


「いつだよ?」


「まだ決まってない」


「なんだよ、それ」


「どうせ、いつも暇でしょう?」


 大地は苦虫をかみつぶしたよう顔をした。


 次の日、大地は中央街のアーケード通りを歩いていた。この通りは、昼間であったため、まだ眠っていた。夜の喧噪とした場所だが、朝から昼間は森にいるような静けさに感じてしまう。


 そんな昼間には大人たちではなく、学生が集まってくる。学生の多くは授業を受けない素行の悪い人間が多かった。そのため、昔はここは昼間から夕方まで学生の喧嘩が多い所でもあった。


 この通りが最初に静かになったのは、警察と呪捜局が取締りを始めてからだった。呪術での私闘を行われることが多かったことから、近隣の被害も多く、呪捜局は私闘をする学生の補導、そして学校側は学校運営の問題になる者には退学勧告を出すようになった。


 退学させられた生徒たちは、大半この島から離れるが、一部には当てもなくこの島に住み着く人間もいた。そういった人間は夜のきな臭い連中から仕事を貰うようになり、生計を立てていく。


 チンピラと成り果てた元学生は、現学生を誘惑し、自分たちの仲間を作るために同じ境遇を与えるようになった。その手口が法律に触れないため、警察と呪捜局は手をこまねいていた所に、学生自身がそのチンピラに対抗するチームを作り始めた。そのおかげで、この中央街のアーケード通りは静かになったのである。


 たまにその趣旨を理解できない不良も中にはいる。自らのプライドを掛けた輩は、自分が気に入らないものに喧嘩を売る。その一例が大地の目の前に現れていた。


「ようよう! 太平洋!」


 三連松(さんれんまつ)一松(いちまつ)がライムに乗せて、大地に投げかける。大地は面倒くさそうにしていた。


「ここで会ったが、百億光年!」


 二松(にまつ)がポーズを取りながら言った。


「日々のハラミを晴らさでおくべきか!」


 大地は耳に小指をツッコミ、その小指についたゴミを吐息で吹き飛ばした。


「てめえ、聞いてんのか!」


 三松(さんまつ)が大地に大声で発した。


「どうやってハラミを見せてくれんだよ。スーパーで買ってくんのか?」


「ハラミを見せるとは、あっ、笑止千万!」


 見得(みえ)をしながらそう言う三松に、二松が小さな声で指摘した。


「三松、ハラミじゃなくてウラミだ」


 三松は見得(みえ)を解き、二松に向く。


「何? ウラミは肉じゃないのか? 一松、どうなんだ?」


 一松は口に出た唾を飲み込んだ。


「どちらも肉だ」


「邪魔だ、どけ」


 三連松を一蹴する男が現れた。男を見て、三連松はアニキと声を揃えて、大声を出す。


 アニキと呼ばれたこの男、名は松島成実(しげざね)という。髪は側頭部、後頭部は刈り上げており、残りの髪をオールバックにしている。大地と同じく短ランとボンタンに薄青の色眼鏡を付けていた。身長は一七〇後半くらいあり、その見た目は硬派と呼べるものだった。


 この男はタイマンを好み、闘ったものと友情を育む特殊な人物だった。まわりの暴力系会社からも一目置き、勧誘があると噂がある。


 近づく松島に大地は虚勢を張る。


「あんたか。助かるよ」


「悪いな。いつもお前に遊んでもらって」


「あんたが俺に用って、タダ事じゃないな……」


 松島が大地にグッと近づく。大地は拳に力を入れた。


「最近、ここら辺で学生に薬を売ってる奴らがいる。どうも、そいつが学生なんだ。知ってるか?」


「知らねえな」


「そうか。特徴は確か……。なんだけって、お前ら」


 三連松は綺麗に整列して、一松から順に言い始めた。


「か細い体!」


「青白い顔!」


男女(おとこおんな)!………女男(おんなおとこ)?」


「どっちだ?」


 松島は三松を睨む。


「お、女のような男!」


 松島は大地をもう一度見た。


「どうだ、知らないか?」


「いや、よくわかんねえよ」


 大地は半笑いしながら言った。


「そっか。邪魔したな」


「おい! 待てよ。それだけかよ?」


「ああ、それだけだ」


「つまんねえな」


「悪ぃな。今はお前を相手にしてらんねぇんだわ」


「その薬を売ってるヤツを見つけ出せば、相手にしてくれんのか?」


 松島は色眼鏡の下ろし、自分の目で大地の目を見る。大地は負けじと睨みつける。


「いいぜ、出来たらな」


 大地は小さく拳を握り、喜ぶ。


「急げよ、エーメンが動いてる」


「マジかっ!」


 エーメンとは岐湊の最大武闘派集団であり、この街の学生の良し悪しごとの多くは彼らが取り締まっていた。情報収集能力は呪捜局よりも高く、岐湊の勢力圏外であったとしても、大人の対抗力として、彼らに力を貸す生徒は多い。


 大地が頭を抱えている間に、松島はその場を去っていく。その後を三連松が追いかけた。大地はそれには気づき、手を伸ばすが、途中で止めた。


 エーメンや松島より先に見つけ出せば、あの松島と戦える。この約束が、大地に気合を入れる。大地の炎が少し漏れ出した。


 大地はふと気づく。か細い体、青白い顔、女の男を探すにはどうすればいいか。


「ま、いっか。薬を売ってるんだ。夜のクラブで誰かに聞けば分かるだろう」


 クラブはディスコクラブの事であり、DJ、ディスクジョッキーが掛けた音楽に合わせて、踊る場所のことだ。週末には年齢関係なく、人々が訪れる。平日は時間限定として学生にも開放しており、学生にとって、貯まった鬱憤(うっぷん)を晴らす場所にもなっていた。多くの人が訪れるため、情報交換の場や、取引の場所に使われる場合もあった。


 大地はクラブまで行くと、その前で検問官のように、岐湊(ぎそう)高校の制服を着た男と女が、一人ずつ居た。男は男子学生を、女は女子学生を舐め回すように見て、次と言って、見た学生を入れては同じことを繰り返していた。


 大地と同じく、それを遠目で見ていた岐湊高校の男子生徒が大地に気づき、近づいてきた。


「よお。お前も薬売りを探してくれるんだってな」


 大地は男子生徒を見ず、検問官が見ている人を見ていた。男子生徒は舌打ちをした。


「松島さんの頼みや、プリンスの命令でなければ、ここでのしてやったのによ。まあいい。メールアドレス教えろ」


「何でだよ」


「情報を流してやれって、プリンス直々の命令だよ。そうでなければ、誰がてめえに教えてやるか!」


「なら、玉嗣から送ってくれればいいだろう? アイツ、俺のメアド知ってんだし」


 男子生徒は大地の胸ぐらを掴む。大地は無言で男子生徒の目を見る。男子生徒の怒りの炎は瞳孔から放れたように見えた。大地はそれを蔑むように見ていた。男子生徒は暫くして、手を離した。


 大地は澄ました顔をして、その場を放れた。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


 薬売りの生徒の噂は、たちまち翼志館(よくしかん)にも伝わった。生徒会は岐湊(ぎそう)との関係悪化を懸念し、薬売りの生徒を探すことにした。


 昼休み、忠陽は機嫌の悪い由美子に連れられ、生徒会へ(おもむ)く。中に入ると、いつもとは違う緊迫した雰囲気だった。凹の字に机を並び組まれ、各委員長を含め、生徒会面々が勢揃いしていた。それだけ憂慮(ゆうりょ)していることが分かった。


 生徒会長は、忠陽と由美子を、全員から視線を浴びる真ん中に立つように指示した。


「君たちには、薬売りの生徒を探して―」


「お断りします」


 由美子は生徒会長の言葉を遮った。机に座る面々は凍り付いた。


「神宮さん、最後まで―」


「お断りしますと言っているのです」


 高圧的な物言いは、固まった生徒を熱くさせ始めた。


 生徒会長は溜め息をついた。


「まあ、まずは話を聞いてくれ」


「厄介ごとを頼むのでしょう? 私達は便利屋ではありません。ましてや、呪捜局の仕事を我々生徒がやる必要はないです」


 机を叩く音がした。叩いた男は、いかにも体育会系の男であり、由美子を睨み付けていた。


「なんだ、その物言いは!? 我々、生徒総会で決まった議決を断る権利などない!」


 生徒会長は体育会系の男を(なだ)めようとした。


「学生がやることではないことをですか?」


 体育会系の男に対しての由美子の冷たい声と、凍てつく目に忠陽は背筋に鳥肌が立つ。


「そそ、それは総会で決まった議決は絶対だからだ。家柄が良いからといって、調子に乗るな!」


 由美子は鼻で笑った。


「家柄? もし、私が家の権力でものを言うのならー」


 由美子は生徒会長を睨みつける。


「貴方方は、そこに座っていない」


 生徒会室にいた面々には、それが冗談ではないことを理解した。体育会系の男は撃沈した。


 由美子は咳払いをした。その咳の音で、全員の視線を集める。その中で生徒会長だご口元が綻ぶ。


「さすがは神宮さん。一先ずは、我々の負けのようだ」


 由美子は怪訝(けげん)な顔をした。


 生徒会長は席を立ち上が利、近くの窓に行き、外の景色を見る。


「君たちに、薬売りの捜索をさせるのは、諦めよう。そこでだ。今日一日だけ、中央街の様子を見てきてほしい」


「どうしてですか?」


 生徒会長は振り返り、由美子を見た。


「今回の総会で、中央街の見回りは決定したのだが、今日は人を集めるのは無理だろう?」


 生徒会長は平然としていた。由美子はその顔を疑う。


「そう邪険にするのは止めてくれ。今日だけでいいんだ」


 生徒会長は再び外の景色を見る。


「忠陽君は、どうなの?」


 忠陽は、生徒会長を見る。その雰囲気がどことなく伏見に似ている。


「僕は構いません。神宮さんさえ良ければ……」


 由美子は男らしくないと忠陽にも聞こえないくらい呟いた。忠陽はその微かな音に反応をし、由美子を見るも平然としていた。


「タダでは行きません。それに、荒事になるようなら、それ相応のものを頂きます」


 生徒会長はこちらを向き、快く承諾した。


「会長!」


 副会長が立ち上がった。生徒会長はそれを手で止める。副会長は渋々座った。


「何がご所望かな? といっても、私が君に用意できるのは、次年度の生徒会長の席ぐらいだけど」


「気に入らないですね」


 生徒会長は由美子をじっと見つめる。


「どうして? 君には必要なはずだ」


「私は与えられるより勝ち取る方が好きなんです」


 忠陽はこの二人に見えない攻防が見えた。


「じゃあ、何がいいのかな?」


「そうですね。あなたの生徒会長の退任で、どうですか?」


 周囲が再び騒然とする中、生徒会長だけは笑みを崩していなかった。


「それはいい話だ。それで行こう」


 由美子はさすがに動揺する。


「どうしたんだ。君が望んだものだろう?」


 由美子は奥歯を強く噛んだ。


「では、放課後に中央街の見回りを頼むよ。それでは、これで総会を終了とする。生徒会のメンバーは残るように」


 椅子の音が鳴り響くなか、由美子は手を握しめ、そして生徒会室を後にする。その後を忠陽は追ったが、由美子は黙ったまま昼休み終了のチャイムが鳴る。


 放課後、忠陽と由美子は、生徒会長との約束通り中央街に来ていた。


 忠陽は由美子の顔を仕切に見ていた。由美子は生徒会室の一件などは気にしていないのか、平静な顔だった。


「なに? 私の顔に何か付いているの?」


「いや、そうじゃないよ……」


「だったら、何よ?」


「えっと……元気かなって……」


 由美子は忠陽を(さげす)む目で見ていた。


「なにそれ、気持ち悪いんだけど」


 忠陽は意気消沈した。


 由美子は忠陽と別の方向の空を見て、何かを呟いた。


 忠陽は呟いたこと気づき、由美子を見る。


「何か言った?」


「言ってない!」


 二人は中央街のアーケードに来ていた。夕方もあって人が集まりだしていた。ただ、異様に岐湊(ぎそう)高校の制服を着た男子生徒が多い。そして、岐湊高校の面々は忠陽達を睨んでいた。


「神宮さん」


「分かってるわ。平然を装いなさい。そうすれば、手を出してこないわ」


 忠陽たちの進行方向を、小粋なヒップホップのリズムを鳴らしながら、三人の不良学生が現れた。彼らはリズムに乗せ、三人で円陣を作りながら、そこを回り始めた。一松がリズムに乗りながら歌い始めた。


「ヨウヨウ、俺たち岐湊の一松、二松、三松、三連松。俺たち極悪非道、お前らの刺客の薬売りを待つ」


 一松は円陣を回り始め、次に二松が歌い始める。


「お前ら、翼志館! 卑怯な手口で、俺たちを弱体化。良薬口に苦し、ではなくて、毒薬口に甘し」


 二松も円陣を回り、次に三松が歌い始める。


「貴様らが怒らせたエーメン! マジでヤバくてアーメン! 奴らは俺らの中でギャング、それ喧嘩を売るなんて、それってなんのギャグ?」


 再び一松が歌い始める。


「俺たち闘う理由は、仲間がやられた、それだけで充分! 貴様ら、倒して、反撃の印を挙げて、今呼び起こせ、正義の印!」


 三人は一列になり、各々ポーズを取る。


 忠陽たちは唖然とみていた。


「よう、ブラザー、反撃は狼煙じゃないか?」


 二松がいう。


「よう、ブラザー、最後は印だから反撃の印でいいんだよ」


 三松がいう。


「ブラザーたち、ラップっていうのはな、格好よければなんでもいいんだよ!」


 そう言って、一松は忠陽たちに飛びかかる。二松、三松も続けて襲い掛かる。


 由美子は冷静に手をかざし、広域に風圧を放った。三本松は数メートル先に吹き飛んだ。


「神宮さん……」


「ごめん。なんかよく分かんなくて、苛ついて、つい……」


 由美子と忠陽は、辺りの岐湊高校の生徒たちの視線を集めてしまった。岐湊高校の生徒は、徐々に距離を詰めるような動きをしていた。


「やめろ」


 その声で岐湊高校の生徒は動きを止めた。三連松が倒れている奥から短ラン、ボンタンのオールバック、青い色眼鏡をした高身長の男、松島が現れた。


 忠陽はその姿を見て、いかにも不良のボスであり、どこか近寄りがたいものを感じた。それが忠陽たちを自然と構えさせていた。


 岐湊高校の一人が松島の隙を見て、忠陽たちに走り出そうとする。それに気づいた松島はその生徒を睨みつける。生徒は動きを止め、松島はその生徒に詰め寄った。生徒は苦笑いをして、その場から逃げ去った。


 松島は倒れている三連松に近寄り、一人一人蹴った。


「いつまでも倒れてんじゃねぇ。通行の邪魔だ」


 痛みで苦しむどころか、気付け薬のように三連松は起き上がる。大きな声で、声を揃えてアニキと叫んだ。


 忠陽はその言葉に引き()りながら笑った。


「悪いな。岐湊高校の連中は気が立ってるんだ」


 由美子は松島を警戒していた。独特な雰囲気を(かも)し出すこの男は、大地のような無邪気さはなく、冷徹さを兼ね備えた存在だった。


「そう、身構えんな。闘うんならとっくにヤッてる」


「じゃあ、何のために?」


 由美子は相手を威嚇するように問うた。


「エーメンの奴らは仲間がやられると、血に登る奴らが多くてな……どうも手が早い。俺はお宅らの言い分を聞いておかないと、筋を通せねえと思ってな」


「古風なのね。嫌いじゃないわ」


 言葉と裏腹に由美子は警戒心を解いていなかった。その姿に松島の口が緩む。


「理由も分からずだと嫌だろ? で、今回の件はどうなんだ。薬を売っているのはお宅らの差し金か?」


「そいつらがやったに決まってる!」


 それまで、黙っていた岐湊高校の男子生徒が声を張り上げた。松島はゆっくりとその男を睨みつける。


「だまれ。俺が聞いてるのは、そこのお嬢さんだ」


 睨みつけるときに今までにない気迫が、一瞬にして、忠陽達の背中に、鋭く刺さる。睨まれた男はその場でへたり込んだが、忠陽も直に睨まれたらどうなっていたかと唾をのむ。


 松島は由美子の方へ向き直したときはその気迫は消していた。


「邪魔が入って悪いな。で、どうなんだ?」


 由美子はその気迫に負けじと答えた。


「翼志館が意図的にそういう事をした事実はないわ。生徒会は、私達に犯人探しを依頼してきたし」


「そうか。だが、生徒会の自作自演という可能性はあるな」


「その可能性はあるかもね」


 忠陽は咄嗟に神宮さんと言っていた。


「なによ。あの生徒会長ならやりかねないわ」


「でも……」


「平気な顔して、会長の座を簡単に手放す奴よ。裏で何をやってるか分からないでしょ!?」


 松島は大声で笑っていた。


「すまんな。その考えはあながち間違いじゃないんでな」


「あの人の事、知ってるの?」


「一応はな。だが、会長の座を手放すということは可能性が低いな」


「どうして?」


「漢が自らの職を辞するというのは簡単なものじゃない」


 由美子はその言葉に同意しかねていた。


「お前らの目的は?」


「見回りよ」


「見回り?」


「あなたたちみたいな武闘派から生徒を守るためじゃないの?」


「オーケー、大体は分かった。翼志館に意図的な敵対行動はないんだな」


 三連松がアニキと言い、側に寄る。


「てめえら、黙っとけ」


 三連松は大人しく引き下がった。


 そこへ丁度着信音が鳴った。着信音は演歌であり、激しいこぶしの効いた歌声だった。周りの人は誰だと辺りを見回していた。


 携帯をポケットから取り出し、通話をしたのは松島だった。


 周りはその古風さに唖然とした。


「なんだ、てめえか。ちょうどいい、てめえらの部下を中央街から引かせろや、ゴラッ。……あん?」


 松島は電話の相手と話を聞いているかのようだったが、急にケンカ口調が変わり、終いには言い争いをしていた。言い争いから松島は一方的に電話をブツ切りしていた。携帯をポケットにしまうと、周りの人間から着信音が鳴る。短い音だったことからメールだろうと忠陽は考えた。


「今さっき、エーメンのボスから薬売りの面が割れたって連絡が来た」


 松島は近くの岐湊高校の生徒を呼び出し、携帯を出すように促した。その携帯を奪い、由美子の元へと歩く。


「こいつが、その薬売りらしい」


 松島は携帯の画像を由美子に見せた。


「見覚えは?」


「知らないわ。忠陽君……」


 忠陽はその画像を見た瞬間、凍り付いた。その画像には(ともの)が写っていた。


「知ってるか?」


「いえ、よく見たら違う人でした」


 忠陽は笑っていた。


 松島はそうかというと、携帯を所有者に投げ返した。


「そういや、お前らの名前聞いてなかったな。俺は松島成実(しげざね)


 二人は自分の名前を言った。


「あんたが神宮のご令嬢だったのか。成る程ね」


「な、何よ?」


「いや、気の強くていい女だなと思ってな」


 由美子の耳が赤くなった。


「さて、賀茂(かもの)と言ったか……。今日は俺に付き合ってくれるよな?」


 松島は忠陽の目を見ていた。忠陽はその威圧的な目が、伏見とは違う虚実を見抜く目だということに気づいた。


「はあ? どうしてそうなるの」


 由美子は激しく松島に抗議した。


「今はコイツに興味があってな。お嬢に悪いが、コイツを借りていく。お前らッ!」


 三連松がすっと動き、乱れず「はい! アニキッ!」と叫ぶ。


「このお嬢さんを死んでも守れ」


「はい! アニキッ!」


「傷つけたら、殺す」


 三連松は一瞬黙り込み、気弱に「はい、アニキ」と返事した。


「ちょっと! 私は忠陽君と行動するわ」


「分かったよ、お嬢。で、賀茂。どうする?」


 忠陽は数秒間考えた。


「金剛寺に行きたい、です」


「忠陽君。ここを離れるの!?」


 忠陽君は頷いた。


「そこで何をしに行く?」


「僕らよりも知って欲しい人がいるんです」


 忠陽は松島の眼力に負けじと、真っ直ぐに見つめた。松島はその面構えを見て、口を緩ませた。

信長の野望をやるとき、伊達成実という人物の名前をナルミと呼んでいました。

それが後でシゲザネと呼ぶんだと気づいたとき、たしかにナルミという名前は戦国時代では呼ばないよなと冷静に考えていた自分が居ます。

武の伊達成実、智の片倉小十郎。

この双璧が居たからこそ、伊達家は戦国の動乱の中、生き抜けて行けたのかなと、信長の野望をやりながら勝手に歴史解釈しています。(実際は成実は一度出奔しているらしいんですよね)

最近、信長の野望をやるとき、最初に必ず織田家、その後は勝手に歴史解釈ストーリーを頭の中で作って、作成武将を使って、遊んでいます。その名字が暁であり、ライバルとして作った武将が月影という名です。

ただ、このライバル武将はどんなに能力を強くしても、勢力が弱いからすぐに吸収されて、まともに戦うことなく、終わります。正直、つまんないです。


信長の野望 創造 COMPLETE SOUNDTRACK

コーエテクモゲームス

「光彩る(伊達家の出陣テーマ)」を聞きながら

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