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呪賦ナイル YA  作者: 城山古城
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第十話 神宮由美子の作戦会議 Part2 其の二

「それで、神宮さん。あなたの考えだとチーム美周郎戦はどうするつもりなの?」


 藤は由美子に聞いた。


「そうですね。私たちにできるのは火力のゴリ押しですね。今更、機動戦をしても勝ち目はないですし。その方が賀茂くんも生きてきますから」


「乱戦に持ち込むのね」


 由美子は頷く。


「一番心配なのは宮袋くんです。彼が戻ってこないと、そもそも火力でのゴリ押しが出来ません。それに甘利さんと周藤(すどう)さんと黄倉(おうくら)さんの三人でまとめて来られたら、私と氷見さんではかなり不利です」


「おい、賀茂。こういうときは男の出番だ。根性を見せろよ」


「根性でどうにかなるのかな?」


「そこは、はいって答えれば良いのよ!」


 藤と由美子が葉の強引さに笑っていた。


「賀茂くんはそういう戦い方じゃないから期待していないわ」


 由美子の一言に忠陽は肩を落とした。


「あ、ごめんなさい。……あなたに期待しているのは絹張先輩を倒したみたいに相手の裏をかく戦い方よ。その方が皆、あなたを警戒するし、私達も動きやすくなる」


「そうよ、賀茂くん。あなたはあなたらしい戦い方をしなさい。間違っても、森田さんや氷見さんの挑発に乗っちゃ駄目よ」


「藤ちゃん、私よりも賀茂の肩を持つんだ。つまんないの」


 藤は機嫌を取ろうと、葉の頭を撫でようとしたが、拒否された。


「でも、鞘夏さんの防壁を使えばある程度は防げるんじゃないかな? その隙に一人でも倒せれば……」


「確かにそうだけど、私はたぶん、周藤さんに付きっきりになると思う。その中で氷見さんが甘利さんとなると、かなり押されると思うわ。黄倉さんと魯さん、もしくは亜門さんを相手にすると、賀茂くんと鞘夏じゃあ、対処しきれないと思うの。理想としては、宮袋くんが甘利さんと一対一で別のところで戦っておいて、残り、私、賀茂くん、氷見さんなら、残りの三人と互角に戦えるとは思う」


「なんか、真堂を入れても変わらないような気がするけど……。大体、宮袋が甘利先輩とタイマンできるか?」


「確かにね……甘利くんに対して宮袋くんは頼りない気がするわ……」


 葉の問いに藤も賛同していた。


「私は大丈夫だと思っているわ。彼、結構にタフだし。それこそ、彼は根性でなんとかするでしょう?」


 由美子の問に三人は納得する。


「問題は、彼が負ける前に私達が一人でも良いから倒せるかよ。藤先生、周藤さんはログにもあるように炎術使い、それも中華系統の術式を汲んでいるものでいいですか?」


「そうよ。周藤くんはウチの宗先生の愛弟子と言ってもいいわ。武術、魔術ともに岐湊高校の武くんと普通に渡り合える唯一の人間よ」


「藤ちゃん、それってどのぐらい凄いの?」


「そうね、この前のチーム臥竜での氷見さんの状態で、神宮さんにみたいに魔術も使うになったぐらい凄いわ」


「それヤバいじゃん! 朝子、超最強じゃん!」


 忠陽と由美子はそのイメージが沸かなかった。


「神宮さんの言う通り、神宮さんは周藤くんに付きっきりになると思うわ。あの炎術を捌くのは賀茂くんにはちょっときついかもしれないわ」


「黄倉さんはどんな戦い方なんですか?」


 由美子が藤に聞いた。


「黄倉くんは周藤くんの盾ね。真堂さんの防壁を生身で体現できる感じかしら。確か(こう)気功って言ったかしら? 彼の筋肉に合わさって、鋼以上の硬さになるみたい。それでもって柔軟性があって、移動できるから、厄介よ」


「そうなると、氷見さんが二人持ってもらうしかないわね。魯さん相手なら賀茂くんでいいけど、亜門さん相手なら氷見さんが二人を……」


「朝子、またブーブー言いそう」


 藤が苦笑いする。


「それなら、最初に仕掛けるのはどうかな? 序盤であれば皆集結していない状態だから、奇襲は成功しやすいよ」


 忠陽が由美子に提案する。


「それ良いじゃん! ……でも誰にするのさ?」


 葉は首を傾げる。


「甘利さん」


 忠陽の答えにさらに葉は首を傾げる。


「甘利先輩?」


 由美子はその答えに頷いた。


「確かにそうね。賀茂くんが最初から隠形してもらえれば魯さんもそっちに目が行く。私が周藤さんを押さえれば広範囲での攻撃をする前に、賀茂くんが奇襲をしやすくなる。甘利さんを狙うついでに魯さんも狙えるわね」


「そうなると、魯くん以外にも黄倉くんも釣れるかも?」


 藤は楽しそうにしていた。


「美周郎はそれ以上のことを考えても仕方ないわね、方針として序盤に賀茂くんの奇襲を掛ける。私は周藤さんを抑えるという風にすれば、私達が得意な乱戦に持ち込めるかもしれない」


「そうね。後はチーム武帝とチーム臥竜相手ね」


 藤は一段落したところでコーヒーを口に運ぶ。それに習うように皆コーヒーを飲んだ。由美子はチーズケーキをフォークで小口にしながら忠陽に聞いた。


「チーム武帝は賀茂くんの奇襲作戦は通用しない可能性が高いのよね?」


「うん。少なくとも(たけ)さんを中心に半径五メートル以内なら僕を完全に認識できるみたい」


 由美子はフォーク起き、タブレットを取り出し、チーム武帝のログを見始めた。


「どうしたのさ、由美子?」


「チーム武帝って、かなり堅実な戦い方をするの。賀茂くん、ビリー隊の戦い方に似てない?」


蔵人(くろうど)さんたちが守って、ビリー隊長が敵を落とすみたいな感じ?」


「そう。チーム武帝って呪防壁の発動回数がかなり少ないの。武さんに限っては一回もない。だけど、武さんの得点数ってかなり低いのよね。一番得点を取っているのは遠山さん。その次に松前さん」


「そうなんだ……」


 忠陽はコーヒーを一口付けて、考え始めた。


「たぶんそれ、武くんと戦わないっていうのがセオリーになっているからかもしれないわ」


「藤ちゃん、どういうこと?」


「武くんは学戦のときもヤラれることってないのよね。それに学戦では武くんを相手にするよりも他の拠点を攻めることが優先されているの。気になって、周藤くんに聞いてみたことがあるんだけど、攻めにくい所よりも落としやすいところを狙っているだけだって言ってたわ」


「天野川流兵法が関係しているのかな?」


 忠陽は首を傾げる。


「天野川流兵法ね……。あとで爺やに聞いてみる」


「漆戸さんか……。確か、チーム臥竜戦のときに、葛城二佐が天野川流兵法のことも解説していたから分かるじゃないかな」


「爺やが素直に教えてくれるといいけど……」


「爺やっていつも由美子の側にいるおじいさん?」


「うん。爺やは私が生まれる前からうちの家に居る人なの。武術も爺やに教わっているわ」


「へー。あの人そんなに強いの?」


 由美子の顔が簡単に崩れ、何も言わなくなった。


「ねえ、賀茂、由美子が壊れた」


「たぶん、その特訓が地獄なんだろうね……」


「確か、葛城二佐のお父さんなのよね、あの人……」


 藤は恐る恐る忠陽に聞いていた。忠陽は黙って頷く。


「それがどうしたの、藤ちゃん?」


「たぶん、容赦ないんだろうなって……」


 藤が由美子を見ながら同情していた。葉は藤と由美子を見て、首を傾げる。


「神宮さん」


 由美子は忠陽の声で我に帰る。


「な、なに!?」


「周藤さんが言っていた、攻めにくい所より落としやすい所を狙ったまでってところ。僕らもそれに習うのはどうかな?」


「でも、誰を狙うの?」


「たぶん、神宮さんなら遠山さんに勝てると思うよ」


「私が遠距離戦をするってこと?」


「そう。僕らも二人の決着がつくまで待っている。そうすれば、数の優位は取れる。あっちが攻めてきたとしても、僕らは武さんさえ、狙わないようにすればいい」


「いいじゃん、由美子! ぶち倒してやりなよ!」


 由美子は悩んでいた。


「どうしたの、由美子?」


「あっちはライフルで、私は弓よ。速射性はあっちの方が上なの。こっちが撃つ前に相手は二発も三発も撃ってくる。そう簡単に戦えるものかしら……」


「神宮さん、速射性なら負けるかもしれないけど、あなたの弓はそれだけじゃないでしょう? あなたには銃にはない技を持っているのだから大丈夫よ!」


 藤が由美子を元気づける。


「あ、ありがとうございます。皆がそう言うなら、その作戦で行きましょう」


 由美子はチーズケーキを口に入れる。口に入れた瞬間にとろけて甘さが広がっていく。最後にはクッキー生地が食感を楽しみませてくれた。


「どう、おいしい?」


「ええ。とっても」


「爺やさんにお土産で持っていたら? 話してくれるかもよ」


「ありがとう、葉さん。そうしてみるわ」


 由美子はまたチーズケーキを口に運ぶ。

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