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お昼ごはんはすべての始まり  作者: 山いい奈
2章 未来のふたり(仮)
30/41

第14話 冷静になって

どうぞよろしくお願いします!( ̄∇ ̄*)

少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。

 紗奈(さな)(おお)うのは、何とも憂鬱(ゆううつ)な気分である。少しは()えていた怒りも再燃してしまっている。さっき感じた情けなさはどこかに行ってしまった。


「私もな、雪哉(ゆきや)さんの結婚の価値観はええと思う。でも私がそうや無かったから別れようと思ってたとか、どうにか思ってた通りになったからこのままでいようとか。何なんって思ってしもうたんよ」


 紗奈が憤慨(ふんがい)して言うと、万里子(まりこ)は「まぁまぁ」と苦笑する。


杉山(すぎやま)くん、雪哉くんは紗奈ちゃんのことを思ってるつもりやってんやろうねぇ。でも紗奈ちゃんにとってはそう思えんかったんや」


「私のことを? お母さんにはそう聞こえるん?」


 紗奈が納得行かないと首を傾げると、万里子は「まぁねぇ」と眉を下げる。


「紗奈ちゃんが雪哉くんの理想にならへんかったら別れるって言うんは、これ以上時間を使わん様にってことなん違うやろか。それは雪哉くんにとっても勿体無い時間やけど、紗奈ちゃんにとっても同じことやろ」


「それはそうかも知れんけど」


「雪哉くんの本心は判れへんけどね。けどそれやったとしたら、雪哉くんの言葉選びが悪かったねぇ。紗奈ちゃんが嫌な思いしてしまうんは解るわ」


「せやろ!?」


 紗奈は同意してもらえたと興奮し、テーブルに手を付いて前のめりになる。


「別れようと思ってたなんて、言わんでもええことやもんね。そこは雪哉くんもまだまだ未熟やねぇ。でも、雪哉くんが紗奈ちゃんを好きなんは間違い無いんやと思う。そうやって結婚を意識する程度にはな。まぁ確かに紗奈ちゃんは価値観を押し付けられた様な気になったやろうけど、雪哉さんの結婚観が今の一般的な理想やろうからね。うちのお父さんみたいに家事育児どころや無く、お世話まで奥さんに投げっぱなしにする人もいるんやから。まぁ私は専業主婦やから、どうにかそれができたんやけど。共働きでそんなんさせられたらたまったもんや無いからね」


「それは確かにそうかも知れんけどさぁ」


「共働きやのに奥さんが家事全部やって子育てもワンオペっていう夫婦は実在するんよ。それを思ったら、協力しあうことを考えてくれてるだけ及第点(きゅうだいてん)やわ」


「ちょっと、お母さんはどっちの味方なん!」


 万里子が雪哉さんの肩を持つ様なことばかり言うものだから、紗奈はつい声を荒げてしまう。すると万里子はきょとんとした顔を向けた。


「そんなん紗奈ちゃんの味方に決まってるやん。これでも紗奈ちゃんを傷付けた雪哉くんに怒ってるんよ?」


「そんな風には見えへんけど」


 紗奈は()ねる様に唇を尖らせてしまう。万里子はその表情がおもしろかったのか、「ふふ」と微笑んだ。


「で、紗奈ちゃんはどうしたい? 雪哉くんと別れたい?」


 訊かれ、紗奈ははっとする。それは考えていなかった。紗奈はただ腹が立っただけだ。雪哉さんの上から目線の発言に馬鹿にされた気がしたからだ。


 だが、あらためて考えてみると、そんなことを言う様な人とこれからも付き合って行けるのだろうか。例え紗奈を思っての発言だったとしても、あまりにも配慮が足りなかった。


 優しい人ではあるが、特別心配りができる人では無いことは判っている。だが今までこんな心無い発言をされたことは無かった。


 もしかしたら、雪哉さんも結婚をしたくて焦っていたのだろうか。それがあの失言に繋がったのだろうか。


 そう思い至ったとしても、紗奈が雪哉さんを許せるかどうかは別の話だ。


「……雪哉さんと、話をしてみる。落ち着いてできるかどうか判れへんけど」


「そこは頑張って落ち着きぃ。そうやね。別れる気が無いんやったら、ちゃんと話し合わんとね」


「うん」


 紗奈はバッグからスマートフォンを取り出す。雪哉さんと連絡を取ろうとSNSを開くと、雪哉さんからびっしりと謝罪の言葉と、あらためて話を聞いて欲しいとのメッセージが届いていた。


「雪哉さん……」


 紗奈はつい(ほだ)されそうになってしまう。だがここであやふやになってしまってはいけないと、気をぐっと引き締める。紗奈は考えながら返事を打った。


『最後まで話を聞かずに帰ってしまってごめんなさい。ちゃんと話をしたいと思います。来週土曜日か日曜日のご予定はどうですか?』


 そうして翌週の土曜日、お昼過ぎから会うことになった。紗奈はあらためて雪哉さんからのメッセージを読んで、小さく息を吐く。


 雪哉さんは紗奈への好意と、結婚相手の理想との差異で揺れていたのかも知れない。だがそれは紗奈の与り知らぬことだ。紗奈は雪哉さんに結婚願望があることも知らなかったし、それを押し付けられても困るだけだ。


 とは言え、紗奈が大人になりきれていなかったこともあって、申し訳無かったとも思うのだ。今でもちゃんとした大人とは言えないが、それでも学生のころ、就職したばかりのころよりは成長できていると思う。それは本当に事務所の皆さんに感謝だ。


「1週間もあったら頭も冷えるやろ。熱くなったらあかんよ。ちゃんと話を聞いて、紗奈ちゃんも思ったことをちゃんと伝えんと」


 万里子に言われ、紗奈は神妙な顔で「うん」と小さく頷いた。

ありがとうございました!( ̄∇ ̄*)

次回もお付き合いいただけましたら嬉しいです。

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