第13話 私を何だと思っているのか
どうぞよろしくお願いします!( ̄∇ ̄*)
少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。
紗奈があびこの我が家にたどり着き、サンダルを脱ぎ捨ててリビングに入ると、繋がるダイニングでお昼ごはんを食べていた万里子が「あら」と驚いた声を上げた。隆史は無言ではあるが、息を飲んだ気配がする。
「紗奈ちゃんどうしたん。今日は晩ごはんまで外やったんちゃうん?」
「うん、そうやねんけど……」
紗奈はダイニングに向かうと、いつもの席に腰を下ろす。横のいつも清花が座っている席にバッグを置き、さっきしまったばかりのお弁当箱を出した。
「これも良かったら食べたって」
「朝作ったサンドイッチやん。半分も残ってるんやね」
「うん。食べてる途中で喧嘩してしもうた」
「あらら」
万里子は目を丸くして、残り少なくなっているピラフのお皿にスプーンを置いた。ツナマヨネーズのサンドイッチを取って口に運ぶ。じっくり味わう様に食べて「うん」と頷いた。
「美味しくできてるやん。頑張って作ったのに」
「そうやねんけどさ」
紗奈も卵フィリングのサンドイッチにかじり付き、もぐもぐと口を動かす。
確かに我ながら美味しくできたと思う。万里子に教えてもらいながらだったが、実際に作ったのは紗奈だ。雪哉さんは喜んでくれるかな。そんなことを思いながら、薄い食パンにバターを塗り具を挟んで行った。
卵フィリングは電子レンジを活用した。レシピに載っていたのは、ゆで卵を作って皮を剥いて包丁で切って、という方法だった。だが万里子が「そんなん手間やん」と言って教えてくれたのが、電子レンジでの加熱だった。
耐熱容器に生の卵を割り、ざっくりと黄身をほぐしてレンジでしっかり加熱する。火通りに偏りが出るので途中で一度全体を混ぜて。それをフォークで混ぜて崩す。粗熱を取ったそれにマヨネーズと辛子少々を合わせるのだ。
「洗い物も少ななって、手間も少なくてええやろ」
万里子は専業主婦だが、時短や手間抜きはしっかりと取り入れているのだ。毎日のお料理はそれだけ大変な作業なのだと言える。
レンジでの加熱のため、卵の表面が少し乾いてしまうのだが、マヨネーズがしっとり感を取り戻してくれるのである。
紗奈は続けてハムとチーズときゅうりのサンドイッチを取る。ハムとチーズの程よい塩気と甘み、きゅうりのみずみずしさが良く合っている。
ツナマヨネーズにはみじん切りにした生の玉ねぎも混ぜ込んでいた。マヨネーズは卵フィリングにも使っているのでこちらでは控えめにしている。ツナの中から覗く玉ねぎのしゃりっと感が爽やかだ。
隆史は手早くピラフを掻き込むと、ツナマヨネーズのサンドイッチに手を伸ばした。大きな口でかぶりつき、無言で咀嚼している。美味しいだろうかと思いつつ、万里子のお料理にも「美味しい」などと言わない隆史なので、紗奈も感想は期待していない。
隆史はサンドイッチを食べ終えると「ごちそうさま」と席を立った。そして。
「……旨かった」
小さく、だが確かに紗奈を見て言ったのだ。紗奈は驚いて目をぱちくりさせる。紗奈の正面で万里子が「ふふ」と微笑んだ。
「我が娘が作ったもんには、ちゃんと美味しいて言うてくれるんやね」
隆史は照れ臭そうに目を逸らして、食器などもそのままにダイニングを出て行った。自室にでもこもるのだろう。それが隆史の休日の過ごし方なので何ら不思議は無いのだが、少しは気まずさもあったのかも知れない。
「で、喧嘩なんてどないしたん。お母さんには言いにくい?」
万里子もピラフを食べ終え、空になった食器を重ねて立ち上がる。それをシンクで水に浸けると、冷蔵庫から麦茶のボトルを取り出して、紗奈のグラスも出して麦茶を入れてくれた。
「ありがとう」
「うん」
紗奈は麦茶を一息で飲み干すと、「はぁー!」と特大の溜め息を吐いた。
「聞いてくれる?」
「ええよ」
紗奈は雪哉さんに言われたことをぶちまけた。家に帰って来て少しは落ち着いたつもりだったが、話しているうちにまた熱くなって行く。つい口調も険しくなってしまった。万里子は「うんうん」と相槌を打ちながら真剣に聞いてくれる。
「……でな、私のこと何やと思ってるねん、て思ってん」
紗奈は言い切ると、また溜め息を吐いた。
ありがとうございました!( ̄∇ ̄*)
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