表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お昼ごはんはすべての始まり  作者: 山いい奈
1章 あらたなる挑戦
1/41

第1話 入社を控えて

新連載です。

どうぞよろしくお願いします!( ̄∇ ̄*)

少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。

 大阪メトロ御堂筋(みどうすじ)線あびこ駅。駅前から続く商店街があり、いかにも下町と言った風情の街である。天野紗奈(あまのさな)が住まう街だ。


 3月31日の夜、紗奈は商店街から少し横道に逸れた居酒屋で、3歳年上の恋人杉山雪哉(すぎやまゆきや)さんと向かい合ってお酒を()み交わしていた。


 短く刈り上げた黒髪に、すっきりとした顔周り。涼しげな目は柔らかな弓なりで、そうイケメンでは無いのだが、紗奈を安心させてくれる容姿の雪哉さんだった。


 今日は黒いTシャツの上に濃い緑色のパーカーを羽織(はお)り、下はブルーのストレートジーンズと言う(よそお)い。靴は雪哉さんが一目惚れしたと言うネイビーのごついスニーカーだった。


 紗奈はAラインのミディ丈ワンピースに身を包んでいた。色はエメラルドグリーンのシンプルなもの。楽に着られるのでお気に入りの1着だった。足元はブラウンのショートブーツ。色んな服と合わせやすいことと、ヒールが低いので歩きやすくて重宝している。


 ここはチェーンの大衆居酒屋なのだが、コストパフォーマンスがとても良い。安価なのに美味しいお店だ。社会人になって丸3年の雪哉さんはともかく、就職を控え、立場上まだ学生の紗奈の(ふところ)事情を考えると、こういうお店を選びがちである。


 雪哉さんの方が紗奈より飲み食いする量が多いので、その分多く支払ってくれるが、記念日とかでなければ(おご)りなどは無い。ふたりで楽しむのだから、そういうものだと思っている。


 わいわいと雑多な店内だった。壁にはメニューが書かれた縦長の紙が所狭しと貼られ、品数の多さを物語っている。簡素とも言えるテーブルに、椅子は背もたれの無いもの。だがクッションがしっかりしていて、居心地の良さを感じさせた。


 そういう居酒屋だから、かしこまった様な格好のお客はおらず、老若男女入り混じって、ラフな普段着でお酒とお料理を楽しんでいた。


 雪哉さんは生ビール、ビールの苦味が苦手な紗奈は酎ハイのレモンを飲んでいた。お料理は枝豆やだし巻き卵、とん平焼きなど定番のものがテーブルに並んでいる。


「明日入社式やな。緊張するか?」


 雪哉さんのせりふに、紗奈は「どうやろ」と首を傾げる。


「会社や言うても、小さなとこですもん。うーん、でも少しは緊張するかなぁ」


 大学の先輩後輩という間柄からスタートしたからか、紗奈は雪哉さんに対して丁寧語が抜けなかった。呼び方こそ「杉山先輩」から「雪哉さん」になったものの、この話し方に慣れてしまっているし、わざわざ変えようとは思わなかった。雪哉さんが特に何も言わないこともある。


「会社の規模が大きくても小さくても仕事は仕事やし、それなりの責任はあるわな。しんどかったらいつでも話聞くから」


「ありがとうございます」


 雪哉さんの優しい言葉に嬉しくなり、紗奈は微笑んだ。


「それとさ、紗奈」


「はい?」


 雪哉さんは何か言いたげに口を開く。だが言葉にはならず、言い淀む様に細い目をさらに細めた。


「いや、なんでも無い」


 結局滑り出て来たのはそんな言葉で、紗奈は「そうですか?」と特に疑問を感じることも無く、その時間を過ごした。

ありがとうございました!( ̄∇ ̄*)

次回もお付き合いいただけましたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ