7話 入団試験 その2
彼は思ったより強かった。
〈光〉〈闇〉の2属性持ち。しかも二刀流でそれぞれ属性が違う剣で緩急のある連撃。
「鬼神双剣術・閃淵斬」
彼を中心に放射状に広がる光の斬撃に、足元から現れる不規則の斬撃。
希少二属性の特徴として、お互いが打ち消し合うため、制御は難しいはずなのだが、うまく使いこなしている。
私が光を氷の水晶で屈折させながらロンダードジャンプクからのバク転、さらに伸身後方空中回転で回避すると、彼が
「猿かよw」
と呟いたので、少し怒りを込めた破壊光線を30発程撃つ。
彼は闇の防壁で防ぎつつ、対抗するように二連続側方倒立回転からのロンダードジャンプ、屈身後方空中回転、さらにバク転、ついでにトリプルアクセルも付け加えて回避し、おまけに空中で光の目眩ましを撃つ。からの超速接近で6連撃。
私が目を瞑りながら全て槍で受ける。
「《光ヲ包厶暗瀞》」
「《妨害拒否》」
光属性封じも弾かれる。面白いな、気合入れよう。
「死滅属性、神位《呪イノ腕》」
足元からおびただしい数の白い腕。並列発動で更に、
「死滅属性、神位《死屍累々》」
大量のアンデッドモンスター召喚。
「マジかっ、『鬼神双剣術・昼夜永連撃』」
360度全方向に487連撃、召喚した全て斬り伏せる。しかし、その直後に隙。
「死滅属性、神位《戦場ヲ駆ル死神》」
「やばっ」
彼が一瞬遅れた。剣で防いだが、私の鎌を左手で受け止めきれる訳もなく、剣ごと首をぶった斬る。
しかし、安堵した直後、刹那、空中で首の口が動くのを見た。道連れにする気だ。
「神位《陰陽融合広域爆破》」
「神位《烈光スラ包ミ込厶命亡キ深淵》」
相手の複合術式を闇、命属性で包み込む、魔力空になるまで絞り出す。
少し衝撃が溢れ、30mほど吹っ飛んだが、何とか生き残った。
◆◇◆◇
「いやー、油断した。言い訳ではないが、まさかあんなに強いとは。」
「こっちのセリフですよ、結構危なかったです。」
「初見の相手に負けたのは君で6年ぶりだよ。」
「それは退屈だったでしょう。」
「お、分かる?久しぶりにめっちゃ楽しかったよ。」
「こちらこそ。私はボコボコにしたりされたりしますが、実力が拮抗してると楽しいですね。」
「『されたり』?まあいいか。ただし、あれが俺の全身全霊だと思うなよ。」
「さっきから言ってるでしょう。こっちのセリフです。」
「何やってるんですか。」
「あ、リル。どうだった?」
「絵に描いたように舐め腐ってましたから、ボコボコにしました。」
「お、君も強いの?プライベートで一戦やらない?」
「やりませんよ。師匠の対戦相手の方ですか。試合見てました。この人相手にあそこまでやるって、凄いですね。相手が違ければ、合格間違いなしだったでしょうに。」
「筆記は問題ないから多分セーフ、、、と信じるよ。あ、勝者呼ばれてるよ。早く行きな。」
「ありがとうございます。私はエリリアと言います。そちらのお名前は?」
「本田優介。じゃあ、お互い合格したら、また。」
・・・え?日本人?
彼に詳しく聞こうとしたが、早く来いと急かされ、結局聞けずじまいだった。
◆◇◆◇
「最終試験はこのくじで出たものを行います。現在総合一位のエリリアさん。くじ引いてください。」
「おい、あの子、ホンダに勝った奴だ。」
「は?まぐれにも程があるだろ。」
「試合見てなかったのかよ。化け物だぞあの子。迷宮の時も一位だったし。」
「まじかよ。何もんだ?」
どうやら本田さんは有名人らしい。まあ、あの強さじゃ当然か。
ていうか私がくじ引くの?恨まれそう。簡単なの来い!!
「26番は、、、え?」
試験員が困惑顔を見せる。
「さっき見たときはこんなのなかったような、、、」
「ボクが付け足したからね。」
いつの間にか試験員の背後に、長い金髪蒼眼の美少女。ただし身なりはあまりきれいではなく、服は血の付いた白衣、髪はボサボサ、丸メガネをかけ、忌々しい豊かな胸をした、自由奔放自己中心といった印象だ。
「ちょっソラ様!困りますよ!勝手に!」
「大丈夫だって。この方が見込みあるなしよくわかるじゃん。」
・・・ソラ!?なんでこんなところに!?いや、それより、
「あ、あの、、、」
「あ、ボクのファンかい?サインが欲しかったら合格してみな〜」
「いや、そうじゃなくて、、、」
「さあ、最終試験!!ボクの最大出力の魔法を受けきったら、筆記0点でも合格にしてあげるよ〜」
それを聞いて会場の空気が引き締まる。仕方ない。話は合格してからにしよう。
「それはいくらなんでも、、、」
「試験員ちゃん、堅いこと言わずに、全責任はボクが負うから。」
「、、、言いましたね。守ってくださいよ。はあ。」
「じゃあ、みんな疑似世界に入って〜」
、、、魔法一つ受けきるだけなら、簡単そうに思えるが、そう簡単ではないようだ。