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6話 入団試験 その1

 父上は正真正銘化け物だ。

 騎士隊長にも勝るにも劣らない実力に、何の属性にも派生しない謎多き固有属性、〈時空〉。

 神速の剣に空間転移、超速思考に膨大な魔力。私が勝てる道理はない。

 時間と空間を操るとか、強すぎ。この人に勝った騎士団長のライトって何者?


 時間を戻すとかは戦闘中にできないけど、自分の思考速度を速めたり、自分を速くしたり、逆に当たれば動きが遅くなる魔法撃ってきたり、空間転移で私の頸椎だけを転移させたり、空間転移の応用で私に雷やら溶岩やら落としてきたり、しかもそれらすべてが即死で私には一切の苦しみが無かったりと、全く手も足も出なかった。リルが横で震えてた。


「かなり上達したね。魔法。」


「はあ、はあ、い、嫌味にしか聞こえないの、気づいてますか?」


「昔は素手でも難なく勝てたのに。」


「いつの話ですか。」


「ついこの間だよ。10年くらい前。すっかり大きくなって。」


「・・・」


「まあ、これで入団試験に落ちることはないとは思うけど、油断はしないように。何年かに一度、合格率バカみたいに低い年があったりするし。」


「例えばどんなのですか?」


「実践形式で相手が隊長クラスだったり、バトロワ形式だったり、俺が独断と偏見で審査したり、上位魔法以上使えるのが条件だったり、人間蠱毒やってみたり、色んな試験があるかな。」


 ・・・人間蠱毒(こどく)?怖っ。


「まあ、筆記もエリならだいじょうぶだろうけど、慢心して油断するやつは俺が落としてるから。気を付けて。」


 ◆◇◆◇


 魔法騎士団。この国の王家直轄の騎士団で、国の秩序を守る者。

 ただし、その戦力は、他国への侵攻などには使われず、あくまで“守る”力だと父は明言している。この国では数千年、戦争は起きていない。圧倒的すぎる戦力と、それらが不老によって永遠になくなることはないという事実から、この国に手を出すようなバカはいないからだ。

 あまりの強さに、「竜の国」って呼ばれているらしい。実際は竜より強いけど。


 一年に一度の入団試験は多くの腕に覚えのある者がやってくる。

 入団の筆記は大して難しくないが、実技が超難関として知られ、1発合格はほとんどいないという。時には実力だけではなく精神を問うこともあり、油断できるものではない。

 ちなみに試験料は無料である。


 そんな入団試験の日がやってきた。


 筆記試験。中学2年生位の内容。腐っても前世では天才外科医として名を馳せたのだ。これくらい間違えることはない。

 横ではリルが頭を抱えている。


「私も騎士団に入りたいです!」


 リルはそう言ってきた。リルには許可を取るべき人は私ぐらいしかいない。フウリ隊長は元々そのつもりだったらしいし、全然大丈夫だろう。


 筆記終了。リルが言うには『多分大丈夫』らしい。


 次は緊張の実技。筆記で遅れを取ったものが取り返そうと息巻いている。


「えー今回は3次までの実技試験を行います。1次は迷宮タイムアタック先着100名。2次は戦闘で50名まで減らします。3次はその時に発表します。」


 100人?50人?会場には500人位人いるけど。


「では、迷宮に入れますので、皆さんこの〈疑似世界〉に手を触れてください。」


 ◆◇◆◇


 なるほど。迷宮は踏破可能が当然。大前提。なかなか高レベルだな。

 同じ迷宮に人はいない。迷宮は一人一つでいくようだ。

 迷宮の規模は探知魔法で探ったところ、大体広島県ぐらい。一日で行けると思われてないな。

 〈疑似世界〉では時間の流れ方の変更も可能だから、3ヶ月ぐらいかかる計算なのかも。この試験考えたやつやばいなー。

 地下迷宮だから飛ぶのは無理。

 迷宮の魔物を倒したら食べ物ドロップする。これで生き延びろってか?

 面倒くさい。よし、ガン無視戦法で行こう。


「闇属性魔法、極位《常闇把握》」


 迷宮の全体を魔法で把握。()()()()()()()確認する。


「氷属性、破壊属性、闇属性複合術式、神位《氷壊昏直貫通砲・有効半径2m》」


 迷宮の壁を魔法ぶっぱで貫通。直径4mの直線の凍った道が完成。あとはこの氷の上をスケートしながら進むだけ。一応身体強化つけて全速力。


 結果、ぶっちぎりの一位。しばらくしてボロボロになった挑戦者たちが続々と帰ってきた。

 リルもそこにいた、彼女は内部時間で6週間で踏破し、4位だった。

 12歳は入団可能年齢ギリギリで、周りは冒険者や元傭兵もいるのに、500人中4位は十分すごい。

 100人に達したとき、魔物にやられた人、間に合わなかった人などが、観客席に一斉に放り出された。


 ◆◇◆◇


「次はくじでペアを作ります。ペアで勝った方が3次試験を受けられます。」


 31番、これと同じ番号を持っている人が対戦者。


「31番の人いませんかー?」


 そんな声が聞こえたのでその方向に行ってみる。20歳くらいの男性。

 剣を2本携えた、黒髪黒目のイケメン。


「私です。」


 彼は少し複雑そうな目で私を見て憐れむように言った。


「・・・手加減はできないからね。」


 対する私は満面の笑みで言った。


「馬鹿言わないでください。こっちのセリフです。」

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― 新着の感想 ―
[一言] これは……絶対受かる気しかしない……
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