30話 大会、開幕
「新人戦大会第347回!開幕です!!司会は私、フウリ・ディアがお送りします!!」
何やってんだあの人。
「いや〜平和ですねえ。この前の大魔氾濫後は魔獣被害もピタリと収まり、それはもう暇で暇で。そんな中のこんな楽しいイベント。気が利くなあと思いましたよ。」
「解説は私、ジャック・A・フォムスがお送りします。」
ジャック!!ほんとに何やってるの!?
「獄炎だ!!」
「獄炎のジャックだ!!」
え、なに?その凄い二つ名。
「無敵のソロ冒険者として名を馳せ、単独ドラゴンスレイヤーとしても知られる彼。かなり前に引退したので知らない人も多いかもしれませんね。」
「私の初恋を返せクズ野郎ー!!」
「降りてこいスケコマシー!!」
「一発殴らせろー!!」
「おっと、マダム層からジャックさんへ大量の罵倒が!!一体何をしたんですか?」
「さあ。昔すぎて忘れてしまいましたな。」
なんか、知らないほうが良さそうだな。うん。
「さあ、今大会の新人戦。国民の皆様に騎士団の実力を知ってもらい、安心してもらうという物です。まあ賭け事はロビーのフロントで行っているので、違法賭博は止めてくださいね。」
賭けやってんの?嘘でしょ?
「出場資格は入団5年以内。総勢222人の選手たち。きれいに2が揃ってますね。さあ、選手たちの入場です!盛大な拍手を!!」
色々言いたいことはあるが、まあいいか。門から普通に入場する。
「予選はバトルロワイヤル!!この222人を15人まで絞ります!!そしてさらにもう一枠敗者復活席も用意しております!リッちゃん頑張れ!」
「公平に司会しろー!」
「リッちゃんって?」
「フウリ様の妹だよ。」
リルの方を見ると顔を赤くして俯いてる。かわい。
「開始の前に開会の言葉〜。陛下から?そんなんどうでも……え?流石に?はいはい。いつも通り最初はくそつまんない陛下の話で〜す。」
笑い声と共に苦笑しながら父上が登場する。
この国はかなり国民と王の距離が近い。何なら貴族より国王の方が国民にとって気を使わずに話せるレベルである。国民に舐められる等の声もあるが、それをさせないだけの実績があるのだ。
「え〜。皆さんが静かになるまで2秒かかりました……早いな。俺の話はくそつまんないそうだからこの二千文字くらいある原稿は捨てるわ。
一応自己紹介。国王のノア・グリーンだ。流石に知らない奴はいないわな。
じゃあ…何話そうか…そうだ。先の大魔氾濫、犠牲者は4人。負傷者は16人と、魔王が攻めてきたとは思えない数だ。だが、これで満足してはいけない。
死んだのはリード街の門番フレイ、同じくウィーン、新人騎士のロル、フィリスの街のジークの娘のティナだ。
俺の理想は犠牲者0負傷者0だ。例えどんな敵が攻めて来ようともな。
俺は国民は皆、俺の家族だと思っている。故に父である俺は、皆を護る責任があるが、流石の俺も一人では限界がある。
故に騎士団がある。騎士団に入ったからには君たちはもう、護られる側ではなく護る側。
無論強くなければいけない。
そのためのこの大会だ。優勝者はライト団長との記念試合と賞金、昇級だが、その為だけに闘うのも良し。自分が護りたい人を考えて、自分の信念の為に闘うも良し。ただ只管に最強を目指して闘うも良し。
俺が求めるのは只二つ。
強さ。そして意思。
自分の意思を持って護るべきものを護ってほしい。
己の正義を信じて………」
「はーいやっぱりくそつまんないですね〜。そんな当たり前のことより早く開会の言葉をお願いしまーす。」
「え、俺結構いい話してたと思うんだけど……まあいいか。じゃあ行くぞ。総員、構え!」
指を小さく鳴らして右手にアスを召喚する。
「は〜い皆でカウントダウンお願い!!10!」
観客が苦笑しながらフウリと一緒にカウントダウンを開始する。
「9!」
「8!」
「7!」
「6!」
「5!」
「4!」
「3!」
「2!」
「1!」
「《零》!」
父上が0と言うと同時に視界が揺らぎ、樹海に転移。
『疑似世界のステージは【神白】の世界にある、「精霊王の大樹海」!!何処に敵がいるかは全くの不明!危機察知能力と戦闘力、情報力を活かして最後の15人まで生き残れ!』
巨大な木が所狭しと生え並び、鬱蒼と草花が生い茂る。
例えるならナ●シカの腐海かな。上にも下にも木の根と草花。立体的な機動が重要だが、飛行するには少し障害物が多い。
『新情報!一人リタイア!速すぎる!原因は……あ。これなら仕方ないか。フィールドに放たれた精霊姫竜、クインテットに殺られた模様!』
クインテット!?嘘だろそんなの居るの?
五重奏の名の通り、五つの首からそれぞれ別の属性ブレスが放たれる、【神白】に住まう化け物だ。
人間に友好的で、稀に人に化けて人里に遊びに来る事もあるという。
そこをスカウトされたのだろう。父上は何であの化け物を雇ったのだろう。
予選はそんな、不穏過ぎるアナウンスから始まったのだった。




