26話 脱出戦 1
よい子は謎の転移陣があっても興味本位で凸るのは辞めましょう。こうなります。
◆◇◆◇
転送先は、広い野原。
なんとなく違う世界だということは分かる。
周りを見渡すとポツンと家が建っている。
あれは家だ。家………あれ?なんであれを家だと思ったんだ?あんな変な形の物体を。
いや。あれは家だ。え?家?家なんだよな?
「余り考えるな。頭がおかしくなるぞ。」
「なんか、夢を見ているような……現実なのに現実味が無いというか……」
「こんな深い森の中にサメがいる時点で現実とはいえないんじゃないか?」
「え?深い森の中?ここは野原じゃ………あれ?砂漠だ。」
「は?何言って……あれここ海の中?いや宇宙?」
「……ずっとここにいたらほんとに頭おかしくなるなりますね。」
「……とりあえず、あの家と思しきものに行くか。」
◆◇◆◇
家(仮)は、なんだろう。形容できない。三次元の物体ではあると思うのだが、何だろ。変な形。
インターホンがある。インターホン。これはインターホンだ。もう考えるのはよそう。
押す。
「あ?誰やこんなとこで………」
聞き覚えのある声。
「あ、ナマケモノとちんちくりんやん。」
「「ハデス(さん)。なんでこんなとこにいるんだよ(ですか)。」」
ハデス。命、破壊の神格精霊にして冥府の王。
ていうかベルフェゴールさんハデスと知り合いなんだ。ナマケモノって……
「ちんちくりんってお前のことか?」
「不本意ですけどそうですね。」
私は14歳にしてはかなり背が低い方だ。黒髪の美少女ではあるが、私がなりたいのは美少女ではなく美女である。
「左目の色変わってんやな。両方青目やったのが赤目になっとる。ええ魔眼やな。」
「なんでこんなとこにいるんだよ。」
「いや~なんか封印されちゃってな。2年前、俺んちになんや変な格好した女が来た思たらいきなり魔法ぶっ放してきて、出れないから住んどる。別に封印されてても仕事できるからあんま困ってないけど暇。」
「ハデスさんでも出れないんですね。」
「せやねん転移効かへんし。どないして入ってきたん?」
「後ろにある転移魔法陣で……」
そう言って振り返る。
転移魔法陣は消えていた。
「……」
「で、お前は出たいのか?」
「暇やし出たいな。」
「え…ど、どうやって出るんですか?」
「おいおい。俺を誰だと思ってるんだよ。」
「流石に魔王封印ほどの結界ちゃうやろ。」
「なるほど。」
「じゃ、腐れ縁の好で出してやるよ。純度AA魔石20tな。」
「キッツ。」
「まあまあ。出れるんですから。」
「じゃあ行くぞ。『破壊神位魔法並列発動三千、複合術式肆次元式魔術《参次元断絶・墜神鋏》』」
…………なんかヤヴァいこと言ってる。かわいいくまのボイスで言うことじゃない。
目の前に、とてつもなく巨大な刃が現れ、空間を切り裂いていく。
【封印の強制突破を確認。番人を召喚します。】
「あ?」
「なんや?」
「番人?」
◆◇◆◇
突如視界が暗転し、だだっ広い地平線まで真っ白な空間。
「全員いるな?」
「おるで。」
「います。」
「偶にあるんだよなあ。強制突破しようとした時に現れる番人。しかもこれ、突破しようとした時の魔力を反転して使うタイプの、めんどくさいやつ。」
え?それはつまりさっきのクソ強魔法と同等の強さってこと?何してくれてんの?
「まあ、俺なら簡単に倒せるから安心s…
【強力個体を確認。2時間限定の超威力封印を発動。「魔王ベルフェゴール」の一時的封印に成功しました。】
「……うそやん。」
【召喚:破壊神の直属眷属、災害魔獣デストロイ。】
「これは本格的にヤバいですね。」
「アイツやったらさっさとでてくる思うけど、アレはヤバいな。」
目の前に現れたのは、体長30mくらいの黒い獅子。
禍々しい靄を纏い、目が4つ。深い紫の鬣と黄金の牙。かっけえ。ゲームだったらスクショ連打レベル。
例えるならラスボスの第二形態。なんか近いやつはゼル●で見たことあるな。
そういえばガチ命の奪い合いって、クソ親父くらいかも。
かなり絶望的な状況。負けたら終わり。
……あれ?やばい?
「アスちゃん。来て。」
指を鳴らす。同時に異空間に格納していたアスちゃんが手元に現れる。
(お、はじめてのでばん………なにあれ。えぇ……さいしょはさ、ごぶりんとかでためしぎりを……)
「なんやその槍。えげつないな。」
獅子……デストロイの口元に黒い球体が出現。
『《■▣▤▦□■■》』
デストロイがなにか発音する。共に、黒い閃光。
間一髪で躱す。放たれたのはそこらの砦なら消し飛ぶであろう光線。
髪が一部散る。
「…………やばすぎやろ。」
………やばい。やばいやばい。……最高。
「サタンの時は意識してなかったけど、なるほどね。」
「なんや?頭おかしなったか?」
これが、絶望。
ふーん。あー。大逆転したら、気持ちいいだろうなあ。
「おい?ちんちくりん?」
「《戦天ヲ駆ル死神・戦狂イノ鎌》」
槍が黒く染まる。
(………ますたーがしんだらこまるから、しなないでね。)
「好奇心で突っ込んだ私が悪いけど、まあ死んだら3人平等に呪ってね。」
「やるん?まあそれしか無いけど……そんな顔で臨む戦場ちゃうで。」
ん?なんのことだ?
(ますたー。にやけすぎ。せんとーきょー。)




