19話 隊長の実力
「くっそー。どうやってあそこで偽物とすり替わったのさ。」
「あれはちょっと複雑なんだけど……」
やばすぎだろ。私だったら最初の一撃で死んでいてもおかしくない。
仮に躱せたとしても、あの連撃は無理。
ていうかあの雷の雨と無差別放電は反則だろ。これがゲームだったらクソゲーと言ってコントローラーへし折ってたわ。
切り札使っても勝てないんだろうな。なんせあの母上と同等若しくはそれ以上だもん。
雷は刀じゃ斬れないよね。斬れたっけ?
空って刀で斬れたっけ?ほんとに一瞬宇宙見えたし。
「ねえエリリアちゃん、君とも一回シてみたい♪」
「言い方……まあ、勝てる気がしないんですけど。」
「試験映像は見たけど、実力は体験しないと分からないじゃん♪」
「じゃあ、やるからには全力で行くんで、油断して負けたりしないようにしてくださいね。」
「そうこなくっちゃ♪」
◆◇◆◇
《疑似世界起動 フィールド:永久平野》
―――――3 2 1 START
距離は50m程。相手側に動きは無し。初撃は私からってことか。
じゃ、遠慮なく。
「《命ノ呪》」
444組の藁人形と釘。
藁人形に釘が近づく。
「!!陽炎流、辛ノ技、炎禍旋斬!!」
釘が刺さる前に全て焼却。一つでも藁人形に釘が通ったら致命傷というチート魔法だが、発動の隙と効果範囲の都合で使い道が難しい。発動させたら勝ちレベルの魔法だが、全て斬られた。化け物じゃん。
「その魔法やばいね♪」
「《戦天ヲ駆ル死神》」
「最初っからトップギアだね。陽炎流、丁ノ技、炎回流転」
鎌が受け流され、躱される。
「《死詩》」
巨大な骸骨が出現し、歌い出す。
「《炎弾》」
ホムラは聞くと駄目だと即座に判断し、魔法で自分の耳を潰す。判断が速すぎる。
天狗のお面の師匠も顔負けだ。
「陽炎流、乙ノ技、森炎」
炎の木々。これやばいな。こっちは動けないのにあっちは普通に動ける。
しかもこの炎の魔物たち、普通に強い。まあ10秒も経てば歌で死ぬけど。
普通この歌3秒も聞いたら効果あるはずなのだが。
「陽炎流、甲ノ技、天割、三連」
3連続超斬撃。連続で撃てんのかよ。
被害は右足一本。氷の義足を作る暇は無いな。炎の刀が私の首まであと4cmも無いもん。
仕方ない。
「死滅属性神位魔法、並列発動✕44、複合術式、《殲滅祭》」
体が影に覆われ刀を弾く。
直後、空は闇に覆われ、不気味なほどに紅い月が大地を照らす。
大地一面に彼岸花が咲き乱れ、暗い世界を紅く照らす。
「切り札……かな?」
「そうですね。1つ目の切り札です。」
地面から大量の凶器の数々。
大鋏、巨大定規、コンパス、カッターナイフ、剣、槍、鎌、斧、チェーンソー、大砲、戦車、巨大鉛筆、シャーペン、三角定規、傘、モーニングスター、大砂時計、ミサイル、サブマシンガン、拳銃、時計の針、刺繍針などのこっちの世界には無いような物も大量生成。
この結界内は想像を具現化できるチート空間。ただし構造と成分を完全に知っている物に限る。まあ1分も持たないしここで生成したものはすぐ消えるけど。
一斉攻撃。
「あはは、やっば♪」
攻撃がホムラに当たる直前、ホムラの髪が紅く染まる。
「陽炎流、完ノ技、赤紅緋朱」
爆音。同時に大量の巨大な火柱と火玉。暗い結界内が赤く照らされる
「千爆舞」
炎が爆裂し、生成した物を吹っ飛ばす。
同時に私のところへ瞬足移動。ぎりぎり大盾で受ける。
「シェルター&核爆弾!」
シェルターで地下に避難し、核爆撃を落とす。
「炎食唄」
爆弾ごと炎で飲み込まれた。なんでもありかよ。
「赤無芸」
シェルターが掘り返される。同時に結界が消滅。シェルターも消える。
あ、終わった。
「陽炎流、甲ノ技、天割」
◆◇◆◇
「いや~思ってた3倍は強かった。ライくんに負けた腹いせにボコボコにしようとしたけど、危うく返り討ちに合うとこだったよ♪」
「そんな理由でやったんですか?」
「まあホムラはこういうやつだから気をつけろよ。」
「はあ。」
そういえば団長はなんでこんなとこにいるんだ?
「お前を見に来たんだよ。ホムラと相性良さそうだったし、今日は予定無くて暇だったから。」
心読まれた!?
「まあ考えてることはだいたい分かるぞ。脳の電気信号を読めば。」
「ライくん、それキモいからあんまやんないほうがいいよ。」
「キモっ!?キモい?キモいかな?」
「じゃ、終わったし、訓練開始〜♪」
「「「もう午前のメニュー終わったんですけど。」」」
「え、私やってないんですけど。」
「じゃあ二人でしよっか♪ライくんも訓練しなよ~サボってないで。」
「キモい……キモい?………え?いやサボってるわけじゃ………」