18話 炎と雷
「隊長新人入るたびにそれやりますよね。」
「どうせならかっこよく登場したいじゃん♪」
そう言ってドヤ顔。かっわいい。超超美少女。アイドル以上。
この人がー紅蓮ーのホムラ?イメージ違いすぎる。
「私はホムラ。属性は〈炎〉。よろしくね。」
笑顔が眩しいっ。焼けるっ。
「いくら美少女でも、私に惚れちゃ駄目だよ♪」
手には指輪。既婚者!?こんなに若いのに……あ、不老魔法。
「けど君かわいいね♪女の子でも浮気になるかな?」
なんか、やばいな。言ってることはやばいのに、全て許されてしまう顔の良さ。
分かったこの人無敵だ。顔面無双。顔面偏差値カンストだわ。
「なるぞ。」
「あ、ライくん♪来てたの?」
全く気づかなかったがいつの間にか横に男性。うわ。やばいほどイケメン。金髪金目の青いコートを身にまとった騎士。隊服が違うから紅蓮隊じゃない。この隊服はたしか…雷鳴隊だ。ん?ライくん?
「ちゅっ♪」
いきなりその男性にキス。男性は少し赤くなって離れる。
「おい、人前だぞ。」
「じゃあ人前じゃなきゃ良いんだね?」
「いやそうじゃなくて…」
うん。私は何を見せられているんだ。正直イケメンと美少女がいちゃついているとか最高に尊いが……
ちらっと先輩方を見てみるとやれやれまたかというような、どこか既視感のある目で呆れていた。
なんだろこの既視感。ああ分かった。父上と母上が城抜け出してデート行った時の部下たちの顔だ。
「あの………」
「ああ。俺はライト。魔法騎士団長だ。相手が女でも浮気は駄目。」
やっぱり世界最強のー厳鎚ーのライトだった。薄々感づいててたけどマジか。
唯一父上に勝てる男にして世界樹の大試練の唯二人の覇者の一人。
ちなみにこの前言った母上に脳筋戦法で勝ったのも彼だ。
そしてー紅蓮ーのホムラは陽炎流の使い手にして父上を除いて騎士団No3の実力。
その剣撃は事実上斬れぬ物無しと言われる。
膨大な魔力に精密な魔力操作、それに合わさった剣撃。さながら炎の中を舞う精霊の様だという。
「ねえねえライくん♪一回ヤらない?」
「まあそれぐらいいいが……」
え、ヤるって何を?まさか…いやいや流石にこれから訓練の時間なのにそんな……
◆◇◆◇
まあ、そんな気はしてた。
《疑似世界起動。フィールド:模倣世界。》
模倣世界はこの【深緑】の世界を生物以外完全再現した世界だ。
無人の王都や何もいない海などが広がっていて少々不気味である。
広さは文字通り世界の広さなので無限。地形や仕掛けを駆使するのが普通の戦い方である。
隊長二人の実践訓練。観戦しよ。
◆◇◆◇
―――3 2 1 START
「転送位置はここか。平原。ライくんは………あっちだな。陽炎流、癸ノ技、炎螺旋刃。」
5キロの距離を炎の斬撃が駆け抜け、ライトに迫る。
「《雷針》」
俊足移動。一瞬で躱し、刹那も経たず、その剣はホムラの髪を少し斬る。
「流石に速い。」
「躱せるホムラも結構異常だよ。」
「陽炎流、庚ノ技、無形揺炎。」
流れるような揺らめく剣撃。これを剣で受けたら剣が斬られる。
ライトは躱した。33連撃全てを至近距離で。おまけに反撃。
「エクス、千剣」
「了解しました。」
「神位魔法《万雷》」
大量の剣の雨。その全てが強力な雷を纏う。
さながら雷が如く、高速で強力に、広範囲にランダムに絶え間なく落ちる。
ホムラは雷の間を縫ってライトと剣を交える。
ライトも雷の雨を制御しつつ並列で剣を撃ち合いながら魔法も交える。
「陽炎流、乙ノ技、森炎」
現れたのは炎の木(超大量)。平原を赤い森林に変える。
炎の木々の合間から召喚された無数の炎龍、炎狐、炎猪、炎鹿、炎熊etc…それらが一斉にライトに襲いかかる。
「エクス、開放」
「OKマスター。待ってました。」
突如剣が黒く輝く。
「古代兵器 A‐001 俗称エクスカリバー 完全起動します。神の加護を申請。承諾。創造神の加護LV8を臨時獲得。E=mc2の変換率98%。足場を一部犠牲にして魔力を超強化します。」
剣がうねり、炎の魔物を殲滅。
「《天蒼雷》」
青い雷が轟き、超広範囲に無差別放電。
ホムラの炎の色は赤から白になり、雷を斬る。
「雷って斬れるものだっけ。」
「斬れちゃった。」
「そうか、斬れちゃったのなら仕方ない。」
「陽炎流、丙ノ技、輪環斬炎・白」
ホムラを中心に同心円状に広がる剣撃。それが角度を変えて幾重にも重なる。
エクスカリバーが黒い槍になり棒高跳びが如く空中に舞い上がる。
「《一つ、落雷》」
超高速で上空から雷を纏った突き。落下速も合わさって岩盤が割れる。
ホムラはそれを剣で受け止め、気合いで跳ね返す。
刹那、体勢を崩したライト。
「陽炎流、甲ノ技、天割!!」
使用者の魔力量に比例して威力が上がる剣撃、天割。ホムラの魔力量は人類世界一を誇る。
その剣撃は山を割き、地を割り、更には天空、大気すら斬り昼間に刹那、宇宙が見える馬鹿げた一撃。
絶対必殺の一撃である。
「でも、当たらなければ意味はない。」
剣撃はライト――ライトの形に変形、着色されたエクスカリバーの分体を真っ二つに斬る。
次の瞬間、ホムラの頸椎が後ろから砕かれた。