森の中の村にて
ウィンディア王国の南西に広がる森の中には獣人族やエルフ族、鳥人族といった亜人種が村を作って暮らしていた。
そのたくさんの村の中、一つだけ村人が皆殺しにされ凄惨な状況になっている村があった。
そして、村人の屍肉をあらゆる種のモンスターが咀嚼していた。
短めのソフトモヒカンに顬から3本のラインのある男が白い狼を撫で回す。
「見てこのガサガサのけ・な・み♪すんごいチクチクしてて痛気持ちいいわぁ〜。」
「気持ち悪いぞカイロス。」
カイロスと呼ばれたこの男こそ、ウィンディア王国にモンスターを襲撃に向かわせた張本人である。
「ホントホント!ヨダレダラッダラ零れまくってんじゃん!」
「アンタ達は分かってないねぇ〜。この野獣さがいいんじゃない?」
カイロスとやり取りしていた女のほうは年の頃は20代半ば。フードのあるコートを羽織っており、紫色の長い髪に妖艶な顔つきである。
もう片方は男でこちらは20歳前後の若い男であった。短めのウルフカットで攻撃性のある目付きをしている。
「第2陣の準備はできているのか?」
そこへやってきたのは長身の男。長い銀髪を後ろで束ね、抑揚のない顔つきをしている。
彼らは森の中にあった獣人族の村を全滅させ、そこを根城にしているようだ。
全員胸元には教会の聖印のネックレスをかけていた。
「スタインはせっかちねぇ。こっちの準備はいつでも大丈夫よ。それにしてもあの子たち、ちゃあんとご飯食べたのかしら?」
「準備ができているならいい。こんな所で何日も暮らしたくはない。」
「ホントホント!いくら飼い慣らしてるとはいえモンスターに囲まれて寝泊まりなんて気が気じゃねぇ!」
「今度は私らも同行、だったわよね?」
「あぁ。2日後の朝に仕掛ける。」
「はぁー!やっとここともおサラバ!このストレスは薄汚い獣共で発散発散!」
「この子たちもちょうどお腹が空いてるようだからねぇ〜。」
「分かってると思うが、国王は殺すなよ?」
「国王って確か象のやつだっけ?」
「そうだ。特にカイロス。モンスター共もその点は大丈夫なんだろうな?」
「大丈夫よ〜。この子たち、ちゃあんと私が手なずけてあるから。」
「それにしてもこんな獣共とやるためにわざわざズーグ様まで来る必要あったのかな?めちゃんこ弱っちい連中しかいないじゃん?」
「それでも数だけは多いわね。」
「ま、その方がこの子たちのご飯になるけどねぇ。」
「悪趣味よカイロス。あんまり私たちの目の前で食わせないでよ?」
「ホントホント!グロすぎ!!」
「あら〜?そんな言い方は無いじゃな〜い?ワイルドって言って欲しいわ〜?ワ・イ・ル・ド♪」
「……そういやズーグ様は?」
「明日には合流だ。」
「はぁん。それで2日後に仕掛けるわけか。」
「マイナもスヴェンも準備を怠るなよ。」
「了解よ。」
「うぃーっす!」