行商人との再会
ノックスたちが自作の椅子で紅茶を飲みつつ待っていた頃、門前にとある一団がやってきた。
「おんや〜?ノックスさんじゃないですかぁ?こんなとこで優雅に紅茶とは面白いことしますなぁ!」
聞いたことのある方言と声に目をやると、白いスーツに身を纏った者がいた。
「オーウェン殿か。久しぶりだな。」
「久々ですなぁ…って2週間かそこらぶりじゃないですか!
……って、思わずノリツッコミしてまいましたわ。
それにしてもこないなとこで何で紅茶飲んどるんです?」
「入国を断られたんでな。この猫のための牛乳を買って来てもらっていて待ってるんだ。」
「そういう事でしたか。もうちょいワイが早よ着いとったら、格安で受けましたのに。大分とぼったくられたんとちゃいます?」
「5000ダリルだ。」
「えぇー!!ご、5000!?」
「それも1ガロン5000ダリルだ。」
ノエルが間に入って補足した。
「1ガロンで5000!!?そらぼったくりすぎですわ!!ちょっとワイ、文句言うて来ます!!」
「オーウェン殿。別に構わない。気持ちだけ有難く頂戴する。」
「…そうなんですか?ただ商売人のワイからすれば腹立たしいことこの上ないですけどねぇ…」
「それより、オーウェン殿も紅茶は?この前オススメしてもらった紅茶を煎れてある。」
「おぉ!!それはええですなぁ!!」
オーウェン用の椅子を土魔術で作成し、オーウェンもお茶会に参加した。
「いや〜、こないなとこで飲む紅茶もなかなか乙なものですなぁ…!」
「オーウェン殿に教えてもらったこの紅茶も香りが素晴らしい…大自然の中で飲むとより豊かに感じられる。」
「えぇえぇ、分かりますわあ。それに…」
ノックスとオーウェンが談笑していると、やがてそこへ先の鳥人族が戻ってきた。
「ほら、買ってきてやったぞ。」
鳥人族の女は牛乳瓶を投げてきたのをノックスは片手で受け止めた。
「1ガロンも無いが?」
「今はそれしかないんだと。はぁ〜疲れた疲れた。」
「ちょっと待ちぃや!!あんた、5000ダリルなんて法外な金受け取っておいてこれは無いんちゃいます!!?」
「あん?さっきも言っただろ?今はそれだけしかないってさ。」
「それやったら金返しぃや!!この程度の量やと5ダリルもかかっとらんやろ!!」
「なんで〜?アタシは言われた通りわざわざお使いに行ってやったんだよ?それに証拠だって無いじゃん?根拠の無い決めつけはやめてくんない?ひひひひっ!」
「…この!言わせておけば…!!」
「オーウェン殿、落ち着いて。俺は構わない。」
「…せやかてノックスさん…!」
「それに、そこの椅子に座っていたほうがいいかと。」
「ノックス様。」
「あぁ。」
「南西から来てるッスね。」
「ん?何の話です?」
「モンスターの群れだ。」
「この気配だと…多分ホワイトウルフッスかね?」
「え…?ここにホワイトウルフが来とるんですか?」
「そのようだな。数は20ほどか。」
「ノックス様、どうします?我らが出ましょうか?」
「その義理はない。」
「はっ。」
「了解ッス。ま、ホワイトウルフならどうとでもなるっしょ。」
「土埃で紅茶を濁されたくないからな。オーウェン殿、そこの馬車も近くへ。魔障壁を張る。」
「そない悠長な…!ホワイトウルフですよ!?」
「この前のグレートアンツに比べれば余裕ッスよ。」
「グ、グレートアンツ!?……って、国境付近に大量の残骸がありましたが…まさか…?」
「あぁ。念の為に焼いておいた。」
「マザーアントも来たッスもんね。アレはチョーヤバかったッス…」
「…確かに大量のグレートアンツの死骸を燃やした跡がありましたけど…あれノックスさんらがやったんですか…ははは…」
「どうやらホワイトウルフたちが見えてきたッスよ。門番たち今さら気づいて慌ててるッスね。」
「それにしてもモンスターの大群によく遭遇するな。俺はロンメアしか知らんが、大概そういうものなのか?」
「いえ、たまたまかもしれませんが…ここまで高頻度に群れに襲われることはあまり無いですね。」
「なんか門番の連中、大慌てッスけど。そんな慌てるほどの相手でも無いのに。」
「それだけ我らが強くなったという事だろう。」
「ま、お手並み拝見ッスね。」