アインv.sグレートアンツ
今度はアインがグレートアンツを相手取る。
アインは火魔術をグレートアンツに向けて放ったが、やはり外殻を突破できずに平然としている。
5体のグレートアンツのうち2体がアインの元へと攻撃を仕掛けようと迫り来る。
アインは魔力を集中させた。
「避ける気が無いんなら、覚悟するッスよ!!」
アインは両手を左右に突き出し、やがて手のひらから氷魔術で細く鋭い氷柱を発生させた。
それを迫り来る2体のグレートアンツに向けて高速で射出した。
迫り来るスピードと射出したスピードが重なり、氷柱はグレートアンツ2体の頭部に命中した。
細く鋭い氷柱は硬い外殻を突き破り、グレートアンツの頭部を刺し貫いていた。
だが致命傷には至らず、氷柱が刺さってもなおグレートアンツは生きていた。
「そんなのは折り込み済ッスよ!!」
アインは魔力を高め、射抜いた氷柱へと注ぐ。
「凍てつけぇぇ!!」
氷柱を通してグレートアンツ2体は体の内部から氷魔術により芯まで凍りつき、一瞬のうちに絶命した。
安心したのも束の間、マザーの近くに残っていたグレートアンツ3体がアインに近寄る。
倒した2体と同様に氷柱で攻撃したが、今度は3体とも躱した。
「くそっ!虫のくせに学習したんッスね!!」
グレートアンツは警戒しつつもアインに迫り来る。
迫り来るグレートアンツを見やりつつ、思考を巡らせる。
奴らの硬い外殻を突き破りさえすれば有効なダメージを与えられるが、今やそれが容易ではない。
氷柱をいくつも射出させたとしても、先のように貫けはしないだろう。
アインはノックスに教わったことを思い出す。
『魔法は使い所』
『相手を自分の有利な場所へと誘い込む』
アインはハッと戦術を思いつき、グレートアンツを見やりながら口元をニヤリとさせた。
アインは両手を大地に翳し、魔力を注いだ。
かなりの量の魔力を注いだことにより軽く目眩を催す。
グレートアンツたちは警戒していたが、結局何も起こることはなかった。
その後、アインは何を思ったのか走り出した。
「こっちッスよー!!」
3体のグレートアンツはアインの意味不明な行動に警戒していたが、やがて走り回るアインの元へと猛スピードで駆け寄った。
駆け寄ってくるグレートアンツに小さい火魔術を打ち込む。
本来なら避ける必要も無いほどの火魔術にも関わらず、グレートアンツは直撃を避けていた。
それほどまでに、先の氷柱の魔術を警戒しての事だろう。
アインから繰り出される火魔術を躱しながらも距離を詰めてきたグレートアンツ。
「うわぁぁぁ!!」
が、ここでアインが転倒した。
チャンスと見るや否や、グレートアンツが一斉に猛スピードでアインに迫り、強力な顎で噛み砕きに掛かった。
「なぁんちゃって。」
アインの周囲を取り囲むように来ていたグレートアンツは、突如として隆起した大地により空中に投げ出された。
先程アインが大地に魔力を注いでいたのはこの地魔術のためであったのだ。
「空中なら避けようが無いッスよね!!食らえぇぇぇ!!!!」
アインは3本の氷柱を発現させ、落下してくるグレートアンツ目掛けて射出した。
そして見事に3体のグレートアンツに直撃し、外殻を破って貫いた。
氷柱に貫かれたグレートアンツが落下し、のたうち回る。
「はぁ…!はぁ…!…これが最後ッス……!………凍てつけぇぇぇぇぇ!!!!」
3体に突き刺さっている氷柱にありったけの魔力を注ぐ。
グレートアンツたちはアインを睨みつけるような目でのたうち回っていたが、徐々に動きが緩くなり、やがて芯まで凍りついて絶命した。
「ふむ…面白い戦闘方法だったな。わざと転んでスキを見せるとは。」
ノックスは優雅に紅茶を啜りながらアインとグレートアンツの戦闘を見届けていた。