ノエル&アインv.sグレートアンツ
「モ、モンスター!?」
「戦闘準備だノエル!」
やがて南東の雑木林の方角からドドドドという地鳴りと共にモンスターの集団が現れた。
蟻だ。
それもただの蟻ではなく、体長が5メートルはある巨大な蟻の大群である。
「グレートアンツ!にしても動きが早すぎるッスよ!わさわさしててキモイ!!」
「この地方独特の進化をしたのだろう。準備はいいかアイン!」
「いいも何もいくしか無いッス!てかキモい!!」
ノエルたちを他所に、ノックスは自身の周りに魔障壁を展開させた。
アインがまず牽制に火魔術を大群に向けて放つ。
グレートアンツはそれを感知して一斉に散開したが、数匹は逃げ遅れて火魔術の餌食になった。
その後グレートアンツは巨大な顎をカチカチと鳴らして一斉にノエルたちへと襲いかかった。
ノエルは向かってきたグレートアンツに踏まれないようにするりするりと掻い潜り、剣で首を掻き斬った。
アインは距離を詰められないように火魔術で牽制しつつ、時折雷魔術でグレートアンツを貫いた。
グレートアンツは仲間が殺られたことを意にも介さず、次から次へと襲い掛かる。
何匹かのグレートアンツはノックスを攻撃しようとして群がっていたが、展開されていた魔障壁を食い破れずにいた。
ノエルはそんなグレートアンツを1匹ずつ確実に仕留め、アインもまた雷魔術でもって確実に仕留めていく。
当初50匹以上いたグレートアンツはみるみる数を減らし、すでに残り20匹ほどとなっている。
「…にしても、数が多いな…」
ノエルは額に汗を滲ませ、肩で息をしながら呟いた。
「ふぅ…ふぅ……でも、あとちょっとッスよ…!」
ノエルとアインが今度は自ら攻勢に出た。
アインが左側にいるグレートアンツへ向けて今度は最初から雷魔術を見舞った。
雷魔術は何匹かのグレートアンツごと貫き、即死させる。
ノエルは右へ展開し、5匹程度の集団へ走り寄る。
グレートアンツは接近してきたノエルを顎や脚で攻撃するも、逆にノエルの剣戟により切り刻まれた。
そして勢いそのままに、瞬時に首を切り落として絶命させた。
残ったグレートアンツは敗北を悟ったのか、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「ふぅ……なんとか勝てたようだな。」
「わらわらとキモかったー!!でもやっぱ俺たち強くなってるッスね!」
「2人ともご苦労だった。…が、まだ終わってはいないようだぞ。」
「…!?」
「え!?」
ノエルたちの足元の大地が隆起したかと思うと、グレートアンツとは比べ物にならないほど大きな蟻が現れた。
ノエルもアインも即座に後方へと飛び避けた。
「こ、こいつは…!!」
「マザーアントッスよ!!やばいッス!!」
マザーアントという体長が20メートルはあろうかという巨大な蟻は、5匹のグレートアンツを引き連れて地表へと現れた。
よく見るとマザーアントはグレートアンツに比べて体色が赤みがかっている。
「こんな所にマザーアントとは…巣作りのために遠征か?」
「若干赤みがあるんでもしかするとそうッスね。でなけりゃこんなとこに現れたりしないッスよ!」
「もしくは他のモンスターに巣を追いやられたか……なんにしてもやるしかないな!」
「やっぱそうッスよね……」
「2人とも頑張るんだな。本当に危なくなれば手助けしよう。」
手持ち無沙汰だったノックスは土魔術で椅子と机を作成し、いつの間にか優雅に紅茶を飲みつつ茶菓子を嗜んでいた。
「あーー!!ノックス様ズルいッスー!!」
「アイン!!目の前の敵に集中しろ!!」
ノエルの忠告が入るや、マザーアントは口から酸を吐きかけた。
アインは「ひえっ!!」という声を出しながらすんでの所で避け、酸はアインの足元の雑草にかかった。
すると酸はシュワシュワと音を出しながら雑草や大地を溶かしていった。
「…これかかってたらやべぇッス……」
酸が溶かす光景を目の当たりにしたアインは肝を冷やした。
ノエルがマザーに向かって剣戟を見舞うも、護衛のグレートアンツが間に入って防御した。
護衛のグレートアンツは先程のグレートアンツとは違い、硬い外殻を保有していたため刃が通らない。
アインは魔力を集中させ、雷魔術をマザーに向けて放った。
直撃したと喜んだのも束の間、マザーはアインの魔術を食らっても平然としており、反撃に酸を広範囲に浴びせかけた。
アインは走って躱したが、飛沫が腕に掛かる。
「あづっ…!!」
掛かったのはほんの数滴にも関わらず、アインの腕に激痛が走った。
「アイン!!」
護衛のグレートアンツを相手にしていたノエルが声を上げる。
グレートアンツは攻撃力こそ無いものの、その分を防御力に極振りしているようでお互いに決定打に欠けていた。
ノエルとグレートアンツが戦闘している場所に向かって容赦なくマザーが酸を浴びせた。
寸前でそれに気づいたノエルは後方へ距離を取ったが、護衛のグレートアンツにはまともに酸がかかっていた。
「仲間諸共とは……なに!?」
酸を掛けられたグレートアンツは溶かされることなくピンピンしていた。
どうやらマザーの酸は仲間には無害のようである。
「アイン!!動けるか!?」
「…まだいけるッスよ!!」
アインは不得意ながらも治療魔術を腕に掛け、ノエルからの質問に答える。
ノエルはアインと合流し、策を伝えた。
「護衛のほうはアインに任せる。マザーは俺がやる。」
「…了解ッス。アイツの酸には気をつけるッスよ。」
「当然だ。いくぞ!」