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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第7章 旅立ちに向けて
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ストレンジ夫妻

 ノックス3人は村の中でも一際大きい小麦畑を有している家の前に来ていた。


「…ここが私の実家だ。…が、私の両親は少し特殊でな。父も母も少々変わり者だ。2人の言うことをあまり鵜呑みにしないようにな。」


 ザリーナが家に入る前にノックスたちに注意事項を説明していた時だった。


「ザリーナ!帰ってきたのか!」


 家の庭からザリーナと同じ鋭い目つきの男が現れ声をかけてきた。


「…父さん…庭にいたのか。」


「そんな所で喋っとらんで、中へ入れ入れ!そこの2人はお友達か?てか…え?男…おと…こ……!?」


「違う!そ、そういうのじゃない!!」


「騒々しいわよ!…って、あら!ザリーナ!帰ってきたのね!」


 庭先でのやり取りを聞いていたザリーナの母が家の中から出てきた。


「見ろ母さん!ザリーナが男を連れてきたぞ!」


「あら!あらあらあら!!まあまあ!!いい男じゃない!!」


「母さん!違う!!」


「やだわねぇザリーナ。そんなことなら先に言ってくれればいいのに〜。」


 ザリーナは顔を真っ赤にしていた。


「2人とも、こんな所じゃなくて家にどうぞ上がってくださいな。それにしてもザリーナが男を連れてくるなんて…あらあら。」


「本当になぁ!いやあよく来てくれた!ささっ上がって上がって!」


 ザリーナの両親は有無を言うことも許さず半ば強制的にノックスたち2人を家の中へと招き入れた。



「2人とも勘違いしているが、この2人は単なる客人だ!訳あってウィンディア領へと同行しているだけだ!」


「…どうも、ノックスです。」


「同じく、ノエルと申します。」


「これはどうも、ザリーナの父のモーリス、こっちは妻のイェナです。」


「どうも〜。それでザリーナ。どちらとお付き合いを?」


「違うと言っただろ母さん!!」


「…ザリーナ殿の仰ったように、我々はそういう関係ではございません。」


 話を聞かない両親に、ノックスがザリーナに変わって説明した。




 一頻り説明を聞いていた両親は、少し落ち込んだ様子だった。


「…そうか……てっきりあのザリーナが家に男を連れてきたから……」


「…ごめんなさいねぇ。早とちりしちゃって…」


「2人ともやっと分かってくれたか。」



 場の空気を改めるため、ノックスは自身のマジックバックから瓶を取り出した。


「こちらは我々からの手土産です。是非ともお2人からも感想を聞かせてもらえれば。」


「…これは…?」


 先程と違い意気消沈しているモーリスが瓶を受け取った。


「俺が作ったわけではありませんが、俺の発案で現在作成しているビールです。」


「ビールだと…?それにしても冷たすぎやしないか…?」


「こんなに冷えてちゃ、せっかくのビールの香りが楽しめないわよ?」


「これは冷やして飲むと美味しいビールです。」


 ノックスに促され、2人は半信半疑でコルクを開け、口へと運んだ。


 2人はビールを一口飲むや否や顔を見合わせ、その後ゴクゴクとビールを再度呷る。


「カーーーーッ!!な、なんだこれは!!」


「…まぁ!…これが本当にビールなの…?」


「お気に召して頂いたようで。」


「どこだ!?どこで造っている!?」


「醸造はリンクス村です。ドランという者が責任者で。」


「リンクス村の、ドラン、と。」


「それで、可能であればこちらの小麦を…」


「ノックスさん!うちの小麦でよければ使わせてくれ!これは売れる!!」


「えぇ!こんなに美味しいビールのためならいくらでも!」


 2人はノックスからの提案よりも先に小麦を提供させてくれと持ちかけてくれた。


「ですがそちらにもすでに取引先があるのでは?」


「そんなもん!このビール飲ませりゃあいつらも首を縦に振るしかない!!」


「ああでもあなた!すでに今年の納品については決めちゃってるわよ!」


「キャンセルだ!!返金するぞ!!」


「それだとあなた家計が!!」


「むう!ならば一部だ!5エーカーくらいならなんとかなるか!?」


「だめよ!7エーカーくらいいきましょ!」


「そうか!よし!7エーカー!!どうだ!!」


 2人は同時にノックスを見つめ返答を待ち構えた。


「…いや、どうだ!と言われても専門的な知識は俺には分かりません。その辺りはドランと決めてくれれば、と。」


「そうか!!よし母さん!!今からリンクス村に行ってくる!!」


「そうね!!行ってらっしゃい!!」


「2人ともちょっと落ち着け!!それは今日でなくともよかろう!!」


 即決する2人をザリーナが宥め、落ち着かせた。


 落ち着かせるには少しばかり時間を要したのだが。




「いやー、はっはっはっ!お恥ずかしいところをお見せしてすみませんなぁ!」


「ほんと!もうやだわぁ!」


「…いえ、そこまでお気に召して頂いたなら発案者冥利に尽きます。」


「それにしてもあんなビールがあるとは知りもしませんで、我々もまだまだですなあ。」


「まったく、2人はいつもそうだ。勝手に話を進めて…」


 ザリーナは疲れきっていた。


「それはそうとノックスさん、うちのザリーナを嫁に貰ってはどうかな?」


「「…は?」」


 ノックスとザリーナが声を揃えた。


「それはいいわねぇ!ノックスさんはまだ独身?うちのザリーナは気が強い子だけど色々と気がつく良い子なのよ?」


「ちょっと!2人とも…」


「どうなんだいノックスさん?まだ独身か?」


「え、えぇ…まだ独身ではありますけど…」


「よーし!決まりだ!!母さん!!2人の結婚式をあげよう!!」


「そうね!盛大に祝いましょ!!」


「2人とも…」


「隣村のやつらも呼ぶぞ!!」


「なんだったら国王陛下に取り入って王城で盛大にやりましょ!!」


「…2人とも……」


「そりゃいいな!!母さん!!今から王城に行ってくる!!」


「そうね!!行ってらっしゃい!!」


「2人ともいい加減にしろ!!!!」

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