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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第7章 旅立ちに向けて
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ラガービール

 ノックスたち3名がロンメア王国の門を潜ると、そこにはザリーナが馬車を連れて待機していた。


「ザリーナ殿、どこかへ出掛けるのか?」


「…いや、これはノックス殿たちを国境まで送り届けるため、陛下より遣わされたのだ。」


「わざわざ馬車まで用意していただいたとは、感謝する。」


「さっさと乗るのだな。私も忙しい。」


「そうだな。じゃあ甘えさせてもらおう。」


 ザリーナは素っ気なく振り返り、御者席に乗り込んだ。



 ノックスたちが荷台へと乗り込もうとした時、遠くから走ってくる人影がいた。


「ノックスさーーーーん!!待ってーーー!!」


 ノックスが見やると、ドランが走ってきていた。


「ドランか。」


「はぁ…はぁ……良かったぁ……はぁ…はぁ……間に合ったー!!」


「わざわざ見送りに来てくれたのか?」


「はぁ…はぁ…それも…ありますけど…はぁ…はぁ…あの……ノックスさんに……言われてたやつ…」


 ドランは呼吸を整えながら自身のマジックバックから350mLほどの大きさの瓶を取り出した。


 取り出された瓶はコルクで栓がされており、キンキンに冷えているらしく、外の温度差のせいで冷たい蒸気をもくもくと放っていた。



「これは?」


「ノックスさんが言ってたビール、第1号です!」


「な……な………なんだと………!!つ、ついに…!?」


「まだ試作段階ですけど、なんとかここまで形に出来ました!これをノックスさんに最初に飲んで貰いたくって!」


「いいのか!?」


「もちろんです!!」


 ノックスは目を輝かせつつ瓶を受け取った。


 瓶はキンキンに冷えている。


 徐にコルクをキュポンと開け放つと、ビールの香りと共に瓶の口からも冷たい蒸気が溢れ出た。



「では、いただくぞ…」


 ゴクリと生唾を飲み、そして1口。


 夏場だというのにキンキンに冷えたビールが口いっぱいに広がる。


 炭酸が舌をシュワシュワと刺激し、続いてビールのコクが広がり、その後ホップの苦味がちょうど良いバランスで広がった。


 エールのような甘い華やかな香りは無く、キリッとした飲みごたえであった。


 1口飲んだのも束の間、その後ノックスはゴクゴクとビールを飲み、炭酸が目にしみたのか、もしくは念願のラガービールを飲めたことに感動したのか、目に涙を浮かべていた。


「どうですか!?」


 ドランがビールの出来を確認する。


「どうもこうもない……素晴らしい出来だ……!!ドランの分は?」


「じゃあ、俺もいただきます。あ、良かったら皆さんも!」


 ドランがノエルたちにもビールを振舞った。


 ザリーナは任務のために拒否していたが、お礼にと国王の分を含めて2本受け取らせた。



 そして、皆にビールが行き渡ったところで、改めてビールを呷った。


「…カーーーーッ!!このビール、ヤバいですね!!」


「な、なんだこのビールは…?というより、これはビールなのか…?」


「この暑さにこのビールはめちゃくちゃ美味いッスー!!しかも朝から酒飲めるなんて、こっちに来て良かったーー!!!!」


 皆は初めてのラガービールを堪能していた。



「ドラン、改めて礼を言う。ありがとう。」


「いえいえ!こんなビールがあるだなんて教えて貰った俺の方がありがたいですよ!」


「もしも俺たちの国を作ったらこのビールは是が非でも取引させてもらう。」


「ははっ!そん時はお願いします!お急ぎなところ引き留めちゃってすいませんでした!」


「本当にありがとう。ドラン。他のみんなにも宜しく。」


 ノックスはドランと握手を交し、改めて荷台へと乗り込んだ。


「ノックスさん、他の皆さんも!お気をつけて!!またこの国に来る時までに、このビールをもっと洗練させておきまーす!!」



 ノックスたちが乗る馬車にドランは手を振りながら見送った。



 今日この日がこの異世界にて、世界初のラガービールが日の目を見た瞬間であったとは、誰も想像だにしなかった。




 ノックスは必ずこの国にまた戻ると心に誓った。

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