ザリーナ・ストレンジ
今より25年前、ロンメア領内の外れにあるマンデルという田舎にて小麦農家を営んでいたストレンジ夫妻の元にザリーナは生を受けた。
生まれつき目付きが鋭く、子供の頃にはそれで揶揄われ、また彼女も勝気な性格なせいもあり、喧嘩が絶えずいつも生傷を作って帰ってきていた。
相手が年上であっても1歩も引く事がなかった。
両親はそんな娘であっても自由にさせていた。
娘に興味が無かったというわけではない。
両親もまた娘と同じく勝気な性格であったため、『自分が悪くないならとことん戦え』という教育方針であったためだ。
そんな環境で育ったザリーナだったが、彼女は農具を振るよりも剣を振るほうが得意であった。
彼女には農家としてよりも剣士としての才能を持っていたようで、メキメキと力をつけた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
成人し、16の歳に彼女はロンメア王国の王国騎士選抜試験を受けた。
これにはなんでも自由にさせてくれた両親が反対した。
両親は命の危険もあるような場所に娘を行かせたくなかったのだ。
ザリーナは両親と衝突したのだが、その時に分かったことがあった。
それまでザリーナは、両親は自分に興味が無いのだと思っていたのだが違ったのだということを。
だが、最終的に両親はザリーナの受験を認めた。
そして、
「やるからには1番になってこい!!」
とエールを送ってくれた。
王国騎士試験に女性が来るのも珍しく、田舎の出ということもあり、他の受験者から彼女は舐められていた。
だが彼女はその逆境を押し退け、断トツの成績を修めて試験をパスした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
騎士隊に入隊してからも彼女に対する風当たりは強かった。
だが実力で勝てない連中は直接何かをするわけではなく、陰から陰湿に嫌がらせをしていた。
ザリーナはそんな嫌がらせに目もくれず、訓練に打ち込み、次第に周りが彼女を認め始めた。
そして23歳の時、史上最年少・史上初の女性の統括として認められた。
それでも彼女はそれに驕ることなく、日々研鑽を詰んでいた。
たまに実家に帰郷すると、その度にザリーナはマンデル村の英雄として村人たちから賞賛されていた。
両親も素直にザリーナを褒めた。
だが、歳を重ねたころには両親もザリーナの婚期を心配するようになっていた。
「誰か良い人はいないの?」
「生きている間に孫の顔が見れればなあ」
などと話される度、ザリーナはウンザリしていた。
そもそもザリーナは、自分より弱い男には興味がないのだから。
そしてそんな男になど今日まで出会うこともなかったのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ノックスと手合わせをし、全くもって敵わない強さを目の当たりしたザリーナは、胸が熱くなった。
『世の中にはこれほど強い者がいたのか』という気持ちだけではないことは承知していた。
恋心では無い、と言えば嘘になるかもしれない。
だが恋心よりも尊敬や憧れの気持ちの方が強かった。
ザリーナはこれまで誰かにそういった気持ちを持ち合わせたことがなかった。
部下で同じ女性隊員のアイシャは恋多き女性で、よくザリーナに恋話をしていた。
当時は「くだらん。」と一蹴していたが、今ならアイシャの気持ちがわかる気がしていた。
ノックスから敗れたあの日から、王城で彼に訓練を受けていた。
ノックスの実力は実際に経験していたが、やはり段違いの強さであった。
そんなノックスにザリーナは尊敬し、憧れた。
そして、やがて憧れは恋心へと変化した。
今まではあまり気にしなかった身だしなみを知らず知らずに鏡で整えることが多くなった。
アイシャはそんなザリーナの変化をすぐさま感知し、「統括、最近キレイになりましたね!」と褒めてきた。
昔であれば「くだらぬことをほざいていないで稽古に打ち込め。」と一蹴していたのだが、今はそんな言葉に少し顔が緩んでいた。
だが同時に自己嫌悪していた。
(……私は弱い女だ。)
(……弱い私は………嫌いだ。)
ザリーナは部屋に置いてあった鏡を自らの拳で叩き割った。
ザリーナはノックスに敗れたあの日から、生まれて初めての恋心を持つと共に、生まれて初めての挫折を味わっていたのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━
【名前】ザリーナ・ストレンジ
【種族】人族
【年齢】25
【性別】女
【レベル】355
【HP】64078/64078
【MP】42774/42774
【力】3321
【すばやさ】3260
【スタミナ】3883
【魔力】3075
【スキル】衝撃耐性6 斬撃耐性7 剣術9 槍術4 灼熱耐性2 極寒耐性2 雷撃耐性2 気配感知5 威圧5
━━━━━━━━━━━━━━━