ノックスv.sザリーナ
ザリーナは観覧席から飛び降り、闘技場へと足を運んだ。
「待たせたな。」
「もういいのか?」
「あぁ。貴殿こそ、その装備で良いのか?」
「あぁ。これが一番動きやすい。」
「しつこいようだが、手加減など無用。」
「分かっている。」
ノックスとザリーナに緊張が走る。
衛兵たちも両者から感じる緊張感に固唾を飲んで見守っていた。
「両者共に、準備はよいか?」
国王の声に反応し、ザリーナは剣を、ノックスは刀を抜いて構えた。
「それでは、始め!!」
国王から開始の合図がなされたものの、両者はジリジリと相手の出方を待つ。
ザリーナは心の内で魔法を詠唱し、やがてそれを己の剣に纏わせた。
さらにザリーナは自身にも力強化やすばやさ強化の付与魔法を発動させ、自身の能力を格段に上げた。
ノックスはそれをただ静かに見守っていた。
「わざわざ待っているとは、余裕なのだな。では、こちらから参る!!」
ザリーナは地を蹴り、ノックスへと距離を詰めて剣戟を見舞う。
ノックスは後ろに飛び退いて躱したが、剣に纏われていた魔法が遅れて顕現した。
剣に纏われていた火の魔術がゴォォッ!と舞い上がり、ノックスを焼き付くそうかと襲いかかる。
ノックスは氷魔法を発動させ壁を作り、火の魔術から身を守った。
その後ザリーナは瞬時に氷の壁ごとノックスを両断せしめるべく横一文字に剣戟を見舞う。
ザリーナの剣戟により氷の壁は両断されたが、すでにノックスは空中へと身を投げ出していた。
そして勢いそのままに、ザリーナに向けて刀を振り落とす。
ギィィイイイイイン!!!!
ザリーナはノックスからの攻撃を剣で受け止め、互いの刃から火花が飛び散る。
鍔迫り合いとなったが、ザリーナが纏わせていた火魔術が現れ、そのままノックスに襲いかかった。
火魔術がノックスを包み込んだのを確認したザリーナは後ろへ飛び退き、さらに自身の剣に今度は風魔法を纏わせて斬撃を飛ばした。
だがノックスは自分を中心に風魔法を発動させ、纏わりついていた火と共に斬撃ごとかき消した。
その風圧は衰えることなくザリーナを襲い、剣で受け止めきれずに後ろへと吹き飛ばされた。
すぐさま立ち上がったザリーナはノックスを睨みつける。
先程まで火魔術で包まれていたにも関わらず、ノックスは平然と立っていた。
「…ちぃっ!!」
自分の放った攻撃にノーダメージのノックスに舌打ちをしつつ、ザリーナは今度は剣に雷魔術を纏わせ、ノックスへと斬り掛かった。
この攻撃であれば、躱したり受け止めたりしたとて、雷により痺れさせ、筋肉を硬直させる。
あとはその隙を狙って両断する。
ザリーナの最も得意とする戦法であった。
自身の魔力をさらに雷魔術へと注ぎ、すでに剣からは雷が漏れ出ていた。
そしてザリーナはノックスへと駆け出したが、途中で急遽剣を闘技場へと突き刺した。
纏われていた雷魔術が闘技場を伝い、一瞬のうちにノックスの元へと襲いかかる。
寸前でノックスは空中へと飛び避けたが、ザリーナとてそれは折り込み済みであり、すでにノックスの元へと自身も空中へと身を投げ出し、剣戟を見舞う。
「喰らえ!!」
ノックスは自身の刀でザリーナの剣戟を受け止めたが、刀を伝って雷魔術がノックスを襲い、痺れさせ、ノックスはそのまま闘技場へと落下した。
「終わりだ!!」
即座にザリーナが空中からノックスに襲いかかる。
だが、ザリーナの剣はノックスに届くことはなく、逆にノックスから振るわれた刀により、鎧諸共ザリーナの腹を斬り裂いた。
ノックスは空中から迫り来るザリーナの剣を躱し、超高速で移動しつつザリーナの腹を斬っていたのだ。
斬り裂かれた腹から鮮血が滴り、ザリーナは口から血を滲ませつつ片膝を付いた。