ロンメア王城
ロンメア王国には数多くの種族が様々な職に就いている。
商店街や住宅街を歩けばそれぞれの種族が特性を活かし、鍛冶や飲食店、酒場、風俗に至るまで多種多様な種族が経営したり雇われている。
それはこの王城も同じである。
城門には巨人族と呼ばれる3mはあろうかという種族が護衛している。
城は堀で囲まれており、跳ね橋で行き来する形である。
ノックスは現在この城門前へと来ていた。
というのも、昨日衛兵がスラムにやってきてノックスを城へ来るようにと言伝を受けたのである。
ノックスが近寄ると巨人族の衛兵が強面で睨んできた。
「…何用だ?」
「昨日国王陛下より城へと来るように言われている。」
「国王陛下から……ふむ…」
巨人族はもう1人の巨人族と共に小声でボソボソと相談した。
しばらく待っていると
「…名は?」
と聞いてきた。
「ノックスだ。」
「…ふむ……ノックス……いいだろう。通れ。」
名を確認した巨人族が右手を上げて跳ね橋を下ろさせた。
下りた跳ね橋を渡り、城内へと足を運んだ。
城内に入ったノックスだったが、詰所のような場所にてギルドカードを提出した。
獣族の衛兵がすぐさま伝令に走り、ノックスはしばらく待機することに。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
しばらく待っていると、伝令の獣族の者と共にロマンスグレーの髪に口ひげを綺麗に整えてある老齢の男が現れた。
「貴殿がノックス殿ですか。昨日の今日というのに早速お越しいただきありがとうございます。
私はロンメア王国秘書官のフランクと申します。以後お見知り置きを。」
「どうも、ノックスだ、です。」
「ほっほっ。では、早速参りましょうかの。」
フランクに案内され城内へと入る。
城内は大理石が施されており、柱にも見事に装飾が施されている。
壁にも国旗が垂れかかって、窓からはステンドグラスから様々な色の光が差し込む。
前世では日本の城しか入ったことの無いノックスはその荘厳な造りに思わず息を飲んだ。
「…見事だな……」
「ほっほっ。お気に召して頂いて何よりです。この城は築城からおよそ300年ほど経ちますかな。所々修繕したりなどはありますが、お陰様で今も尚、その荘厳さは健在でございます。」
「300年……かなり歴史があるお城なのだ…、ですね。」
「えぇ。それと、既にご存知かと思いますが、今の当主、アルフレッド様は7代目にございます。この国が初代の時から掲げておりました『全ての種族に人権を』という理念は、今も当主様に受け継がれておいでです。」
「素晴らしい理念だ…ですね。おかげで我らの同族も救われています。」
「そう仰っていただけて光栄ですな。こちらが玉座になります。では少々こちらでお待ちください。」
フランクは一際立派な門の前でノックスに待ってもらうよう依頼した。
(ここから国王との謁見…か。地龍のことは伏せておくとして、あとは例の件の話を付けておくこと、だったな。)
ノックスは王城に来る前にローシュたちと相談していた。
国王と謁見するにあたり、こちらの要望などをまとめるためだ。
1つは、今回の迎撃にあたり、ノックスの事を秘匿してほしいこと。
これは言うまでもなく、ルナの安全のためである。
2つ目は、自分たちの拠点は国外で作るが、それまでの間、非戦闘員の魔族を今まで通り住まわせてほしいこと。
今回の件でより魔族に対する風当たりが強くなるだろう。
3つ目はウィンディア王国への入国許可書を作成してほしいこと。
拠点にする予定のアステル島のある場所へ行くには東のウィンディア王国への入国が必要になる。
入国に際してはノエルたちと同行するため、ウィンディア王国へ立ち入る際の許可がほしい。
最後、4つ目はロンメア王国内の図書の閲覧を許可してほしいこと。
こちらは無理にとは言わないが、情報収集する上で王国が保管する図書であればかなりの情報を得られるであろう。
これらの要望を受けてくれるのであれば、こちらもロンメア王国のために尽力する。
ノックスはそれらの要望を改めて整理していた。
やがて扉が開き
「ノックス殿。どうぞお入りください。」
とフランクが招き入れた。