悪の胎動
「襲撃は失敗…か。向こうもなかなかやるじゃん。」
「まさか、あんな強いやつがいるなんて想定外ね。」
「ホントそれ。てかあいつ、あれでもかなり手加減してんじゃね?」
「確かにそう感じるわね。見た目とは裏腹にかなり経験を積んでるみたい。」
「…はぁぁぁ。あんなのいるとか聞いてねんだけど?しかも魔族1匹も殺せてねぇじゃん。せっかく大虐殺を見れたかもしれねぇのに。」
「…そういえばあの男、ノース様を探していたわよね。」
「そういやそんな話してたな。報告する?」
「別にどうだっていいわ。ノース様に何の義理もないし。」
「お前はその辺薄情というかなんというか…」
「何?嫌味のつもり?」
「そうじゃねぇけどさ。ま、俺もノース様って苦手なんだよなぁ。パワハラ上司丸出しじゃん?色んな功績を評価されて使徒入りだからか、結果しか見ないっつう感じ。」
「ま、あたしらは直属の部下じゃないだけマシよ。あんたも文句があるならたくさん戦果あげればいいだけ。」
「…やだね。好き放題やらせてもらえるし、あんな面倒臭い奴に意見とかしたら何されるか分かったもんじゃねぇし。」
「それは言えてる。…んで、これからどうするつもり?」
「うーん。多分これからロンメアは守り固めるよな?だから無理に入国とかできなくね?」
「てことは様子見?」
「あいつらをロンメア国外におびき出せればいいんだけど……でもあのノックスとかいうやつ強すぎんだよな。チートすぎ。」
「弱味でもあれば、だけどねぇ。でもあのイケメンはかなりあたし好みだわ。」
「…アイツとお前とじゃ何歳離れてると思ってんだ?」
「うっさい!恋愛に年の差なんて関係ないし!それにまだ20代だし!!」
「……もうじき30代じゃん……」
「…なんか言った?」
「い、いや、なんでも!!」
「……ともかく!ようやっとあたしらもこうやって外を自由に歩けるようになったんだし、デュバル様の足を引っ張んないようにしないと。」
「お前の固有魔法でなんとかならね?」
「…うーん。他は大丈夫だけど、あのノックスって奴には無理そう。」
「俺のだとそれこそ戦争になっちまうかんなぁ。」
「あんたは威力に極振りしすぎ。ま、それで狼狽える奴らを眺めるのも楽しいかもしんないけど。」
「威力こそロマンじゃん?」
「はいはい。…で、どうする?」
「どの道今は警戒してるし、とりあえず帰ってリョウヤ達と合流して作戦の練り直しかな。」
「それが妥当ね。」
「…せっかく異世界に来たってのに長いこと監禁されちまってたからなぁ。こんなとこで捕まったり死んじまっちゃあおもしろくねぇ。」
「…ふふ…ホントそれ。魔族とか正直どうでもいいけど、この世界は日本ほど法が整ってないから、その分楽しまなくっちゃ。」
「…おっと、その前に。ガノフだっけ?始末しとかねぇと。」
「ガルブ、よ。『ガ』しか合ってないじゃん。テキトーすぎ。」
「そうだガルブだ。ほな、さいなら。」