ノエルv.s襲撃者
「失礼します!何者かがこのスラムにやってきて、我々魔族を探しているとの連絡がありました!」
急いで駆けつけてきたのだろう、その連絡をくれた仲間は肩で息をしながら報告しに部屋へと入ってきた。
様子から察するに、自分たちをよく思わない連中が来たと言うことは明白であった。
「…我らを探しに…か。相手の勢力などは?」
「…分かりません…ただ、複数の報告がありました。おそらくは手分けして我らを探している、と。」
「…なるほどな。では我らでその輩を見てこよう。ノエルとナタリアとアインはワシと共に来い。モズとリドルは万が一奴らがここに来た時のために待機していてくれ。」
「「「「「了解!!」」」」」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その一団はノエルの感知スキルでもってすぐさま見つかった。
この者たちは自身の気配を断つこともなく、むしろ直ぐにそれと分かるかのようにあからさまに魔族を探していた。
ローシュたち3人は遠くからその一団を観察する。
「おい貴様ら!!魔族はどこにいる!!」
「あぁ?知らねーよ、んなもん。金くれれば思い出すかもしれねぇなぁ?なあお前ら?」
「へっへっへっ…そうだなぁ。」
その一団に取り合うわけもないゴロツキ共が挑発していた。
するとその一団のリーダーと思しき者が剣を抜きゴロツキに向かって躊躇いもなく斬りつけた。
「…痛ぇっ!!てめぇ、なにしやがる!!」
「魔族に加担する者共には死あるのみだ。」
男がそう言うと別の男が魔術を行使し、1人のゴロツキに火魔術を浴びせた。
「ぎゃぁぁぁぁあああああ!!!!」
「て、てめぇ!!!!」
「次は貴様の番だ。」
「ま、待て!!魔族とか知らねぇよ!!このスラムにいるらしいが場所は知らねぇ!!」
「これは見せしめだ。魔族を擁護するなど、世界の破滅に加担している!!死ね!!!!」
「や、やめろぉ!!!!」
男は無慈悲にも無抵抗のゴロツキの首を斬り落としにかかった。
が、刃はすんでの所でローシュにより受け止められていた。
「貴様らは…魔族…!!」
「お前ら、さっさと逃げろ。」
後から来たノエルがゴロツキに逃げるよう諭した。
「ひ、ひぃぃ!!!!」
我に返ったゴロツキ共は蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げていった。
「ゴロツキとはいえ無抵抗な者を殺そうとするとは……この外道共が…」
「ふん!貴様ら魔族に加担した罪だ。おい、招集だ!」
そう促され、上空へ向けて火魔術を行使し、やがて空中で弾ける。
「貴様らも終わりだ!ノコノコとあんなゴロツキを助けるために出張ってくれて手間が省けた。」
「教会の意向かは知らぬが、ここはロンメア。教会に属していないこの国で問題を起こせばどうなるか分かっておるのか?」
「魔族を擁護する国など滅べばよい。」
「…なるほど……何を言っても聞き入れてはもらえんか。」
「隊長、もういいでしょ?さっさとこいつらぶっ殺してやりましょう。」
「そうだな。やっちまえ!!」
その合図と共に、奴らから火魔術が飛んできた。
ローシュは後ろへ跳躍して躱す。
待ち構えていたアインも同じく奴らに向けて火魔術を行使した。
3人いた襲撃者は散開。リーダーの男をローシュが相手取り、魔術師がアイン、もう1人をノエルが相手取った。
ノエルが相手の槍から繰り出された攻撃に対処する。
まるで反撃の隙を与えないほど無数に刺突を放ってくる。
「ひゃははは!!どうした!!クソ魔族は手も足も出ねぇか!!??」
「………」
「オラオラオラァ!!どうしたぁ!!さっさと俺の槍のサビにでもなりやがれクソ魔族!!!!ひゃーーっはっはっはっ!!!!」
「…品が無いな。さすがは外道。」
冷静に攻撃を捌いていたノエルだったが、攻撃の合間を縫って相手の懐に一瞬で詰め寄り、首を掻き斬った。
「…あ?……」
ノエルの斬撃は相手の頸動脈を正確に捉え、やがて裂けた切り目から鮮血が脈動に合わせて溢れ出た。
そして、ゴボゴボとうがいのような声を上げながら地に崩れ落ち、目に怒りを募らせながらノエルを睨むも、やがて光が失われた。