ノックスv.s狂戦士
狂戦士と化したアガルトとウェイド。
もはやその目には理性を感じさせられなくなっていた。
ただ、一言
『魔族に死を!!』
と繰り返し叫んでいる。
身構えていたドランに向かってアガルトが猛スピードで殴りかかった。
ドランは急速に迫り来るアガルトに対して盾を構え踏ん張る。
だがその破壊力は凄まじく、たった一撃で盾は大きく凹み、ドランごと吹き飛ばした。
ドランは盾ごと腕もへし折られ、衝撃で気絶してしまっている。
「…なに!?」
「い、一撃だと!?」
『げはははははははははは!!!!!魔族に死をぉぉ!!!!』
「フェリス!!早く治療を!!者共!!隊形を立て直せ!!!!」
「「「「「はっ!!!!」」」」」
ホランドがウェイドに向けて弓矢を放つ。
ウェイドは避けることすらしなかったのだが、矢はウェイドの手前で見えない障壁により阻まれた。
「狂戦士と化していても魔法は行使している…いや、予め自身を狂戦士化する際にはさまざまな魔術と連動させていたか…」
ノックスが冷静に分析した。
衛兵たちがアガルトに斬り掛かるも、強靭な肉体に武器が通らない。
体格の良い衛兵が斧で攻撃するも、左腕でガードをしつつ右手から繰り出されたパンチで吹き飛ばされる。
フェリスからの火魔術もアガルトの肉体を少々焦がした程度で怯んですらいない。
ホランドがウェイドに対して弓矢で牽制しつつナバルが攻撃するも、すべて見えない障壁により阻まれた。
アガルトとウェイドから繰り出された攻撃により衛兵たちは為す術なく倒れていく。
「くそっ!」
「俺がやろう。」
「ノックス殿…!……かたじけない……我々では全く太刀打ちできず…」
「構わない。」
ノックスは前に出た。
「お前らは魔族を殺そうとしてこの国に来たようだな。もはや理性が残っているかどうかは知らんが、俺は人族と魔族のハーフだ。
お前たちが殺したがっている魔族ならここにいるぞ。」
他を相手にしていたアガルトとウェイドは、ノックスの『魔族』という言葉に反応し攻撃を止め、ノックスを睨んだ。
『魔族……魔族…………魔族に死をぉぉぉぉ!!!!』
猛スピードで突進して来た2人をヒラリと躱す。
「格の違いを見せてやろう。」
ノックスはゆったりと刀を抜き構える。
アガルトとウェイドは振り返り、即座にまたノックスに向かって猛スピードで迫った。
ノックスはまずアガルトの方に駆け出し、アガルトの攻撃を空中へと躱しつつ両腕に刀を見舞う。
ノックスにより両断された腕が地に落ち、狂戦士と化したアガルトも痛みで咆哮した。
ノックスは着地と同時にすでにウェイドの方へと迫り、振り返ろうとしていたウェイドの腹目掛けて斬り掛かる。
ウェイドが予め施してあった障壁をものともせずに両断した。
アガルトは痛みで呻きつつも、今度は自身の歯で噛み付こうとノックスに向かう。
「弾けろ。」
ノックスの左手から放たれた火魔術が閃光を発し、アガルトは両目の視覚を奪われた。
そしてゆったりと刀を振り上げ、視覚を奪われもがいているアガルトに袈裟斬りを見舞った。
上半身だけになったウェイドはそれでもなおノックスを殺そうと腸を引きずりながら近寄る。
「轟け。」
と唱えるとノックスの左手から雷魔法が放たれ、バリバリバリッ!という轟音と共に雷がウェイドを貫いた。
ピクピクと辛うじて生きていたウェイドとアガルト。
やがて彼らの目から永遠に光が閉ざされた。