尋問
「知っていたとてあなたに教える義理などありませんよ…」
「教えられないというなら…仕方ないな」
ノックスはアガルトたちを見下しつつ、右手に魔力を込めて火魔術を顕現させた。
「ノ、ノックス殿!捕虜に拷問は…」
ナバルの制止を左手で遮る。
徐々にノックスの火魔術が温度を上げる。
その影響により室内温度がかなり上昇し、景色が陽炎の如くゆらめく。
ナバルや捕虜2名は汗だくになっているが、ノックスは涼しい顔をして捕虜を見下していた。
「こいつを味わってみるか?」
「ひ、ひぃぃ!!や、やめろ!!」
「お前が答えないなら魔術師の奴に聞くまでだが。」
「ま、まってくれ!!ノース様だな!?知っている!」
ノックスに睨まれた魔術師が音を上げた。
「何を知っているんだ?」
「ノース様は勇者だ!サントアルバ教会の12使徒のお方だ!!それ以外は知らない!!」
「……もう1つ。『ルナ』という名の少女は知っているか?」
「ル、ルナ?…は聞いた事はない…」
ノックスはより一層殺気立って睨みつけ、火力を上げた。
「嘘ではないな?」
「ほ、本当だ!!」
「ノックス殿、もうよろしいでしょう。」
ナバルが後ろからノックスの肩を押さえて話しかけた。
「……あぁ。ナバル殿、すまない。」
「いえ…それではこの者たちを王城へと連行します。」
「…ふふふふふ…」
「何がおかしい?」
「いえ、あなた方は勘違いしているようで。我々の本当の目的を、ねぇ…」
「どういう意味だ。」
「まさか我々が捕まるとは想定外ですが…こうなった以上しかたありませんねぇ……ウェイド…」
アガルトがそう言い、ウェイドと呼ばれた魔術師を見やる。
ウェイドは半ば諦めたような顔を一瞬覗かせた後、やがて厭らしい笑みを受けべた。
その意味を理解してはいないもののすぐさま危険と判断したナバル。
「まずい、取り押さえろ!!」
ウェイドは押さえつけられるまでの一瞬のうちに
「解放」
と唱えた。
その瞬間、アガルトとウェイドの2人の胸が妖しく光り、凄まじい衝撃波により部屋を破壊した。
部屋が崩れ落ちる寸前でナバルはノックスに抱えられ脱出していた。
「こほっ…こほっ……た、隊長、一体なにが…?」
土煙が上がる中、ホランドが状況を確認する。
突然の事で一瞬放心していたナバルだったが、すぐさま立ち上がり、
「皆の者!!戦闘隊形!!」
と怒鳴りつけるような大声で命令した。
ナバルの檄で衛兵たちが崩れた部屋を取り囲むように戦闘隊形に入る。
部屋の瓦礫をガラガラと押し退け、元凶の2人が姿を現す。
その姿は先の山賊と同じく、異様な程に筋肉が膨れ上がり、ヨダレをダラダラと垂らした狂戦士と化していた。