山賊の襲来
ナバルたちとは関所で別れた。
フェリスがまた
「ノックス様についてく!!」
とゴネたのだがいつものごとくナバルに雷を落とされていた。
ノエルたちを待たせているウルカ村へと着いたノックス。
さっそくノエルたちに先程の件を報告する。
予想はしていたが、話を聞いたノエルたちの表情がみるみるうちに変わり、その顔には憎悪を孕んでいた。
「お前たちの気持ちは分かるが俺たちがここで奴らと問題を起こす訳にはいかない。」
「それは…承知しております……が、どうしても俺は奴らを許せなくて…」
ノエルは拳を握りしめてブルブルと震え、その拳からは血が滲んでいる。
「いずれ奴らには借りを返す。だがそれは今では無い。
この国を巻き込むことは俺が許さない。いいな?」
「「「「「はっ(はい)!」」」」」
そうは言ったものの、ノックスは先程の奴らがまた来るのではないかと心配していた。
ノックスたちはとりあえず今日はこのウルカ村で過ごし、明日に出立することにした。
この村に滞在する間は魔力・気配の感知スキルを最大限に発動させた。
そして、先程の心配が的中したと感じることになった。
(先程の一団の気配は覚えている。
ということはこの森の気配が奴らか…
関所では3人だけだったが…どうやら森にいた他の仲間と合流したか。
数は…………18人…か。意外に多いな。
いや、関所に程近い所に6人の気配…奴らの仲間…?
となると24人か。
観光か旅行か知らんが、この国に入国するにしてもこの数で森にいる他の仲間と密会とは、良からぬ相談でもしているのだろう。
入国を断られるのは織り込み済み、というわけか。
…だがどうしたものかな。
このまま帰ってくれればいいんだが。)
ノックスの期待とは裏腹に、その一団は帰ることはなくそのまま森に常駐した。
そしてその気配は夜が明けても存在していた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
次の日、ノックスは先にノエルたちを帰らせた。
もしもあの一団が強行して入国してきた時、見た目で魔族と分かるノエルたちが絡むと面倒事になるかもしれないと考えてのことだ。
それに、スラムに残している非戦闘員の仲間の安否も気にかかる。
国家間の問題にもなるのでおそらくは強行突破はしないだろうが、何かしらの事はしてくるだろう。
ノックスはノエルたちとは反対側、関所の方へと向かうことにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「何もやらねえっつてんだろ!!」
「だめだ!犯罪歴のあるお前たちを入国させる訳にはいかん!」
関所では怒号が飛び交っていた。
隠密スキルを10に引き上げたノックスは物陰からそのやり取りを聞いていた。
どうやら今日は山賊のようなガラの悪い連中5名が関所へと訪れていた。
「ちっ…物分りの悪い衛兵だな?……だけどよぉ、俺たちだって簡単に引き下がれねんだよ!!」
「止めておけ。強行突破するならば容赦はせんぞ!」
どうやら戦闘は避けられないようである。
が、この山賊たちが妙にこの関所に固執しているように感じる。
そんな考えが頭を過ぎらせていたが、ついに戦闘は開始された。
ここ数日、ノックスに訓練を施されたとは言え衛兵たちは山賊を相手に梃子摺る様子すら無かった。
いとも容易く切り伏せられていた。
「ぐっ……ち、ちきしょう……」
「だから言ったのだ。辞めておけと。」
「お前たちを連行する!」
「お、俺たちだってな、わかってんだよ……けどな、引き下がれねんだよ…」
「どういう意味だ?」
「…へへっ……ほうら来た。俺たちもお終いだけどよぉ、お前らもお終いだ…!」
山賊の言葉が何を意味していたのかはその時は不明であったが、関所に近づく黒いフードを目深に被った者が、白い歯を見せて厭らしい笑みを浮かべて近づいて来ていた。