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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第4章 魔族との対面
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世界初の試み

 それからは歩きがてらにフェリスがアインとモズに説明する。



 フェリスの説明はこうである。



 通常の詠唱法、例えば初級の火魔術であれば、『大いなる火の精霊よ。我の力となりて相手を燃やす炎となりて顕現せよ。フレイム。』と唱える。


 この詠唱法とノックスから聞いた、感じ取った魔力を具現化することと照らし合わせる。


 すると、まず最初の『大いなる火の精霊よ。』の1文。

 魔力と言っても属性が最初から付いてるわけではないので、自身の魔力に呼びかけ、属性を決める。


 次の『我の力となりて相手を燃やす炎となりて顕現せよ。』

 こちらはどの程度の威力にするのか、範囲をどれだけにするのかを決める。


 そして最後の『フレイム』

 これにて発動。


 順序としては、


1、魔力を練り上げる。

2、属性を決める。

3、範囲や威力を決める。

4、発動。


 となる。



 ただし、詠唱法の場合は1の魔力の練り上げについては詠唱により省かれている。


 詠唱法でもって魔術を行使している者は、自身の魔力をコントロールする必要が無い。

 詠唱に頼れば簡単に魔術を行使でき、体に流れる魔力をコントロールするという高度な練習を必要としない。

 だが詠唱でも、知らず知らずのうちに魔力をコントロール下に置いているのだ。



 フェリスはこの考えの元、まず詠唱法で魔術を発動し、その際に流れる体の魔力の流れを感じ取ることに集中した。



 最初こそ何が何だか分からなかったものの、MPが底をつきかけるほど発動した時に何となく感じ取れた。



 あとはその感覚をひたすらに覚える。



 すると、詠唱無しでも体の内に流れる魔力が感じ取れた。



 あとはそれを無詠唱として顕現させるのみ。


 詠唱法のプロセスと同じ手順でもって魔法を発動する。



 というものであった。




 詠唱法を知らないノックスだったが、フェリスの説明にはかなり納得する。


 気がつけばアインとモズだけではなく、ノエル達他3人もフェリスの説明に真剣に耳を傾けていた。



 フェリスからコツを聞いたアインとモズは早速初級魔術をひたすらに行使していた。


 そんな2人を見たノエルが

「お前たち、早速訓練するのはいいがモンスターが出てきた時に魔力切れを起こすなよ。」

 と注意されていた。


 ノックスはと言うと、ナバルと話をしていた。



「前にナバル殿にご馳走になった紅茶の味が忘れられず、自分でも煎れたのだが、うまくいかないものだな。」


「はっはっはっ。そうでしょうな。まだ私も研究中ですからな。」


「ちなみにここらにはコーヒーはあるのだろうか?」


「コーヒーですか。あるにはありますが、この領内では取り扱っている店は見たことはありませんな。」


「ということは他領では取引が?」


「えぇ。コーヒー豆はこことは違い、比較的一年中安定した気候で栽培されているようで。たまに行商人がコーヒー豆を売りに来ることもあるそうですが、かなり高額だとも聞いておりますぞ。」


「行商人、か。」


「えぇ。なので、この領内ではコーヒーよりも紅茶が主流ですな。もしもノックス殿が紅茶の煎れ方を知りたければ、私が教示させていただきますぞ。」


「それはありがたい!」


「ですが、その代わりと言ってはなんですが…」


「なんだ?」


「その分我らにも少しでよろしいので剣術の指導をしていただければ、と。」


「それでいいなら。」


「うへ〜、ノックスさん、お手柔らかに頼みますよ〜…」


「何を言うかドラン。ノックス殿ほどの境地に達した者からの指導など、王城でも受けられんぞ。」


 話を聞いていたドランが落胆したところにホランドがフォローしていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ウルカ村へと着いた一行はさっそく宿を取る。


ドランの母が経営している宿だ。


荷物を下ろしたところで、さっそくノックスはドランと合流した。


「ノックスさん、こちらです。」



ドランに宿の地下へと案内された。



夏に差しかかろうかという季節にもかかわらず、この地下はひんやりとしている。


ドランはここで以前にノックスから聞いたビールの製造に着手しようとしているようだ。



「ノックスさん、魔石はいくつか持ってます?」


「あぁ、少しならここに。」


 ボディバッグから魔石を取り出す。

 赤やら青やら黄色の魔石をいくつか出した。


「ノックスさん、これを、『属性付与』の魔法陣の上に載せて、氷の魔法を唱えてもらえますか?」


 ドランはそう言い、『属性付与』の魔法陣が描かれた紙を取り出した。


 ドランに言われるがまま、その上に魔石を載せて氷の魔法を唱えた。


「凍てつけ。」


 ノックスから放たれた氷の魔法は具現化する前に魔法陣に取り込まれる……はずだったのだが、魔法陣ごと凍りついてしまった。


「ノックスさん、威力高すぎです……もっと抑えて。」


「す、すまない。」


 そして今度は威力をかなり抑えて氷の魔法を行使した。


 すると先程とは違い、魔法陣が凍りつくことはなく魔石に『属性付与』を完了させたようだ。


 元々赤色の魔石だったものが今では白色へと変化した。


「今度は成功ですね!ノックスさん、その調子で他にもいいですか?」


「もちろんだ。」



 その後いくつかの魔石に氷の魔法の属性を付与していった。



 ノックスは属性付与を施した魔石を持ち上げて確認した。

 が、ノックスが思っているように、魔石は冷えて氷の塊のようになっている訳では無かった。


「これをどうするんだ?」


「属性付与は完了したんで、魔石から魔法を取り出すんですよ。

 こっちの『発動・微』の魔法陣にこの魔石を載せると……」


 ドランが別の魔法陣に魔石を載せると、微かな氷魔法が発動された。


「…ほう。これはかなり便利な魔法陣だな…」


「この地下を冷やすにはかなり魔力が必要なんですけど、ノックスさんほどの魔法の使い手なら問題ありませんね。

 でもこれで、ようやくあのビールを作れるかもです!」


「あぁ!ありがとうドラン!!」


「そ、そんな礼を言われるほどでもないですよ!!」



 ノックスは兼ねてより楽しみにしているキンキンに冷えたビール。



 この日、世界で初めて“ラガービール”造りに着手したのだった。

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