自称・一番弟子
思わぬ形で再開したナバル達とノックス。
ノエル達もしきりにナバル達に礼をしている。
ナバルとドランとホランドは遠慮がちだったが、フェリスだけは「さすがはノックス様ですぅ。」とウットリしている。
「それで、ナバル殿達はこれから関所へと戻られるのか?」
「えぇ。我々も休暇が終わりましたので。すでに他の隊員が関所に入っているのですが、またあのハウンドのような群れでも押し寄せてくると大変ですし。」
「そうか。無理はするなよ。」
「せっかく助けられた命です。我々も重々承知しております!」
「あぁ。」
懐かしいメンバーとの再会に少し頬が緩んだ。
「そういえばノックス殿、我らの総括であるハルバート様からも感謝しておられた。それと、1度手合わせ願いたい、とも。ぜひともお暇な時には王城へお越しくだされ。」
「…考えておこう。」
「まあ、無理にとは言いませぬ。ただ、ハルバート様は叩き上げで総括になられていて、ヘルハウンドを一瞬のうちに殲滅したノックス殿の実力をその目で見たいだけです。」
「構わない。それと1つお願いがあるのだが。」
「なんでしょう?」
「先日一緒に同行してから最初に入った村、ドランの母君が旅館をしていた村だ。そこまで同行しても構わないか?」
「ウルカ村ですな。それはもちろん構いませぬ。そちらの方々もご一緒に?」
ノックスはノエル達に振り返り
「どうする?」
と確認した。
「ノックス様のゆく所であれば、例え火の中水の中、どこへでも着いて参ります!!」
ノエルがそう言い片膝を着くと、他の4名も同じく片膝を着いて頭を垂れた。
「ノックス殿は彼らに崇拝されておりますな。」
ありがたいのだが、あまり人前で片膝をつかれると気恥しい。
こうしてナバル達にノックスとノエル達含めた10名はウルカ村へと歩き出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ノックス様ー!!見てくださいー!!」
ウルカ村へと向かう道中、フェリスが急にノックスへと話しかけてきた。
そして人差し指を顔の前に立て、火の魔法を無詠唱でやって見せた。
ライターの火程度の大きさしかないのだが、彼女はノックスから言われた方法で無詠唱を習得してみせたのだ。
直ぐに消えてしまったが。
「さすがだな。」
これには素直に感嘆した。
なぜならフェリスには『自身の体の中に流れる魔力を感じ取って具現化しろ』程度のことしか言ってなかったのだから。
ただ、フェリスはあまりまだ納得していない様子だった。
「…どうした?」
「…まだまだ詠唱ありきでの魔法のほうが威力も高いので…私の予定ではもっと大きい火を放つ予定でした……」
フェリスは先程のライター程度の火しか出せなかったことにシュンとしている。
「今はそれで十分だ。まだ自分の想定と実際の魔術に違いはあれどな。繰り返し練習し、魔力を完全にコントロールすることが出来れば詠唱の時と同じ威力の魔法を行使できるだろう。」
「…そうですよね…!ありがとうございますー!!」
ペコッとお辞儀をした。
そしてそれを見ていたアインとモズ。
「フェリスさんでしたっけ!?どうやってやったんッスか!?」
「コツを!あたしにもコツを教えてください!!」
「ノックス様からも教えられてるんッスけど、俺たちには全然できなくて…」
「このままではノックス様に見限られてしまいますぅぅ…」
2人は涙目になりながらフェリスに懇願していた。
当のフェリスは
「え!?え!?…えっと、あの…」
と困惑しノックスを見やる。
おそらくは自分がこの2人に教えても良いのかどうか決められずにいるのだろうか。
「フェリス、すまないがこの2人にコツがあれば教えてあげてほしい。詠唱から無詠唱への切り替え方については俺には知識がなくて。」
フェリスはその言葉を聞いて、さらに気をよくしたのか、
「まっかせてください!!なにせあたしはノックス様の一番弟子ですからねっ!!」
と鼻息を荒らげて敬礼した。