『魔王』
ノックスはローシュ達と共に最初にいた部屋へと戻った。
重篤だった3名は意識こそ回復しなかったものの、いまではスヤスヤと眠っている。
しばらくすれば意識も戻るだろう。
部屋に戻るや否や、ローシュ達はみなノックスに土下座した。
「ノックス殿!この度は我らを救って頂き、大いに感謝致します!!」
「「「「「「ありがとうございます!!!!」」」」」」
と一斉に感謝された。
「かまわん。治療したのも同族のよしみだ。それに俺も色々と聞かせてもらった。」
「ノックス殿!!今後は我らは貴方様の手足となり、ノックス殿の妹君の奪還、及び、保護に尽力致す所存です!!」
「私めにも、どうかノックス様のご教示を!!」
「我らにもどうか!!ノックス様!!!!」
ローシュを筆頭にノエルやその他の者までノックスを崇拝し、嘆願してきた。
少し前までのピリピリとした関係から打って変わっての態度に少し当惑していた。
「…いいのか?俺の行く先には教会との戦争がついてまわる。命を落とす危険しかないのだが?」
「構いません。もとよりすでに失われたも同然の命であったものを、ノックス様に救われたのです!」
「救っていただいた我らの命は、ノックス様に捧げる所存です!!」
「ノックス様の為に死ねるなら本望!!!!」
「…死ぬ前提はやめてくれ。目の前で死なれては寝覚めが悪い。」
「…な、なんと慈悲深い…!!」
「あなたが神か…?」
どこかで聞いたようなセリフである。
「死ぬために戦うわけではない。俺たちの存亡をかけ戦うんだ。」
一旦皆が落ち着いたところで、改めて目標を確認する。
最終目標は『ルナの奪還』。
だがそのためには色々と準備がいる。
なので当初はまず、皆のレベルや戦闘スキルの底上げ。
戦闘職でないものは皆の身の回りの世話を見る。あとは情報収集。
ローシュに確認したら、ここにいる魔族はさっきの3名を含めて全部で14名。
戦闘職についてはローシュとノエル。あと他に4名いる。
伏せていた3名全員戦闘職だそうだ。
いずれはロンメア王国を離れて自分たちの拠点が必要になるのだが、それについては土地探し等や、所属の領との話し合い等も必要になるためローシュに一任することに。
あとは、ロンメア王国内の他のスラムにも魔族がいるらしく、その者達も集うかもしれないとのこと。
教会の戦力が強大である以上、こちらも相当な戦力が必要になる。
種族に拘る必要も無いが、表立って教会に敵対するための人員を募集はできない。
あとは金。
地龍の魔石を売れば解決なのだろうが、そもそも買取してくれるのは国家予算レベルの代物。
おいそれと売れるはずもない。
なので地道に集めていく必要はある。
最後に人脈。
横のつながりは必ず必要になる。
ロンメア王国とはもちろん繋がりを持っておく必要がある。
まだロンメア王国がどのような国なのか見定める必要はあるものの、少なからずいきなり恩を仇で返すような国とも思えない。
それに魔族に関わらず他種族を国内で住まわせている。
他国を知らない故に比較できないが、こういった国は多くは無いだろう。
ローシュに確認したところ、ここロンメアは世界でも稀な国なのだという。
ノックス自身も改めて目標を見定め、ローシュ達含めて皆決意したのだった。
そして、ノックスは知らず知らずに【称号】『魔王格』の“格”が外れ、『魔王』となった日でもあった。