マーリンちゃん
ノックスは買取額6730ダリルをカバンにいれる。
そこでハッと思いつき、老婆へと質問した。
「そういえば、えっと、お婆さん。」
「レディに対して口が裂けても『お婆さん』なんて呼ぶんじゃないよ!!!!」
いきなり叱責された。
「す、すまない…!」
「ふんっ!…まあ今回は多めに見てやるさね………あたしゃ『マーリン』だ。あたしを呼ぶ時は『マーリンちゃん』か『マーちゃん』て呼ぶんだよ………なんだいその顔は?」
「い、いえ、流石にその名で呼ぶのは、と。『マーリン殿』でもかまわないか?」
「……つまらない男さね……まぁかまわないよ……それで?あたしに他に何の用だい?」
「マジックバックを探しているんだが、この辺りにいい店を知らないか?」
「……それならこっちへおいで……」
ノックスはマーリンへと案内され店の奥へとついて行った。
「…ちょいとそこで待ってな…」
とマーリンは店の戸棚を開けてなにやら漁っている。
しばらくして
「…これを持っておゆき…」
とボディーバックを手渡された。
「…これは?」
「お前さんが欲しがってたマジックバックさね…」
「…ありがとう。いくらだ?」
「金はいい。それは孫にやる予定だったんだけどね……」
とマーリンは思いを馳せる。
ノックスもその事については深くは聞か無いことにした。
「…そんな大事な物を貰っていいのか?」
「…使わないまんまホコリを被らせるのも勿体ないさね……その代わり魔石は分かってんだろうね…?」
「もちろんだ。……マーリン殿、感謝する。」
「勘違いしないどくれよ…?当然この国を出る時にゃ返してもらうさね…」
「…わかった。」
少し早とちりしたのを後悔した。
「それと、もう1つ質問があるのだがかまわないか?」
「…まだ何かあるのかえ…?」
「もしも龍を倒したとして、その魔石はいくらぐらいになるんだ?」
「…龍…ね………倒せるなんてそんな夢物語を語るとは若いモンは違うねぇ……
そうさね…、もしもそいつの魔石を売ろうとすんなら想像もできないほどの金額になるだろうねぇ……国家予算レベルとしても、…最低でも50億ダリルじゃないかねえ…?」
「血も利用価値があるのか?」
「血どころじゃないさね!龍種となりゃあ骨や皮に肉、ぜ〜んぶ余すところなく高額買取されるよ…」
「…わかった。ありがとう、マーリン殿。」
「…変な気を起こして龍を倒そうとするんなら死ぬ前にそのカバンは置いてってもらうよ…」
「大丈夫だ。もちろんそうなる前にこのカバンは返しに来るさ。」
「ふんっ!ま、せいぜい死なないことさね……ま、お前さんなら多少の敵なら相手にならんだろうけどねぇ…ヒッヒッヒッ……」
ノックスは地龍の魔石を売るのは辞めておいた。
国家予算レベルのものが売り出されたとなれば当然騒ぎになる。
そうなれば当然持ち込んだノックスが目をつけられる。
妹を保護するまでは目立つ行動は避けておきたい。
仮に妹を保護できたとしても、そんな国家予算レベルの代物を売るのも気が進まない。
なぜなら多額の金を持つということはそれだけ厄介な相手に狙われる事に他ならないからだ。
ノックスは『ジェスター』を後にし、一旦宿へ戻り、部屋に置いてあったカバンから地龍の魔石を取り出して、貰ったボディバッグに移し替えた。
その後簡単に昼飯を食べ、魔族の捜索のためにとスラム街へと赴くことにした。