触り心地
残っていたオーガ達は脱兎の如く逃げていた。
ノックスも深追いするつもりもないので見逃す。
『森の梟』達は口をあんぐりさせていた。
「…あの…もう終わったぞ?」
ノックスが声をかけると皆がビクッと身体を弾ませた後に一斉に
「「「「「す、す、すびばせんでしたーー!!!!」」」」」
と土下座した。
「……え?」
謝ってきた訳を聞くと、どうやら今回の同行は自分たちの力を見せつけようとした下心からだったというのだ。
ノックスは呆れてしまった。
が、同時に前世でもそんなやつがいた事を思い出す。
自分たちの強さ(成績)を新人に見せつけて悦に浸る者達。
どこの世界にもいるようだ。
だが今回は前世とは違う。
何より危うく命を落とすところだった。
同行者がノックスでなければ全滅していたのは確実だ。
なにせオーガはBランクの討伐対象。オーガナイトともなればAランク。ヘルハウンドと同じランクであるものの、同じAランクでも幅がある。
ヘルハウンドは群れを支配し効果的に獲物を狩る。
対してナイトオーガは群れを支配し指示を出したりもするが、個の戦闘力も高い。
ヘルハウンドに関しては一瞬のうちに殲滅したのであまり比較にはならないが。
「…理由はどうあれ、無事でなにより。
これからはそんなつまらないことで新人冒険者にいい格好を見せつけようとしないことだな。」
「「「「「ありがとうございますー!!!!」」」」」
「……いいから、土下座は辞めてくれ…」
大の大人5人に土下座をさせているとなるとあまり気分のいいものではなかった。
人によってはそれで悦に浸る者もいるかもしれないが、ノックスにそんな趣味は無い。
魔石の回収だが、オーガ達の魔石は竜巻によりズタズタになってしまっていた。
それでも純度が高いということで時間がかかったものの全て回収した。
オーガナイトからも魔石を取り出す。
ヘルハウンドの時と同じくらいの大きさの魔石がでてきた。
それを見て魔導師のザジは
「…ものすごい純度だ……」
と目を見張っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
帰り道。
ノックスに対する皆の態度が一変していた。
皆が皆ノックス『様』と呼んでいるし、口調も敬語だった。
ドグとメグに至っては
「「ノックスさま〜〜!!」」
と抱きついてゴロゴロと喉の奥を鳴らしている。
リカルド達はそんな兄妹を慌てて引きはがそうと注意するも、2人は気にせずに抱きついてきた。
当のノックスはどうしたらいいか分からずに困惑したものの、予てより気になっていた猫耳のもふもふを触ってみた。
すると2人はさらに
「ノックスさま〜〜!くすぐったいです〜」
「ノックスさま〜〜!きもちいいです〜」
と目を瞑って気持ちよさげな顔をしていた。
(…思っていた以上にモフモフだ…!!)
と心地よい手触りを楽しんでいた。
街に着くまで兄妹はノックスの左右の腕を1本ずつ抱きかかえて歩いていた。
が、さすがにノックスも男に抱きつかれるのは遠慮したい。
かと言って兄だけを引き離す訳にもいかないので2人とも引き離した。リカルド達は必死に謝罪していたが。
兄妹は
「「ノックスさま〜〜!!!!たすけて〜〜!!」」
などと懇願している。
ギルドに戻り、クエストの完了を報告する。
その際、ギルドボードの中に貼ってあったクエストランクAの『ナイトオーガの討伐』も一緒に受付へと完了の報告をした。
受付員は物凄く驚いていたのが印象的であった。
そしてクエストの報酬として金と70ポイントが授与された。
ギルドカードを確認すると
【名前】ノックス
【ギルドランク】F
【ギルドポイント】70/1000
【犯罪歴】なし
【備考】なし
と70ポイントが付与されていた。