初クエスト
朝には衛兵達と別れを告げてノックスはロンメア王国で情報収集を行う。
別れ際にはフェリスが「弟子にしてくださーい!!」とゴネてはいたがナバルがゲンコツを食らわせて連れ帰った。
騒がしくもあったが、いざ1人になると寂しくも感じる。
まずはこの国を歩き回る。
ロンメア王国は海に面した国であり、扇形に街が成っている。
各所には色んな店があった。
武器・防具屋、食事処、魔道具店、中古品店、買取所に酒屋。
ギルドはこの街には5ヶ所。大きい支店が東西南北に1つずつと、中央に1つ。小さな支店も点在している。
奴隷商の店もあるのかと簡単に探してみたものの見当たらなかった。
魔族もいるらしいと聞いていたが、見かけることは無かった。
とりあえずはギルドでどんなクエストがあるのかを確認するためにギルドへと赴くことにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ロンメア王国ギルド南支店。
ノックスが入ると「いらっしゃいませ!」と受付の女性が声かける。
猫の獣人であった。
クエストボードには昼前にもかかわらず結構な人がいた。
それをかき分けてクエストボードを見やる。
Fランク・・・ペットの散歩
Fランク・・・倉庫の掃除
Eランク・・・荷物の運搬
Eランク・・・ペットの捜索
Eランク・・・子供の送迎
Dランク・・・薬草採取
クエストボードにはたくさんのクエストが貼ってあったがどれもこれも似たようなクエストばかりであった。
(EやFは雑用ばかりだな…)
Dランクともなると街の外に出るクエストが多かった。
薬草などの採取であったり、討伐系のクエストもDランクからであった。
雑用をしても構わないのだが、ノックスはどうにも人を相手にするよりもモンスターを相手にしているほうが気楽だと思っている。
(低ランクであっても高ランククエストを受注できるならDランク以上の討伐クエストでも受けるか…)
などと考えていたノックスに声をかけてきた者がいた。
「そこの兄さん、俺たちと一緒に討伐に向かうか?」
「………」
自分が声をかけられたとも思わず一瞬周りを見る。
「あんただよあんた。見たところ新米の冒険者だろ?」
「…あぁ、俺のことか。確かに冒険者は昨日なったばかりだが。」
「俺たちゃ『森の梟』ってパーティでよ、ランクはCだ。さっきからあんた討伐クエストばかり見てたから声をかけてみたってとこだ。」
『森の梟』は5人パーティだった。
話しかけてきたのがリーダー格の男。剣士だろう。
その後ろに4人が並んでいる。
中には獣人族が2人居る。
「なぜ俺に声を?」
「ま、先輩冒険者なりの配慮だ。新人なのに討伐クエストばっか見てるが、討伐クエストの危険性を知ってもらうためにな。ただ連れていくだけじゃなくて雑用もしてもらうけどな。」
「…ふむ。討伐クエストがどれほどのレベルなのか確認はしたかった。が、俺はパーティに入るつもりはないが構わないのか?」
「ま、それは俺達も同感だ。新人なのにいきなりランクCの冒険者パーティに入るわけにゃいかねえだろうしな。」
(このパーティと同行すればこの近辺のモンスターの生息域やもしかするとダンジョンなどの情報も手に入るかもな。)
一考した後、ノックスは彼らと同行することにした。
その後、簡単に自己紹介が行われた。
リーダー格の男はリカルド。副リーダーの男ゲイル。獣人族の男がドグ、女はメグ。この2人は兄妹とのこと。そして、見るからに魔導師の男ザジ。
ちなみに彼らはランク下の者、とりわけ新人冒険者をよく連れて討伐クエストに行く。
なぜ彼らがそんな事をするのかと言うと、自分たちの力量を見せつけるため。
見せつけたあとは自分たちの舎弟にする。
というなんともくだらない目的のため。
だがこの日彼らは思い知る。
このノックスという男はあまりにも規格外な者であるということ。そして、自分達の浅はかさを。