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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第27章 ヘイル・ロズでの戦い
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終幕


「……!!……この気配は……!!」


「………ノ………ノックス様!!?」



 ハデスと戦闘していたノエルとナタリアとファウストは、ノックスの気配を感知した。



「お前たち、待たせたな。」


「ノックス様!!!!」


「……ご……ご無事で………!!!!」


「……ほうらねぇぇ……やっぱり、死んでないって、おじさんは信じていたよぉぉ。」


「………何故だ………魔力枯渇を起こし………我が術からは逃れられなかったハズだ………!!」


「説明すると長い。安心しろハデス。多少魔力が戻った程度で完全回復している訳では無い。」


「………まあよい………今度こそ貴様を………!!」



 ハデスはゆらりと刀を構え、ノックスへ向けて剣戟を浴びせかけた。



 だが、ハデスの繰り出した剣戟はノックスをすり抜ける。



「………!!?」


「……どうやら、貴様にとっては大きな誤算があったようだぞ。」


「………なん………だと…………?」



 ハデスは振り返り、再度ノックスへと剣戟を浴びせる。


 だが、そのどれもがノックスをすり抜けてしまい、傷1つ負わせることは無かった。



 その異常さにハデスだけでなくノエルとナタリア、ファウストらも頭が混乱している。



「い、いい、一体どうなってんのぉぉ!!?」


「……ノックス様への攻撃が………無効化されている………!!?」



「………貴様…………一体……………!!!?」



 ノックスはハデスから繰り出される剣戟を、最小限の動きのみで躱しているにすぎない。


 しかし、その動きがあまりにも早く、皆からはノックスが突っ立っているようにしか見えていないだけなのだ。



「さてハデス。そろそろ終わりにしよう。貴様もゼディウス同様、黄泉の国へと(いざな)ってやろう。」


「……よくも……我が神ゼディウス様を……!!!!」



 激高したハデスはノックスに向けて火魔術を撃つ。



 魔力が枯渇してから多少回復したものの、ノックスにはほとんどMPが残されてはいない。



 しかし、ノックスは撃ち込まれる魔術を刀で全て弾いた。



 そして一瞬ノックスが足を踏み込む姿勢を取ったかと思うと、ノックスの姿は完全に消失した。



「………!!!?」



 気付いた時にはノックスはハデスの後方へといつの間にかたっていた。


 さらには、抜刀していたはずの刀を納刀した。



 そのままノックスはハデスに背を向けたままツカツカと歩き出す。



「……何処へ行くという…………我が神を冒涜した罰を…………償わせてくれる…………!!!!」



 ハデスが刀を構え、背後から襲いかかろうとした………が、ハデスはその後、体が命令を聞き入れなかった。



「…………何を……………」



 ハデスの体は、すでにノックスによって断ち切られていたのだ。



 その早すぎる剣戟により、体が斬られた事にも気付くのが遅れた。



 ボトっとハデスの左腕が落ちたのを皮切りに、ハデスの体はバラバラとなって崩れ落ちる。



「「「!!!?」」」



 自分がバラバラにされた事にハデスが気付いた頃には時すでに遅し。


 ハデスは断末魔をあげる間もなく、バラバラに映る視界と共に、やがてゼディウス同様、永遠の闇の世界へと誘われていった。




 ハデスの死と同じ頃、グシオンもイブリース兵らによって次々に始末されてゆく。



 知能を持たないグシオンであれども、死の恐怖に恐れ(おのの)き、逃げ出そうとする個体も現れた。



 しかしそれらは周囲を取り囲んでいたヘイル・ロズ兵により始末されてゆく。



 やがて最後の1体となったグシオンを始末し、この戦いは終幕となった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 戦いが終わったものの、その被害は少なくは無かった。


 グシオンにより無惨に殺されてしまった者も少なからず居た。



 だが、その被害はアシュフォードの敷地内だけに留めることは出来た。



 ノックスはマジックポーションを何本も飲み干し、疲れた体を無理やりにでも起こしてけが人の治療へと専念する。


 他の兵らも力の限り治癒魔術にてけが人を治療させ、戦いの傷を癒していた。



「……ノックス陛下………この度のご助力、感謝の言葉もありませぬ……」



 けが人を治療していたノックスの元へブラックウッドが現れて感謝を述べた。



「……俺としても……まさかここまでの事になるとは………」


「………あのゲラートという男………彼は一体何者だったのでしょうか………それに、ハデスも………」


「……あの二人は……この世界の住人では無いようだ。」


「………なんですと………?」


「……詳しい話は………後で話す………」


「………畏まりました。ノックス陛下もお疲れでしょう。今はともかく、存分に休まれてください。」


「………あぁ………そうしよう…………」



 ノックスはそうは答えたものの、兵らの治療を再開していた。



 その様子を見かねたザリーナがそっとノックスの隣に座り、治療するノックスの手の上に自身の手を重ねた。



「………ザリーナ………」


「…無理をし過ぎだ。あとは私がやる。」


「……すまない………しばらくは………起き上がれそうに……無いのでな……………」



 ノックスはそう言うとザリーナの肩に身を預け、気を失ってしまった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「………ここ………は……………?」



 ノックスが目を覚ましたのは、それから3日後の事であった。


 目覚めたのはヘイル・ロズ城の病棟であり、傍らにはザリーナの姿があった。



「……ノックス……目が覚めたようだな。」



 ノックスは体を起こし、ザリーナがそれを支えた。



「……一体……どれくらい気を失って……?」


「3日だ。全く、無茶をするからだ。」


「………3日…………」



 ノックスが先の戦いに思いを馳せていたところへ、突如腹をおさえた。



「……どうした、ノックス!?」


「……ぐっ………す、すまないザリーナ………」


「腹が痛いのか!?今治療を……」


「……違う………何か……何か食べ物を……!!」


「……食べも……って、え……!?」



 ザリーナは突然の要望に驚いたが、すぐさま病室を出て食事を用意するように依頼した。


 慌てた様子のザリーナを見たノエルらも、ノックスの身に何が起きたのかと慌てて病室へと挙って入室した。



「食事だ!!皆の者!!ノックス様にお食事の用意を!!!!」



 ナタリアも急いで部下に命じ、皆が大慌てでノックスの病室へと食事を運び込んでいた。




 次々に運び込まれる食事に対し、ノックスはお構い無しに手掴みで夢中に口へと運ぶ。


 その様子に皆が面食らっていた。




「……どうやら、お目覚めの様子だな、ノックス陛下。」



 ノックスが目を覚ましたと報告があったのか、セオドア皇帝が病室へと訪れた。


 しかし、ノックスが夢中で食事を摂っていたことに驚いていたが。




 ようやくノックスの腹が満たされ始めたころ、ノックスはハッとして我に返った。



「………すまない。おそらく、急激なレベルアップのせいで、空腹に耐えられなかったようだ……」


「…ノ、ノックス様がお目覚め頂いたことに……み、皆感激しております!!」


「………心配かけたようだな。だが、もう大丈夫だ。」


「そ、それで、その、ノックス様……セオドア皇帝もここにいるんッス……」


「……フフフ……どうやら我々の心配は杞憂であったようだな。」


「……セオドア皇帝……みっともない姿を晒してしまい申し訳無い……」


「構わぬ。食事したままで構わんが、一体何が起きたのか。説明してはくれまいか。」


「………そうだな………」



 ノックスは口元をナプキンで拭き、姿勢を改めた。



 ハデスのこと。現れたグシオンのこと。その裏にいたゼディウスのこと。


 そしてゲラートのこと。



 それらについて、皆に説明した。




「……な……何がなんだか………」


「……ゲラートは12使徒を隠れ蓑にしていた、ということでしょうか……」


「……奴が監視者……だから直接手を下さず、見守っていた……と………」



 皆の反応は様々であったが、セオドアはノックスの話を黙って聞いていた。



「……ハデスはこっち世界とゼディウスの世界……それを繋ぐ扉の役目だったのだろう。」


「……ノックス様がいなけりゃ…この世界は終わってたって事ッスか………」


「それは違う。お前たちがいなければ、世界が終わっていた。」


「……謙遜なさらずとも……」


「謙遜ではない。事実だ。お前たちがグシオンの相手をしてくれたおかげで、答えを導き出せた。」


「……そ、そう言ってもらえると、俺らも頑張った甲斐があったってもんッスねぇ。」



 アインの一言により場が少しばかり和む。



 やがてセオドア皇帝は、徐に口を開いた。

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