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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第27章 ヘイル・ロズでの戦い
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科学の力

 イブリース兵らの加勢により、グシオンの群れを一時的に押し返す事は成功したものの、それは一時的なものでしかない。


 いずれ魔力やスタミナが切れればグシオンの餌食となってしまう。



 さらには、ハデスは今も尚グシオンを生み出し続けていた。



 ヘイル・ロズからも衛兵らが加勢に駆けつけ、グシオンが他の住居へと漏出しないようなんとか抑えこんでいた。



 怪我をした者は急拵えのドームの中へと連れ込まれ、その中で治療を受けている。


 『防壁』の効果のおかげでドームはグシオンの攻撃にも平然と耐えてはいるが、それも時間の問題だろう。




 そこへ、ノックスが突如現れた。



「リョウヤはいるか?」


「……え……僕ですか……?」


「悪いが手を借りるぞ。」


「……え……え………!?」



 ノックスは有無を言わさずリョウヤの手を取りドームの外へと駆け出して行った。



 ノックスはそこらじゅうに小高い丘を作っており、グシオンが登れないよう返しを作っていた。


 その上からアインたち魔道兵は攻撃を行い、遠距離攻撃を持たないグシオンの対処をしている。



 その中の1つにノックスはリョウヤと共に登った。



「……鑑定の結果は?」


「……えっと………な、名前以外は…何も………」


「………そうか………」



 ノックスはリョウヤの答えを聞いてしばらく考える。



「……奴らはこの世界の(ことわり)から外れた存在……?

 ………それに、ハデスが信仰する神とやら……」



 ノックスは独り言のように呟きながら思案する。



「……あ、あのう……僕に用って、鑑定結果を聞くためだけですか?」


「………いや、違う。」



 ノックスはリョウヤに自身の考えを伝えた。



「奴らはこの世界のどんな攻撃にも耐える。例え暗黒魔術であったとしてもだ。」


「………………」


「龍族に御伽噺(おとぎばなし)として伝えられていた、悪魔という存在。あのハデスは、おそらくそれに近い存在なのだろう。」


「……それが……僕に何の関係が………?」


「この世界の理では奴を倒せん。奴らは異なる世界の理を用いている可能性がある。」


「………違う世界の……理…………?」


「……それに対抗するには、俺たちも違う角度から奴らと対峙しなければならない。

 俺たちに残された『違う世界の理』。つまりは、地球の科学だ。」


「……地球の科学って言ったって……それでもあんな化け物を倒せるような科学なんて………」


「だから考えなければならん。俺とお前で!!」


「……僕と……あなたで………?」


「そうだ。このまま奴を解き放てば、この世界はあのグシオンに埋め尽くされる。」


「………………」


「お前の知恵が……お前の科学が、この世界を救えると。証明してみせろ!」


「………僕の科学で………」



 リョウヤはしばらく考えた後、ノックスに向き直り無言で頷く。



 リョウヤは丘の上から戦闘を見遣り、グシオンについて分析を始めた。



「奴が体内からグシオンを生み出しているが、おそらく召喚術とは違う。」


「……召喚術……?ですか?」


「この世界に魂を呼び寄せる術らしい。だが、あのグシオンらは魂だけの存在では無く、肉体はある。」


「………なるほど……ですね………そうなると………」



 リョウヤは思考を加速させ、打開策について考える。



「……無限に再生……そのエネルギーはどこから………ハデスの体内はどこへ繋がり…………斬撃も打撃も……炎や雷も効かない…………

 ……いや、考え方を変えろ…………」



 リョウヤはうわ言のように呟きながらグシオンを分析する。


 ノックスは分析はリョウヤに任せ、丘の上から砂粒縛にてグシオンらを攻撃していた。



「……異世界からの召喚………僕らと同じではないが……こちらの世界と向こうの世界………それを繋いでいるのは一体…………

 ………どこかに繋がって………グシオンはそこから…………」


「……奴の体内はグシオンの世界に繋がっているだろう……ゲートを閉じれば、グシオンはこちらの世界の理に捕らわれる、か……?」



 ノックスは砂粒縛にて攻撃しながらもリョウヤの考察に加わる。


 ノックスとリョウヤはさらに思考を加速させる。




 そもそもハデスとは何者なのか?



 教会本部地下ではレヴィアにより殺され、今回はノエルにより殺された。


 アズラエルの不死や、『転嫁』や『保険』によって死を回避したとも言い難い。



 ではなぜハデスは死亡しないのか。



 龍族に伝わる御伽噺によると、大昔に天使と悪魔がこの地にて戦争を行った。



 悪魔は天使と戦争をする前、この世界に『異物』を送りこんだ、とあった。


 その力により、炎は燃え盛り、海は荒れ、雷は降り注ぎ、風が吹き荒れ、大地は割れた。



 仮にその悪魔がハデスの信仰する神と同じであれば、天使らが行ったように倒し方があるはずだろう。




「………向こうの世界とこちらの世界…………それを繋ぐ理論は………共通の理でなければならないはず………」




「……異世界………異なる世界………マルチバース………異世界への……扉…………?」



 リョウヤは何か思いついたようであり、カバンから様々な素材を取り出し『創造』を用いた。



「……何か分かったか?」


「………おそらくですけど……ハデスの体は一種のワームホールなのでしょう。そこから異世界からグシオンを送り届けている可能性があります。」


「……ワームホール……?」


「このワームホールを破壊するとすれば、効果的な方法が2つ。入口側のブラックホール、出口側のホワイトホール。この2つのうちどちらかを破壊してしまえばいいんです。」


「……よく分からんが……どうやって?」


「……それには、今作ったこの手榴弾を。」



 リョウヤは先程作った手製の手榴弾をノックスに手渡した。



「……こんな爆弾でハデスの扉が閉じると思わんが……?」


「……ノックスさん、その手榴弾に、ありったけの重力魔術を流し込んでください。」


「……重力……まさか、それでホワイトホールを消し去るのか!?」


「そうです。その手榴弾には魔石を仕込んであります。それだけでなく、増幅装置も。」


「……しかし……それでは魔石が持たないぞ?」


「構いません。増幅装置は魔石が砕けるのと同時に発動するよう仕込んでます!」


「……もし間違っていれば……この世界がブラックホールに飲み込まれるぞ……!」


「………仮にそうだとしても……このまま放置していたって同じです……!!

 ……それに、向こうの世界の理ではこちらの世界の理が通じないのと同様、魔術で作り出したブラックホールなら、向こうの世界でそれを破壊する術が無いはずです……!!」


「………分かった………やってみよう。」



 ノックスは手榴弾を握りしめ、改めてハデスを見やる。



「……いつぞやに……新術を考案するにあたって超重力でブラックホールを作ることを考えていたが………よもやこんな所でとは………」



 ノックスは過去の自分に思いを馳せたが、すぐさま目を見開いてハデスの元へと駆け下りていった。



 去り際に


「……科学で、この世界を救うぞ……!」


 と言い残して。

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