魔石の純度
一行はロンメア王国に向けて歩いている。
さきほどナバルには回復ポーション8つ、マジックポーションを4つ手渡した。
ナバルは受け取りを拒否していたが、フェリスの交渉のおかげで浮いたお金でもあり、ギルドの登録料を肩代わりしてくれたお礼ということで半ば強制的に受け取らせた。
その事について朝からフェリス含む衛兵達から感謝された。
朝ごはんは簡単にパンと目玉焼きにウィンナー、オニオンスープ。
ノックスはこれまた至福の顔を浮かべて食べていたのには衛兵達も苦笑していた。
ただし1人だけ。フェリスは朝ごはんを口いっぱいに頬張ってさながらハムスターのようになっている。
本当に残念な美人である。
宿を出る際にはドランの母からお弁当までいただいた。
昨日の夕食をあまり味わって堪能できなかったノックスはお弁当を今から楽しみにしていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
道中、ホーンラビットやギガントフロッグといったモンスターと会敵した。
衛兵達は連携を取り、難なく倒していく。
解体したモンスターから魔石を取り出すも、フェリスはしきりに
「純度が……これも純度が……」
と独り言を呟いている。
気になったノックスはフェリスに聞いてみた。
「フェリス殿、取れる魔石に純度の違いが出るのはなぜなんだ?」
「え!!あ!!ノックス様!!あ、あ、あたしに『殿』など不要ですー!!…あ!えーっと、純度ですよね!」
とフェリスは慌てふためくも、純度について詳しく教えてくれた。
魔石というのはモンスターの体内に生まれた時から存在する。成長とともに魔石は大きくなる。
モンスターの中には経験でもって進化する個体もあるのだという。進化を遂げたモンスターの魔石は更に大きくなる。
そして純度は、いわばモンスターの活動の源。
モンスターが戦闘などで活動量が増えると純度が下がる。
逆にモンスターにほとんど活動させずに倒すと、純度の高い魔石が取れるのだという。
言い換えれば、魔石はコップ。純度はその中に入れられた水。戦闘が長引くほど中の水がなくなる。というものだそうだ。
「なるほど……。だから俺が倒したコボルトの魔石は純度が高かった、というわけか。」
「はい!本来ヘルハウンドであったとしても普通は倒して魔石を取れても純度は低く、一般市場でも3000~3200ダリルが相当です。ヘルハウンドに何もさせずに倒しちゃったノックス様はほんっとすごいんです!!」
「わ、わかった。ありがとうフェリスど…フェリス。」
13年間ある意味ボッチだったノックスには残念美人と言われているもののフェリスが顔を近づけて力説してくるのには照れるような恥ずかしいような気持ちになっている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
昼時になり、ドランの母特製お弁当を頂くことに。
中身は特製ハンバーグ弁当だった。
特製のデミグラスソースがかかっており、湯気が立っている。
どうやらこの世界にも保温性のある容器があるようで驚いた。
ノックスは子どものように目を輝かせ、ハンバーグを1口。
濃厚なデミグラスソースがすぐさま口内に広がる。
後からハンバーグの肉汁と旨みがマッチングし、絶妙なハーモニーを奏でているかのようだ。
あまりの美味しさにノックスは
「…美味すぎる……」
と声を震わせ感動していた。
涙をうかべつつハンバーグを美味い美味いと食べてくれるノックスに、ドランは嬉しくなった。
「ノックスさん、よかったらお代わりありますよ!」
「「おかわり!!」」
ノックスはさておきもう1人、フェリスまでもがおかわりと唱えていた。
その後、昨日ナバルが言っていたように、そろそろ夕刻が迫ってきたあたりでロンメア王国が見えてきた。