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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第27章 ヘイル・ロズでの戦い
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諜報部

 ヘイル・ロズ帝国は、大きく分けて4つの区域が存在している。


 王城含め都心部を第1区。


 ブラックウッドはその区域の統括ではあるが、その更に上にセオドア皇帝が存在する。



 第1区を中心に、東に第2区。南に第3区。北西に第4区と存在する。



 第1区は城下町ということもあってか、街並みはとても賑やかであり、貴族街も多く存在している。


 第2区は工業が盛んに行われており、ヘイル・ロズでの魔鉄製品の多くはこの区から生産されている。


 第3区は紡績が主な生産品である。ソーサリーマントからフリッパーといった物は基本的にこの区から生産されていた。


 第4区は農業、及び、畜産。4区は他の区より遥かに広大な敷地面積を誇り、そのほとんどはそれらに活用されている。



 今回ノックスらが潜入するのは第3区。


 定期便の中に忍び込み、潜入する計画である。



 セオドアの密命により、荷物を運び終えた馬車に乗り込み、第3区を目指していた。



 国内での運搬ということもあり、中を改められる事もなくすんなりと第3区に侵入する事は出来た。



「………随分呆気なく潜入できましたね……」


「あぁ。国外とのやり取りとは違い、国内でのやり取りだけに、必要以上に検査をしていないのだろう。」


「……ということは、セオドア皇帝が行っている調査は、まだ向こうには知られていない、という事でしょうね……」


「……あぁ……」



 すんなりと侵入出来たことにノエルはやや肩透かしを食らっていた。



「………にしても…………ザリーナ……大丈夫か……?」



 と、心配するノックス。


 と言うのも、ザリーナは普段から馬車の荷台は酔うので御者席に座るほど乗り物酔いが酷いと聞いていた。


 ザリーナは顔を真っ青にして、今にも吐き出しそうな表情をしていた。



「……大丈夫………とは……あまり言い難い………ウッ……!」


「…俺の調べによると、乗り物酔いはこの世界では『精神耐性』を上げると良いらしいぞ。」


「……にしても意外じゃな。ザリーナにもこんな弱点があったとは。にしても、イブリースで披露宴とやらを行ったときは大丈夫そうだったではないか。」


「……まぁ、こちらの道はイブリースで舗装されている道路に比べて少し荒れてはいるからな。それにサスペンションも搭載されていないし。

 …これで少しは気が紛れるだろう。」



 そう言うとノックスはザリーナに解毒魔術を施した。



「……す……すまない…………」



 馬車に揺られながら、一行は第3区に用意されているという拠点を目指して行った。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 馬車に揺られること8時間。


 馬車は途中途中休みながらではあるものの、ようやく目的地へと到着した。



 朝に出発した一行だったが、すでに夕暮れ時となっていた。



 拠点となる場所は簡素な宿であったが、馬車を裏手へと案内し、なるべく人目に付かない所へと誘導してノックスらを迎え入れた。



「……お待ちしておりました……皇帝陛下より仰せつかっております。

 お疲れでしょう。早速中で休まれてください。」


「ありがとう。助かる。」



 宿屋の主人がノックスらを案内し、そこでようやく一行は体を休めることが出来た。


 部屋は1部屋のみのため、4人は同じ部屋で体を休める事になった。


 ザリーナをベッドに横たわらせ、窓から第3区の景色を眺めた。



 しばらくの後、部屋の扉をノックする音が聞こえ、そこから1人の若い女が入室してきた。



「失礼致します。お疲れのところ申し訳ありませんが、少し宜しいでしょうか?」


「あぁ、構わない。」


「ありがとうございます。私は第1区諜報部のレオノーラと申します。」


「……諜報部……ということは貴殿が此度の残党についてセオドア陛下に報告を?」


「はい。」


「ではこれからの計画について、詳しく聞こうか。」



 レオノーラから今後の計画について聞かされた。



 アシュフォード邸宅は貴族街にあるため、周囲より小高い丘にある上に警備も厳重のため、容易には侵入はできない。


 ただ、その中の貴族の中の『サミュエル・ヴェイデン子爵』という者は、その実は皇帝の息のかかった人間だそう。


 ヴェイデン子爵の邸宅内には転移魔法陣が設置されており、有事の際には中と外を繋ぐ役割を果たすそうだ。


 こういった者は他の区にもいるそうで、その存在は第1区の諜報部か、皇帝しか知りえないという。



「……ほう。かなり周到なのだな。」


「過去にはクーデター等、謀反が計画された事もあってか、それにより今の体制を極秘に準備されていたのです。」


「……なるほど……」



 いくら厳重な警備とはいえ、1度中へ入ってしまえば脆い。


 ただし、アシュフォードらの私兵には十分に気をつけねばならない。


 それに、今回こちらで判明している残党以外に、『遠視』の固有魔法持ちが居る可能性もある。


 なるべく屋外に身を晒すことは避けた方がいいだろう。



 その後レオノーラはアシュフォード邸付近の詳細な地図を広げ、侵入経路について詳しく説明がなされた。



「…以上が、アシュフォード邸への侵入経路の説明になります。」


「………よくここまで調べていたものだな。」



 地図には住んでいる住人の名やその数。それだけでなく、時間帯によって人通りの多さなど、かなり詳しい状況まで書き込まれているのをノックスは素直に感嘆した。



「……アシュフォード邸の地下施設について、何か分かっていることはあるか?」


「……そちらについては未だ何も……ですが、施工前の魔石の掘り起こし箇所から、おおよその広さについては推察できます。」



 魔石の掘り起こしとは、ヘイル・ロズには地下からの侵入を防ぐため、地中には感知用の魔石を多数仕込んでいる。


 地下施設を建設するにあたり、その魔石を掘り起こして除去しているらしく、それによりおおよその広さについて推察が出来るらしい。



「……概算ですが、アシュフォード邸よりやや南方にずれる形で………この程度の広さ……かと。」



 レオノーラは地図に地下施設について書き足した。



「……この地下施設からどこかに逃げ道を作っていたりなどは?」


「……それについては分かり兼ねます……」


「……ふむ………」


「簡単な事じゃ。ゲラートとやらを先に片付けてしまえば、他など他愛ない。それに、逃げるのならば転移のスクロールで逃げるなどするじゃろう。」


「……いや、逃げ道があるのなら逆にそちらから地下施設に潜入するのはどうかと考えてな。」


「申し訳ありませんが、そちらについてはまだ調査中でありまして……」


「いや、いいんだ。すまない。」



 その後もレオノーラより潜入ルートについて計画を練った。


 その際に今度はアシュフォード邸の地図を広げた。



 使用人らに気づかれないように潜入するための策を練っていたが、ノックスは『皇帝陛下より強制捜査の令状』があるため、そちらを利用する提案を行った。



「……しかし、ノックス様。それではゲラートに逃げられてしまうのではないでしょうか?」


「それについてだが、『幸運』は常に発動している訳では無いはずだろう。固有魔法なのだから、発動には魔力を消費する。」


「…それは……そうですが……」


「発動に際して『幸運』が(もたら)すものは、『どの選択肢が最善か』を分からせてくれる。」



 例えば、3つの選択肢があるとする。


 1つは逃げ続ける。この選択肢を選んだ場合、その先は永遠に追われ続ける身となる。


 2つ目は戦う。戦力差によっては命を落とす結果にも繋がる。仮に戦闘に勝利したとて、今度は別の者と永遠に戦い続ける。


 3つ目は投降する。他の残党を無力化出来、更にその後は交渉次第では晴れて自由の身を得る事も出来る。


 という選択肢があった場合。



 『幸運』が齎すのは、術者にとって一番有利な選択肢を選んでくれるのだろう。



 それに、今回一番の懸念材料は転生者の面々である。



 ゲラートにはこれらの選択肢を選ぶ状況を作り、投降するのが一番良い選択である状況にする。



「……これが、ゲラートの持つ『幸運』の対処法だろう。」


「………なるほど………確かにその方法なら、ゲラートを無力化する事も可能でしょう。」


「それでも奴が立ち向かってくるのなら、容赦はしない。他の残党についてもだ。」


「心得ております。」


「立ち向かって来た場合は、容赦せず殺して良いのじゃな?」


「あぁ。ただし、ロザリオについてはザリーナに任せる。」


「……任せて……くれ………」



 ザリーナはまだ乗り物酔いから醒めていないながらも答えた。



「…では、ノックス陛下通りの作戦でいきましょう。ブラックウッド統括以下、足並みを揃えた方が良いでしょう。」


「レオノーラ殿、頼めるか?」


「もちろんでございます。詳しくは言えませんが、ヴェイデン子爵のように邸宅を中継地点にしてある場所はいくつか存在しております。

 早速私が各拠点に伝え、日時を決めて決行するよう、手配致します。」


「ありがとう。では任せたぞ。」

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