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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第26章 残党の行く末
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強奪

 あっという間に1週間が過ぎ、ノックスはザリーナ、ノエル、レヴィアを連れてオーウェンの小型飛空艇に乗船し、ブラックウッドと共にヘイル・ロズ帝国へと向かう日を迎えた。



 ノエルとザリーナは、先日のダンジョンでの急激なレベルアップの負荷に関しては2日もすれば無くなり、体もそのレベルに既に慣れているようであった。



「それではローシュ、国は任せたぞ。」


「了解だ。大丈夫かとは思うが、ノックス様も、そしてザリーナ様も十分にお気をつけを。」


「あぁ。」


「ほならノックスさん、そろそろヘイル・ロズへと向かいます!忘れもんはないですかぁ?」


「大丈夫だ。」


「ノックス陛下。この場を借りてもう一度感謝を申し上げます。この度は、私どもの依頼をお受け頂きありがとうございます。」


「礼ならいい。残党を探していたのは我々のほうだ。」


「かたじけない…!」



 プロペラが起動し、飛空艇は離陸を始めた。



 ローシュらはノックスが乗っている飛空艇を、いつまでも見守っていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「すっげぇぇ……一個人が所有する施設とは思わねぇ……」


「ほーんと、すっごいよねぇ。12使徒で貰ってたはした金じゃ、とてもじゃないけどこんな施設なんて作れやしないさ。」



 ノックスらがヘイル・ロズへと向かうより5ヶ月ほど前。


 アシュフォード邸の地下施設にはゲラートたち12使徒の残党と、黄泉がえり組。それに、ヒロキとレイカの姿がそこにあった。



「……にしても、ゲラート様はなぜヘイル・ロズと繋がりが?」


「んー、まあ、ヘイル・ロズというか、アシュフォード伯爵はアズラエル教皇が存命の時から色々とやり取りをしててねぇ。

 それだけじゃなく、俺も元はここの生まれなもんでね。」


「はぇー……」


「……でも、それがなぜまたサントアルバへと?」


「ヘイル・ロズは閉鎖的な国でね。俺とは性に合わなかったのさ。」


「……で、僕らまでここに匿ったってことは、何かまた作れってことです?」


「お、おいリョウヤ!口の利き方に気をつけろよ!」


「ははは。いや、大丈夫さ。リョウヤ君の言う通りだからね。」


「……ま…またイブリースと戦争するつもりですか…?

 ……正直言って、いくらリョウヤの新兵器があったとしても、イブリースに勝てるわけ無いって思いますけど……」


「あら、タクト。珍しく弱気じゃない?」


「いや……だってよ……」


「タクト君の言うように、俺だってあんなバケモノだらけの国……いや、特にノックス陛下とだけは絶対に戦いたくはないねぇ。

 実際、1度だけ相対したけど、彼の強さは想像の範疇を超えてるよ。」


「……それじゃあ、なぜまた新兵器なんかを?」


「いくら俺たちに戦う意思は無いって言っても、ノックス陛下は俺たちを逃がすつもりは無いだろう?

 ならどうする?いつまでもおめおめと逃げ延びる?それとも諦めて捕まって処刑される?」



 ゲラートはやや大袈裟な身振りをしてみせた。



「……悪いけど、それはごめんだねぇ。俺は『自由』が好きなのさ。」


「……ってことは、結局それはイブリースと戦うってことでは?」


「ま、状況によりけりだけどね。」


「……それで……ここに来た残党は我らとお前だけなのか?」



 デュバルがゲラートに確認した。



「いやぁ、他にはロザリオ。ヒロキとレイカもいるよ。それと、ハデスとヨミも。」


「……ほう?……で、彼らは?」


「ハデスとヨミに関しちゃいつもと同じさ。『我関せず』ってね。ロザリオの奴ぁ訓練に勤しんでるよ。」


「……ヒロキとレイカは?」


「……あの2人………特にヒロキのほうがちぃと厄介でねぇ……ノックス国王との戦闘での敗北で、荒れてやがんのさ。」


「……デュバル様はどうすんです?まだイブリースと戦おうってんです?」


「……このまま挑んだとて、敗北は必至だろう。我らの死亡を確認できていないとなれば、残党狩りが行われる可能性は極めて高い。」


「……え……ってこたぁ、ここにずっと居座るってんのも無理なんじゃねぇのか!?」


「ちょっと!コウスケ!」


「だ、だってよぉ?俺ら5人掛かりでも火龍と水龍2人相手で勝てなかったんだぜ!?残党狩りともなりゃあ、サントアルバからの支援も何も無い今、総出で俺たちを捕まえに来るじゃねぇかよ!」


「んまぁ、ヘイル・ロズにはよっぽどのコネが無い限りは入国することすら叶わないさ。その辺はアシュフォード伯爵が上手くやってくれるさ。」


「任せるが良い。……ただ、先日イブリースから使者が訪れてはいた。安心しろ。『そのような者は知らない』と話してある。」


「……それで本当に引き下がってくれんのかよ……?……俺はもうごめんだぜ!?あんなバケモノ連中と戦うなんざ!!」


「コウスケ!いい加減にしなよ!デュバル様の前よ!!」


「ミサ。構わん。コウスケの言う通り、私とてもうイブリースとの戦争など望んでおらん。だが、だからと言ってこのまま投降し、一生檻の中で過ごすつもりも毛頭ない。」


「はいはい。熱〜い議論はそこまでにしなさんな。」



 ゲラートが飄々とした態度でもって間に入った。



「俺だってそうさ。戦争の落とし前を付けろってんなら、そりゃアズラエル教皇が取るべきであって、俺らじゃ無いだろ?

 でも、イブリースがどう判断するかなんて分からない。だから、身を守る手段としてリョウヤに頼ろうってことさ。

 俺だってずっとここに居たいなんて考えちゃいないさ。」


「……おいおい…………ゲラートさんよぉ………?随分と弱腰じゃねぇか……!!」



 ゲラート背後から何者かが悪態を付きながら現れた。



「……ヒロキ……さん………?」



 ヒロキはゲラートの話していた通りかなり荒れている様子であり、やや頬が痩け、目が落窪んでいた。



「…あのクソ野郎から逃げ出すだとぉ……?」


「ヒロキ!!大人しくしてろって言われたじゃない!」



 ヒロキに遅れてミサもそこへと現れた。



「うるせぇ!!俺を差し置いて何の話をしてやがるのかと思って来てみたら……あのクソ野郎からおめおめと逃げる相談だと……?

 ふざけんじゃねぇぞ!!」


「…俺たちが束になったとて、勝てる見込みは0だよ?それなのに……」


「ざけんな!!あのクソ野郎……1度ならず2度も俺の事をぶち殺そうとしやがったんだ!!」


「………だったらテメェ1人でやれよ。」


「………あぁ……!?」



 ヒートアップするヒロキに対し、タクトが立ち上がってヒロキの胸ぐらを掴んで反論した。



「聞こえてねぇのかよ。俺たちゃあ、あんなバケモンと戦って無駄死にするつもりは無ぇんだよ!!一生牢屋暮らしもな!!

 そんなに死に急ぎてぇんなら、テメェでやれ!!」


「………テメェ………」


「ちょっと!!止めなって!!ヒロキさんも!!」


「結局テメェは復讐がしたいだけじゃねぇか!!テメェの復讐に俺らまで巻き込む……ん………」


「……ギャーギャー喚きやがってうるせんだよ……」


「「「「!!!!」」」」


「タクト!!」



 胸ぐらを掴んでいたタクトの背中から、ヒロキの手刀が貫かれ突き出ていた。



「……がっ……!!……テ………テメェ…………!!」


「くだらねぇ戯言ほざいてるテメェなんざ、こっちから願い下げだ!!」



 ヒロキは手刀をやや抜いたが完全には引き抜かず、タクトの体の中をまさぐっていた。



「……おぉ……これだこれだ。じゃあなクソガキ。」



 何かを握りこんだかと思いきや今度は一思いに手を引き抜き、直後にタクトは力無く倒れ込んだ。



「……タ…………タクト……………?」


「……お、おいタクト……嘘だろ………?……お前の固有魔法なら……そんな傷なんてよぉ……?」



 タクトは『超速』と『転嫁』の固有魔法を所有している。


 この内『転嫁』はダメージを他者へと擦り付ける固有魔法であるため、本来ならこの程度の傷ならタクトが死亡するなど有り得ないはずのだ。


 にも関わらず、タクトの傷は一向に癒える気配もなく、ただ虚しく横たわったまま絶命していた。



「……はぁん?………『超速』はどうでもいいとして、『転嫁』とは、こりゃあいい固有魔法じゃねぇか。こんな事なら、とっとと奪っときゃ良かったな。」


「お、おい!!お前!!タクトに何しやがった!!」


「……何……って……俺が貰ってやったんだよ……クソの役にも立たねえコイツより、俺が持っておいた方がいくらかマシだろうよ。」


「……コイツぁいただけないねぇ……こんな時に同士討ちとは……」


「……んだよ……テメェもやるってのか?」


「…い、いい加減にしなさいよ、ヒロキ!!」



 ヒロキの前にレイカが立ち塞がった。



「……どけよレイカ……まだ死にたくは無いだろう…?」


「こんな事してる場合じゃないでしょ!!」


「……うるせぇ………邪魔すんならよぉ………レイカも……」


「………何やら………くだらぬ………話をしている……ようだな………」


「キャハハハハハ!!だーから言ったじゃーん?ヒロキがなんか面白いことしてくれるってー!」



 今度はそこへハデスとヨミまでもが現れた。



 我を忘れ、立ち塞がるレイカを攻撃しようと手に掛けていた剣から手を離した。



「……ヒロキ………我々の目的を……忘れるな………その者らであっても………いないよりはマシだ……」


「えー?なんでー?足でまといになるくらいなら殺しちゃったほうが早くなーい?」


「……ヒロキ……いいな………?」


「…………チッ…………わかったよ。けど、もしも逃げ出そうとすんなら、コイツみたいにサクッと殺しちまうからよぉ?覚えとくんだな。」



 ハデスの制止にヒロキは従い、ハデスらと共にその場を立ち去って行った。



 ヒロキがいなくなったことで、レイカも緊張の糸が解けたのか、腰からドサッと崩れ落ちた。



「……いやはや………こんなことになるなんてねぇ……」



 彼の凶行を止められなかったゲラートが申し訳なさそうに頭を搔いた。



「………なんで………タクトが…………おい、レイカ!!あんたなら何か知ってんだろぉ!!?」



 タクトの死があまりにも唐突に起きたことで、コウスケはレイカに問いただした。



「……私も………まさかこんなことになるなんて………ごめんなさい………」


「謝って済むレベルじゃ無ぇだろ!!……なんで……なんでタクトが………!!」


「………ヒロキの固有魔法のせいよ……」


「「「「……固有魔法………」」」」



「ヒロキの固有魔法は『強奪』。これは、他人から固有魔法を奪う術なの。

 ………そして………奪われた者は…………死ぬ。」

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