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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第26章 残党の行く末
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最終調整

 イブリース王国にはノックス・ベリアル・アルフェウスの3名で自作したダンジョンがある。


 現在ここは一般公開されておらず、イブリース兵であったとしても隊長や副長の許可が無ければ入ることは禁止されている。



 自作したダンジョン内は非常に濃い魔素が滞留しているせいで、現れるモンスターが強い、というのが理由である。


 それだけでなく、ダンジョンそのものが魔物化しており、内部構造が勝手に変化してしまう。


 そのため、内部に入る際には転移スクロールが必須であり、もしも携行していなければ下手をすると一生そこから脱出することができなくなってしまうという危険性を孕んでいた。



 ただ、このダンジョンは自身のレベル上げの為だけに使用されるものではない。


 先日のサンドアルバ連合との戦争において、転移魔法陣にて強制的にこのダンジョンの最下層に送り込むという罠にも使用された。


 実際にその効果は凄まじく、送り込まれた連合軍は誰一人としてダンジョンから生還することが叶わなかった。




 今日はそんなダンジョンの最下層に訪れた者がいる。



 ノックスとザリーナ、そしてノエルである。



 ノックスはこのダンジョンが完成してからも、ストレス発散のためにちょくちょくここへと訪れては、地龍モドキと戦闘していた。


 それにより異常にレベルが跳ね上がっていたのだが。



 3人がここへと訪れた理由は、ヘイル・ロズに向かう前に出来る限り実力を底上げしておきたいとザリーナとノエルが申し出たためだ。



「……やはりここは……空気だけで押し潰されそうなほどだな……」


「ザリーナ様、お気をつけを。」


「……分かっている。が、その……ノエル殿、私に敬称など不要だぞ?」


「そういう訳にはいきません。ザリーナ様は、ノックス様のご伴侶となられたのですから。」


「……むう………未だに様付けは慣れんのでな。」


「2人とも、お喋りはその辺だ。どうやら、こちらに気づいたようだぞ。」



 ノックスの言葉通り、奥から地龍が呻き声を上げて現れた。



「……や……やはり……でかい………」


「さすがに2人だけでは無理だろう。俺も合わせる。」


「了解しました…!!」



 その言葉を皮切りに、早速ノエルが『縮地』にて一瞬で地龍の懐に入り、斬撃を浴びせにかかる。


 だがノエルの繰り出した剣戟は、地龍の硬い鱗により弾かれた。


 それだけでなく、地龍は右手の爪によりノエルを引き裂きにかかる。


 すぐさま『縮地』により距離を取りつつ攻撃を躱したが、服の胸元が地龍の爪によりさっくりと裂かれてしまっていた。



 続けてザリーナが地龍へ向けて何発かの火魔術を浴びせ注意を引きつける。


 地龍の瞳がギロリとザリーナを睨みつけると、地龍は口から火炎を噴射した。


 ザリーナは瞬足を活かして攻撃を躱しつつ、地龍との距離を詰める。


 地龍は尾を振り回してザリーナを払いにかかったが、軽い身のこなしでその攻撃をすいすいと躱し、逆にカウンターにより地龍の尻尾を叩き切った。



「……ふむ………さすがはザリーナ。以前に俺が言っていた相手の力を利用する攻撃について、しっかりと物にしているようだな。」



 と感心するノックスだった。



 ノエルとて負けじと『縮地』を利用し、地龍を翻弄しつつあらゆる角度から剣戟を浴びせる。


 とはいえ自身の力でのみ地龍の鱗を突き破るには、ノエルの力量では不可能に近い。


 だが、地龍とて、全身が硬い鱗で覆われているわけではない。


 硬い鱗の反対側には、比較的柔らかい鱗に覆われているはずである。



 ノエルは地龍の肘や脇など、間接部位に照準を絞って攻撃した。


 断ち切るほどでは無いにしろ、ノエルの斬撃が地龍の肉を切り裂くことには成功した。



 ノエルの『縮地』を利用した動き、ザリーナの剣と魔法による攻撃。


 こららにより地龍は翻弄されているかのように見えていた。



 しかし、地龍が咆哮すると、そのまま身を翻して地中へと潜航した。



「くっ…!!」


「索敵は不可能だ!!足元に備えろ!!」



 ノックスが2人に向けて注意を促す。



 高速で地中を泳ぐ地龍であったが、突如ザリーナの背後から音もなく現れた。


 地龍は大口を開けてザリーナを噛み砕きにかかったが、すんでの所でノックスが地龍の顎を蹴り飛ばした。



 蹴り飛ばされた地龍であったが、ノックスからのダメージはみるみるうちに回復される。


 それと同時に、再度地中へと潜航した。



「…す、すまない……助かった…!」


「礼はいい。それよりもだ!!」


「……あぁ……!!」


「ザリーナ様!俺に合わせてください!!」



 ノエルは何か秘策でもあるのか、と問うよりも先に地龍が再度地中から現れ、今度は高速でノエルに爪で引き裂きにかかった。


 が、ノエルは地龍が現れるより先に『縮地』にて居場所を撹乱させており、地龍の爪は空を斬る。


 攻撃の空振りを確認したノエルは、今度は地龍の胴へと移動し、深々と双剣を突き刺し、直ぐにその場から離れた。


 それを見たザリーナはすぐさま雷魔術を双剣に向けて撃ち、双剣を伝って雷魔術が地龍の体内を駆け巡った。



『…グゥオオオオ……!!!!』



 雷により硬直した地龍は呻き声をあげる。



 ノエルは突き刺さっていた双剣を引き抜き、『縮地』を利用して地龍の体を切り刻む。


 ザリーナは剣に風魔術を纏わせ、より鋭い剣戟となって地龍の体を切り刻む。



 一見すると2人が地龍を翻弄し、このまま倒し切るのでは無いかとも思われた。



 だが、地龍は翼を羽ばたかせると、ノエルもザリーナもその風圧により吹き飛ばされた。



 風圧で動きを抑え込まれている両者に向かって口から火炎を噴射した。



 のしかかる風圧のなかノエルは『縮地』にてザリーナと共に火炎から逃れるも、地龍からはすぐさま追撃が襲いかかる。


 ザリーナは地魔術にて地中からいくつも壁を風よけとして出現させたが、地龍が繰り出す風によりいとも容易く破壊されてしまう。



「ノエル殿、ヤツの攻撃は私の固有魔法で対処する。その間に隙を見て、ヤツの首を!」


「…しかし……貴女はこの国の王妃で……」


「私も1人の戦士だ!」


「……了解しました……!!」



 幾度となく『縮地』で地点移動を繰り返していたが、ノエルはザリーナを置いて1人『縮地』にて移動した。



 1人残されたザリーナを、地龍の目がギロリと睨む。



「……来い……!!」



 地龍が咆哮し、ザリーナへと猛スピードで襲いかかる。



 そして、勢いそのままに、ザリーナへ向けて火炎を噴射した。



 ザリーナは地龍の火炎に巻かれた。


 地龍はそれだけでなく、自身の爪でザリーナへと追撃した。



 地龍の爪攻撃により炎が両断され、その余波は壁に大きな爪痕を残した。



 地龍は続いて『縮地』で逃れていたノエルへと向き直る。



「……どこを見ている……!!」



 火炎ごと両断されたはずのザリーナの声が響き渡る。



 両断されたはずのザリーナの体は既にそこに無く、空中へと身を移していた。



 燃やされ両断されるはずだったザリーナ。


 地龍は完全にザリーナを討ち取ったはずであった。


 いや、ノエルとて確実にザリーナが殺られてしまったと勘違いした。



 ザリーナの固有魔法は『幻惑』。


 これにより、一時的に幻を見せる事ができる固有魔法であった。




 油断していた地龍に向かってザリーナが上空から脳天に剣を深々と突き刺す。



 地龍は痛みで呻き散らしながら首を振ってザリーナを振りほどこうと足掻く。


 そのタイミングを逃すまいと、苦しみもがく地龍を掻い潜りながらノエルが『縮地』で切り刻む。



 ノエルの斬撃は地龍の手や足、翼の腱を断ち切ってゆき、地龍は一時的に無力化された。



 ザリーナは地龍から剣を引き抜き、大地を蹴って力の限り地龍の首元へと剣戟を見舞った。



 だが、地龍の首を断ち切るには至らない。


 そこへノエルも追撃し、両者の剣がズブズブと突き進む。



「……これで………!!」


「………!!!!ザリーナ様!!!!」



 ノエルがザリーナに警告を発する。


 地龍はこの短時間で、ノエルにより断ち切られた腱をすでに復元させ、爪を両者に向けて今まさに突き刺そうとしていた。



 ――間に合わない――



 両者がダメージを覚悟したが、地龍の爪は両者に突き刺さる直前でビタリと動きを止めた。



 割り込んだのは、ノックスだった。



 ノックスは、2人がすでにスタミナと魔力を大きく消耗したのを見越し、砂粒縛により地龍の動きを止めさせたのだ。



「2人がかりとはいえ……さすがだ。が、ここまでだな。」



 ノックスはそう言うなり一瞬姿が消えたかと思いきや、気づいた時には地龍の首が宙を舞っていた。



 地龍はそのまま絶命し、肉体は残滓となってダンジョンに還元されていった。




 直後に2人はドサッと倒れ込んだが、それは疲労のせいだけでは無かった。


 急激なレベルの上昇により、立つことすらままならないようである。




 しばらくの休息によりようやく話ができる程度には回復し、簡単に戦闘の振り返りや反省点などをノックスから聞いていた。



「……それにしても………急激にレベルが上がるとこんなにも目眩がひどいとは………」


「無理もない。俺の見立てではこの地龍、恐らくレベル換算すると2200はあるだろう。『悪魔の口』で戦闘した地龍より遥かに強い。」


「……一応聞いてはおりましたが……ザリーナ様の援護、それに固有魔法が無ければ一瞬で殺されていたでしょう……」



 ノエルとザリーナは、今回の地龍との戦闘によりレベルが跳ね上がり、ノエルは800半ばだったレベルが1000を超え、ザリーナは600ちょっとだったレベルが900弱にまで上昇していた。



「……それにしても………ノックスはあの地龍を頻繁に倒していたのか………」


「書類仕事ばかりしているとどうしても体が鈍るからな。それより、立ち上がれそうか?」


「……な、なんとか……大丈夫です……」



 ノエルはよろめきながらも体を起こしていたが、ザリーナはどうにも力が入らないようで苦戦していた。


 ノックスはザリーナを両腕でひょいと担ぎあげた。



「……な……ち、ちょっと………も、もう少し待ってくれれば……立ち上がれる……かも……だから……!」



 ザリーナは顔を赤らめて抵抗していたが、ノックスはお構い無しにそのまま担ぎあげたまま、3名は転移のスクロールにて地上へと帰還した。

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