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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第25章 結婚式
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両親への挨拶


「……ぞんなぁ……グスッ……ノッグズ様ぁぁ……ヒドイですぅ………」


「……これは夢か………まさかこんな事になるとは………いや、夢だ!!そうだ!そうに決まってる!!」



 宴会が終わったあとも、ナタリアとモズは場を移して酒を飲んでいた。


 モズはしきりに泣きっぱなしであり、ナタリアは現実逃避を行っていた。



「…こんらのぉ!!ずるいですぅ!!あたすらってぇノックスさまのお嫁さんになるんれすぅ!!」


「抜けがけはゆるさんぞモズゥ!こうなりゃあ第2夫人の座をかけてぇ!」



 延々と飲み続けた2人は完全に泥酔し、開き直って飲み明かしていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 一方、ノックスはノアと共にナバルたちと久々に再開し、ドランとフェリス、ホランドも混ざって飲んでいた。



「……それにしてもナバル殿、ザリーナ殿との件、感謝する。」


「ハッハッ!何を仰いますか!それに、ノックス陛下はすでに国王。私なんぞに殿など敬称など不要ですよ。」



 実は、ナバルはノックスと最後に飲み明かした際、ザリーナの後任を育てるべく奮闘してくれており、それにより後任候補が何名か育ったのだ。


 その旨をナバルはノックスに向け手紙を出してくれていた。



「そうは言われても、癖はそうは直らないな…」


「しかしながら、ノックス殿……いや、ノックス陛下もついにザリーナ殿を迎えられるというわけですか。

 最初聞いた時は驚きましたが。」


「ほっふふはは、ほへへほーー!!」


「……フェリス……口に物を入れながら喋るなと何度も言っておるだろうが……!!」


「お祝いに新作ビール作んないとですね!」


「皆には世話になった。本当にありがとう。」


「や、止めてくださいよノックス殿…いや、陛下!!」


「ふふっ。陛下でなく、今まで通りでいい。」



 ノックスはナバルたちと共にいつまでも楽しく飲み明かしていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 日が明け、ザリーナはいつもの時間に目を覚ます。



 毎日同じ部屋から見ていた景色も、今日はどこか少し明るく見えていた。



 昨日、宴会が終わってからの記憶はあまり無かった。



 夢だったのではないか?



 そう思えるほど、ザリーナにとって昨日の出来事は自分にとって都合のいい夢のように思えた。



 しかし、夢にしてはかなり現実感のある夢であることも確かだった。



 未だにあの時を思い出すだけで顔が紅潮し、心臓が高鳴る。



 夢だった。


 そうだ、そうに違いない。



 ザリーナがそう思った時、突如部屋に何者かが入ってきた。



「とーーかつーーーー!!!!おめでとうございますーーー!!!!」


「…ア、アイシャ!!?いきなり入ってくるな!!それに一体なんの……」


「統括がついにノックス陛下と結ばれるって聞いて、いてもたってもいられなくなっちゃいましたー!!」


「……あたしと………ということは……昨日の出来事は夢などでは無く現実………いや、今もまだ私は……」



 ザリーナはまだ自分が夢から目覚めてなどいないのでは無いかと疑い、自分の手の甲を抓った。



 夢ではない。



 そう確信すると、ザリーナは自分の心臓が胸の中で激しく暴れ回っているような感覚に陥った。



 それとともに、ザリーナの目から一筋の涙が頬を伝う。



「…と、統括!!?」


「い、いや、すまない……私自身、夢だったのでは無いかとな……」


「夢なんかじゃありませんよ!!あたしたちのほうでもその話題で持ち切りですし、陛下も張り切ってらっしゃいますよ!!

 それだけじゃなく、住民の方々からも朝から大勢城に詰めかけて、みんな祝福の言葉を掛けてくださってますよ!!」


「…そ、そんな大事になっているのか……」


「……統括……嬉しく無いんですか……?」


「…そんな訳無いだろう……昨日から現実感が無さすぎて…………そうか………私は……ノックス殿と……」


「早くご両親にもお伝えしないとですね!統括、この度はおめでとうございますー!!」



 アイシャは堪らずザリーナに抱きつき、祝福した。



「……あぁ………あぁ……!!……ありがとう……アイシャ……!!」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 それからというもの、ロンメア国内はザリーナとノックスの結婚の話題で持ち切りとなった。



 2人を祝福する幕がそこらじゅうに垂れ下がり、国全体で祝福してくれていた。



 当のノックスとザリーナは、小型飛空艇にてザリーナの故郷、マンデル村へと訪れていた。



 突如空を飛ぶ船が現れて村人らは驚いていたが、降り立ったザリーナを見てホッと胸を撫で下ろす。



「誰かと思えばザリーナじゃねえか!……ってか空飛ぶ船とか……これどうなってんだぁ!!?」


「驚かせてすまんなヒューゴ。ザイールは今日は非番か?」


「あ、あぁ。ってかすげぇな……ロンメア国王、こんな船作ってんだなんてよぉ……」


「これを作ったのはロンメアでは無い。」


「……んえ?」



 ヒューゴがたじろいでいた所へ、ノックスが船から降り立った。



「……ありゃ……?……ノックスさんですかい……?いつぞやの……!!?」


「久しぶりだな。覚えていてくれたとは。」


「覚えるも何も……あの荒くれ者のデュークをぶちのめしたって事で有名人ですから……その後アステル島で国を作ったって事で、知らない人はいませんよ!!」


「それは光栄だな。」


「……き、今日はどういったご要件で……?」


「……私の両親に会いに来たのだ。」


「親御さんにか……ちょうど先日リンクス村から帰ってきたところだよ。

 ……って………まさか………?」



 ヒューゴは何かを察したのか、ザリーナとノックスを交互に見やる。



「帰ってきているのなら早くご挨拶に行こう。」


「…あ、あぁ………すまない。私の両親の事なのに、私が緊張している……」



 足早に両親の元へと急ぐ2人。


 道中色々と声をかけられてはいたが、ザリーナは緊張のせいか聞こえていないようだった。



 実家へと到着すると、モーリスとイェナは麦畑にて畑仕事をしていた。


 そこではデュークもが精力的に手伝っているのが見て取れた。



「…た……ただいま……」


「……ん……おぉ!!ザリーナ!!」


「あらあら!おかえりなさい!」


「……デュークも手伝っていたのか。」


「おうよ!ノックスさんとの約束もあったからなぁ!!」


「約束はリンクス村までの道中の護衛だったと思うが?」


「んおぉ!!?ノックスさん!!?い、いるならいるって言ってくだせぇ!!」


「おや、ノックスさんも!!またウィンディアにでも立ち寄るのかい?」


「いや、今日はそうではなく……」


「まあまあ、立ち話もなんですから、家に入って待ってて頂戴な。」


「……手伝おうか?」


「ハハハ!!大丈夫だザリーナ!まだまだ年寄り扱いされる歳じゃねぇぞ!」



 モーリスは力こぶを見せつけそう言った。



 2人は言われた通り一先ず家の中で待つことにする。



 こうして突如2人っきりとなったザリーナだったが、何を話していいのか何をすればいいのか分からず、実家なのにも関わらずしきりにキョロキョロとしていた。



「…お、お茶でも出そうか?」


「いや、大丈夫だ。」


「……そ、そうか………あ、足は崩してくれて構わんぞ!」


「……ん……あぁ。」



 何を話していいのか分からないのはノックスも同じであった。



 しばらくすると汗を拭きながら両親と共にデュークが帰宅した。



「悪いなぁ、待たせちまってよう。例の冷たいビールのおかげで、ウチもかなり忙しくってなぁ。」


「デュークくんまで手伝ってくれてるおかげで、ウチの畑もまた広くなったからねぇ。」


「へへっ。お安い御用です。」


「……お前が手伝っていたのは正直驚きだな。私が知っている限りだと、お前はいつも毎日ダラダラと過ごしていたというのに。」


「……んまぁ、ノックスさんにぶちのめされてから世界の広さを知っちまったってのもあるけどよう、あのビールの美味さを知っちまったからにゃあ、俺も力になりてぇって思っただけだぜ。」


「ハハハ!!お陰様で王城とも取引はせてもらってっからなあ。」


「この村も随分賑やかになったわねぇ。」


「そ、そうなのか。」


「……んで、話ってのはなんだい?またノックスさんが新しい発明でも思いついたんかい?」


「い、いや、そうでは無くてだな…」


「そういえば今日はノエルさんとアインさんはいらっしゃらないのねぇ。代わりにこんな可愛い猫ちゃんと一緒なんて。」


「……うーむ……猫ちゃんっつうより……どことなくモンスターのような気もするけどなぁ……」


「ミャウ。」


「名はノアです。」


「ミャウ!」


「あらあらノアちゃんって言うの!ふふっ。可愛いわねぇ……可愛いと言えば、ザリーナ、幼い頃に近所にいたシャーリーって子がいたでしょう?あの子もこの前子供が生まれたってねぇ。」


「あんな小さかった子が今ではもう1人の親なんだからなあ。時が経つのは早いもんだ。」


「あなたにもいい人はいないの、ザリーナ?あなた、いつもブスッとした表情しているから男の人も怖くて近付けないのかもしれないわよ…?」


「……い、いや、今日はだな……」


「なあ母さん、いっそのこと、デュークくんに嫁いでもらったらどうだ?」


「……へっ!?お、俺ですかい!?」


「あら!それは良いわねぇ!いつも私たちに良くしてくれて、今じゃこうして畑仕事まで手伝ってくれてるんだし!」


「デュークくんなら腕っ節も悪くない!よし!どうだザリーナ!デュークくんと結婚を!」


「…ち、ちょっと待ってくだせぇ、親っさん……」


「そうよそうよ!デュークくん、ウチのザリーナと結婚したがってたじゃない!」


「ハハハ!!なら決まりだ!!結婚式はやっぱり王城で盛大にだな……」


「父さん!母さん!!」



 勝手にドンドン話が進んでいくのを見かねたザリーナは大声で2人を制した。



「…ちょっと……どうしたの?」


「きょ!今日は!その事について話があってここに来たんだ!!」


「……ん……ってことはザリーナ、ついにデュークくんとってことか!?」


「あらあら!!それならそうと早く言って頂戴な!んもう、母さんったら恥ずかしいじゃない!」


「……へっ……?」


「父さん!母さん!!」


「……な、なんだいザリーナ……?」


「……私はデュークとは結婚はしない。」


「「……え……?」」


「今日はその事でお話にあがりました。突然の訪問で申し訳ありませんが……」



 ノックスが間に入って話した。



「…すでにお見知り置きかと存じますが、改めてまして、私はノックスと申します。

 今日は、御二方に大事な話があり、突然お邪魔させて頂きました。」


「…こ、こりゃどうもご丁寧に……」



 前の時とは違い、かなり丁寧な話しぶりに2人も姿勢を正して改まった。



「私は今、ストール大陸より東に存在するアステル島にて、イブリースという国を作り、僭越ながら、そこで国王をさせて頂いております。

 ご息女とは、ロンメアに初めて訪れた時より大変お世話になりました。」



 ノックスは予め考えておいた言葉を一言一言思い出しながら丁寧に話す。



「ご息女のザリーナさんとは懇意にさせていただき、いずれ私の国が出来た時には、来て欲しいと伝えさせていただいておりました。

 ですが、ザリーナさんにはロンメアには守らねばならぬ王や国民、そして、大切な家族がいるとのことで、私の夢は諦めざるを得ないのかと存じておりました。」



「…ですが、どうしても諦めきれない。そんな私のために、ロンメア王国が一丸となってザリーナさんの後継を育てあげ、ザリーナさんが安心して任せられるよう配慮してくださりました。

 この事に関しては、アルフレッド国王以下、ご協力頂いた皆様に感謝の言葉しかありません。」



「…それで、再度この国に訪れ……」


「ち、ちょっと待ってくれノックスさんよ!!?」


「…ど、どういうこと……!?」



 尚も話し続けようとするノックスを2人が止めた。



「話が長くてあんまりよく分かってないんだが……つまりは……ノックスさんはウチのザリーナをどうしたいんだ…!?」


「……では、簡潔に述べます。」



 ノックスは深呼吸し、改めて両親を見やる。



「……ザリーナさんを、俺にください……!」


「「「…………………………」」」



 ノックスから述べられた簡潔な言葉に面食らったのか、モーリス、イェナ、そしてデュークまで目を丸くしていた。



「………い…………いま…………なんと……………?」


「娘さん、ザリーナさんを、俺にください。」


「………父さん………私たちいま………夢でも見てるのかしら…………?」


「………はっはっはっ………母さん………2人して同じ夢を見れるわけがないだろう…………」


「……ザ、ザリーナは……!?」


「……私は、この方、ノックス殿と共に歩んでいきたい………ノックス殿は強いばかりか、とても優しく、何よりも義理を通す方。」


「……ま、まじか………」



 デュークは、自分が今、歴史が動く瞬間に立ち会っているのだと後から自覚した。



「……やったわ父さん……ついに……ウチの……ザリーナが…………!!」


「………あぁ………あぁ………母さん………ついにウチのザリーナが…………!!」


「………それで、お返事は……?」


「当然!!どうぞですわ!!」


「…いや待った!!!!」



 乗り気だと思っていたモーリスが突如イェナを止めた。



「ど、どうしたのよ父さん!!こんなおめでたい事だって言うのに!!」


「……ノックスさんには一つだけ確認させてくれ……!!」


「はい。」


「わざわざご丁寧に、俺たちの所にこうやって挨拶しに来てくれたことは感謝しか無ぇ。だけど、もしここで俺が、『娘はやれん』と言ったら、アンタは引き下がんのか……!?」



 モーリスの質問に一瞬目を閉じたノックスだったが、すぐに真剣な眼差しでモーリスを見やる。



「…その時は……無理やりにでももらっていきます…!」


「……俺たちが、絶対やれんと言ってもか……?」


「……はい……!」


「…………ザリーナはどうなんだ……?俺らが断った時、ザリーナは?」


「…………それについては父さんが1番よく知っているだろう。私は一度決めたら、誰にも曲げられん性格だと。

 例え父さんや母さんが反対したとしても、私はノックス殿と共に歩んでいく…!」


「…………………」



 モーリスは天井を見上げ、薄らと目を瞑る。



 15になったザリーナが、王国兵の選抜試験を受けると言って聞かなかったことを思い出していた。



「……そうかぁ…………そうだったなぁ…………」



 モーリスは独り言を呟いたかと思うと、目に涙を滲ませた。



「……悪かったなぁ、ノックスさん。試すような事聞いて……」


「……いえ……」


「反対も何も無ぇ!!大大大賛成だ!!!!」



 モーリスは声を張り上げた後、机に手を置いて頭を下げた。



「ノックスさん!!ウチの娘は頑固で、勝ち気で、きかん坊で………だけど、間違った事だけは絶対しない、自慢の娘だ!!

 ………そんな娘を……そんな娘でよければ………宜しく頼みます……!!」


「……ふふっ……父さんったら、頑固も勝ち気もきかん坊も、全部おんなじ意味ですよぉ……

 ノックスさん、私からも、うちの娘を、宜しく頼むわね。」


「ありがとうございます…!」



「……あ………あのザリーナが………本当に……結婚すんのかぁ………」



 少々残念そうな顔をしたデュークだった。

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