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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第24章 イブリース v.s 連合国
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安らぎ

 アズラエルと戦闘していたノックスだったが、突如として足元に魔法陣が現れ、それは即座にノックスを包み込んだ。



 どうやら先程自分を封印させていた術であった。



「貴様はそこで見ている……が………なに………!!?」



 ノックスは即座に『虚空』を発動させ、封印術を消し飛ばした。


 それだけでなく、アズラエルの元へ一瞬で駆け寄り、至近距離から火魔術を浴びせた。



 とてつもない火力がアズラエルを包むが、火が収まると炭化していたハズのアズラエルはみるみるうちに回復する。



「……やはり死なない…か。」


「無駄だ!!貴様の攻撃では私は死なぬ!!」



 再度アズラエルとの戦闘が始まったが、その傍らでノックスはアズラエルの状態について考察する。



 『不死』の肉体とは、どういうことなのか。



 そして、そんな相手をどうやって倒すのか。



 何かを仕掛けようにも、アズラエルは『予知』によりある程度の対策を行っている。



 これを突破するには隙を見るか、もしくは()()()()()()()()()しかない。



 何か決定打があるにせよ、『予知』で無力化されては意味もない。




 なにか方法は無いのか?




 ノックスは思考を加速させ、アズラエルと激しい戦闘を交えながら思考を並列させる。



 その最中、ノックスはアズラエルの不死性について1つの考察に思い当たった。



「……貴様のその『不死』……白龍の力か?」


「貴様なぞに答えてやる義理など無い!!」


「………そうか。」



 戦闘は圧倒的にノックスに軍配が上がっているが、アズラエルの傷はすぐさま癒えてしまう。



「……ならば……『抜魂術』!!」



 ノックスは『抜魂術』でアズラエルの魂を引き抜きにかかる。


 しかし、アズラエルの魂を引き抜くことは叶わず、弾かれてしまう。



「…やはり『暗黒魔術』の類か。それで私の魂を引き抜くつもりだったのか…」


「……相殺していたか。」


「……くく…………はははははは!!!!この私を誰だと思っている……!!悪魔の力を有した私の前には、暗黒魔術など効かん!!この悪魔の力で……貴様もろともこのイブリースを…………!?」



 ノックスはアズラエルの話を聞き終えるでもなく顔目掛け火魔術で消し飛ばした。


 しかし、すぐさま頭部が再生される。



「……忌々しい魔王めが……!!」



 決定打が無いことは互いに同じであった。




 アズラエルは戦闘を交えつつ、魔族を憎む気持ちがありながらも素直にノックスに感心していた。



 【法王】の称号を持つアズラエル。



 この【法王】は、自身の信者が増えれば増えるほど各種ステータスが底上げされるものである。


 ノックスの持つ【魔王】に似た称号である。



 教会の信者は魔王の崇拝者より格段に数も多いはずなのだ。



 それだけでなく、悪魔の力にてパワーアップを図っている。



 にも関わらず、ノックスの実力を上回れずにいた。



 アズラエルは自身の持つ『不死』のせいで、長い年月を生きてきた。



 今では資料でのみ存在している勇魔大戦も、実際に自分の目で見てきた。



 その長い年月の中で、これほどの実力者と相見えたことなど1度もなかった。



 ノックスは、驚くほどの短期間でここまでの強さを手にしたのだ。



 『先祖返り』



 その言葉がアズラエルの脳裏に過ぎる。



 かつて世界を恐怖に陥れた憎き魔王も、『先祖返り』により生まれ持って強大な力を有していたという。



 だがノックスのそれは、『先祖返り』どころではない。



 何十、何百とノックスの攻撃を喰らいながら、アズラエルはノックスの凄まじさを体感し、驚嘆した。



「……何故そこまで魔族を嫌う?」



 戦闘が長引く中、ノックスが突如問いただす。



「…魔族は人族の敵だ。貴様らは、この私から多くのものを奪い取った……」


「それはお互い様だろう。」


「……お互い様だと………?……貴様らの祖先が人族に何をしたのか、知らないとは言わぬな?」


「過去の勇魔大戦か?……知ってはいるが、だからと言って今生きている俺たちを殺していい道理は無い。」


「…貴様らは私から多くを奪った………私の全てをだ!!」


「それは貴様もだ。『奪った』から『滅ぼす』、というのなら、貴様が滅べ。」


「……くく…………はははははははは!!!!」


「……何が可笑しい?」


「この私を滅ぼすことが出来ん貴様が、私を滅ぼすなど、聞くに耐えんわ!!」



 アズラエルは魔力を練り上げ、極大の火魔術をノックスに向け射出する。


 しかし、それは『虚空』により消し飛ばされた。



 それを皮切りに、ノックスとアズラエルは再度激しい攻防が行われた。




 この世界の(ことわり)は、地球のそれとは異なる。



 ノックスは、この地で転生してきてから今までを振り返り、何か有効な手はないかと模索していた。





 ――が、その時。




 ある閃きがノックスの脳裏に過ぎる。




 いや、それが有効なのかどうかすら分からない。



 だが、可能性がある。




 アズラエルから断続的に放たれる魔術により、魔障壁のあちこちが破壊され、そこから漏れた魔術によりノックスの身体が抉られてゆく。



 ノックスはそれに構うことなく魔術を練り上げて発動した。



「砂粒縛・(しぶき)!!」



 ノックスの砂粒縛により、アズラエルの体内から無数の砂の刃が体を切り刻む。



「無駄だ!!この私には効かん!!」


「無論、承知の上だ!!」



 砂粒縛により一瞬攻撃の手が緩んだ所へ、アズラエルに向けて火魔術を射出し、炭化させた。



 だが、すぐさま再生が始まる。



「『砂粒縛・礎』!!」



 ノックスは構わず砂粒縛にてアズラエルの動きを封じさせる。


 とはいえ再生される肉体まで止めることは出来ない。



「……さて、これが効かないのなら打つ手が無いが……」


「……な……なに……を………」



 動けないアズラエルは、ようやく再生された眼球で『予知』を行う。



「……ま……ま…て………や……やめ……ろ……!!」


「その慌てぶりは、どうやら効果的のようだな。」


「……き、きさ…ま………!!……やめ…ろ……!!…か…とうな……まぞ…くめが……!!!!」


「さてアズラエル。最期に、今回のこれらの仕打ちに対し、貴様にはささやかなプレゼントを差し上げよう。

 『不死』の肉体を持つ貴様に『死』の安らぎを。」



 ノックスが魔力を練り上げると、アズラエルの足元に魔法陣が展開された。



 それは、『付与術』用の魔法陣である。



「……や……やめ……ろ………!!!!」



 魔法陣に光が宿り、アズラエルを包み込む。



 砂粒縛に囚われたアズラエルは指ひとつ動かせない。



 付与術からは突如異様な光を発し、禍々しい瘴気が現れた。



 ガラスのように付与術が砕け散ると同時に、ノックスの砂粒縛もが解除され、アズラエルは膝から崩れ落ちた。



 アズラエルは、心臓を抑え苦しみだし、体の穴という穴から血が噴き出す。



「……こ……この私に……付与とは……!!」


「……『付与』は原則、1人につき1つ。これがこの世界の(ことわり)だったな。」


「……『不死』である…この私に……『死』を(もたら)すとは…………!!」


「…………」


「………私は………長く…生きすぎた………………貴様のおかげで………わた……し……は…………マリ……ア……………い……ま………………」



 アズラエルはそのまま事切れた。



 アズラエルの死と共に、イブリース王国内にいた残りのロックゴーレムが音を立てて崩れ落ち、その後、残党兵らを全て排除させた。




 こうして、イブリースとサントアルバ連合との戦争が幕を閉じたのであった。

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