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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第24章 イブリース v.s 連合国
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リミッター

 大地から砂粒縛を足場にしてノックスがアズラエルの元まで駆け上がってくる。



 アズラエルの固有魔法は、ノックスが見抜いた通り『予知』。


 数秒先の未来を見通す能力がある。



 これまでノックスからの攻撃を受ける前から対処できていたのはこの能力のおかげであった。



 『不死』の肉体をも持ち合わせるアズラエルではあるものの、ノックスとは真正面からやり合うべきでは無いと長年の勘が訴える。


 何よりも、先の魔術を一瞬にして消し飛ばした能力について、アズラエルでさえも分からないのだ。



 アズラエルは魔力を練り上げ火魔術を撃って迎撃するが、ノックスは上空に拵えた足場を活用し、躱しながら接近する。



 アズラエルは展開させた魔障壁もろとも、そのまま胴を真っ二つにされる予知が頭に流れ、ノックスの剣戟を寸前で躱すほうへと転換する。


 しかし、その後の予知でもノックスが空振りした剣戟の勢いそのままに体を捻り、縦方向へと真っ二つにする予知が流れ込んだ。


 ならば、と今度は自身の不死性を活かし、斬られながらもノックスにダメージを与えるほうへとシフトさせるも、ノックスは『油断』という文字を持ち合わせていない。


 斬られながら放った魔術はどれも空振りに終わるばかりか、逆に高威力の火魔術で消し炭にされる予知が見えた。



「……チィッ……!!」



 加速させた思考の中、アズラエルが出した答えは、最初の予知通りそのまま胴を真っ二つにされるほうを選ぶ。


 予知で見た通り、上空でアズラエルの胴が両断され、アズラエルはそのまま地上へと落下していく。



 ノックスはアズラエルが『予知』を持っているにも関わらず、あまりにも手応えを感じなかったことに違和感を覚える。



 胴を両断されたアズラエルだったが、落下しながら上半身と下半身がくっつき復元した。



「……なに……?」



 アズラエルが魔力を操作し、元いた場所に展開させていた霧を凝縮させ、氷結させる。


 その無数の極小の氷柱をノックスに向けて集中砲火させた。


 ノックスは咄嗟に魔障壁を展開させたものの、いくつか攻撃を貰い受けてしまう。



 無数の氷柱はノックスの魔障壁に当たって砕け散るが、アズラエルはさらにそれらを操作して再生させ、幾度となくノックスに向けて攻撃させた。



 ノックスは火魔術で氷柱を蒸発させつつ大地へと降り立った。



「……貴様……両断したのになぜ生きている?」


「貴様に答えてやる義理など無い。魔族は全て根絶やしにしてやる…!!」



 アズラエルは次々に魔術をノックスに向けて撃ち、反撃を許さない。


 悪魔の力の影響か、アズラエルの撃つ魔術は少しでも触れれば殺人級の威力であった。



「……この力で……魔族など滅ぼしてくれる!!」



 防戦一方かに見えていたが、ノックスとて反撃にアズラエルの足元からトゲを出現させて反撃を試みている。


 アズラエルは魔障壁を展開するでもなくトゲに串刺しにされるが、傷口は立ち所に塞がってゆく。


 逆にアズラエルが放つ魔術によりノックスの魔障壁には亀裂が生じる。


 『虚空』を用いて魔術を消し飛ばそうにも、断続的に撃ち続けられる魔術のうち1つや2つ飛ばしたとてあまり意味もない。



 アズラエルは『予知』を駆使してノックスの動きを先読みし、的確に魔術を撃ち込んでいた。



 その一方で、アズラエルは魔力を練り上げ、ノックスの足元に封印術を展開させていたのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 一方、ノエルはファウスト、ヨーク、ジョアンと共闘してヴェノムと一体化しているフレイを相手取っていた。



 ヴェノムと一体化したフレイは大きさもさる事ながら、地中からいくつもの触手が突き出ており、本体の周囲には怪しげな鱗粉が舞っている。



「……いいな?作戦通りに。」


「あいよっと。おじさんも、張り切っちゃうとしますか。」


「ジョアン、俺の動きに合わせろとは言わん。お前は好きなように動け。」


「……そのつもりだよ。今となっちゃあたいがアンタに合わせられるわけないしね。」


「……よし………いくぞ!!」



 ノエルの合図と共に、ファウストは早速『透明』となり、姿を(くら)ます。


 さらにノエルとジョアンは互いに『縮地』を利用し、地中から伸びる触手を尽く断ち切っていった。



『目障りですわね…!!』



 フレイが魔力を練り上げると、ヴェノムから大量の花粉が放たれる。



「そうはさせぬ!!」



 ヨークがタイミングを見計らい、そこへ風魔術を放って花粉を散らす。


 だが花粉はヴェノムから尚も放出され続け、散らしたとてすぐに辺りを包み込む。


 さらには強化兵らはヨークに向けて攻撃を仕掛ける。


 ヨークは囲まれないよう動き回りながら強化兵らに魔術を叩き込むが、そちらに気を取られすぎるとヴェノムの花粉が濃度を増す。



 その時であった。



 ヨークを取り囲もうかとしていた強化兵らは、黒い物体が通り過ぎたかと思いきや次々と斬首されていった。



「……な、なんだ……!?」



 ヨークがその物体を確認すると、そこにいたのは猫であった。



「……グルルルル…………」


「こんな時にモンスターだと…!?……いや、しかし……」



 ノアはヨークに襲いかかることはなく、群がる強化兵らの首を次々に狩り取っていった。



「……味方か……!?……なれば心強い!!」



 ヨークは強化兵らをノアに任せ、ヴェノムを包んでいた花粉を散らすために魔力を練り上げる。



「……ゆくぞ!!」



 ヨークの合図と共に強風が巻き起こり、ヴェノムを包んでいた花粉が一瞬で吹き飛んだ。



 その瞬間。



 ノエルは自身のリミッターを外した。




 『縮地』を最大限に活用したノエルはフレイの視界から突如消える。



 『縮地』にて地点移動を断続的に繰り返し、ノエル本来の速度も相まって完全に消失した。



『ギャァァァアアアアアア!!!!』



 ノエルの消失と共に、ヴェノムの身体が縦横無尽に切り刻まれる。


 ヴェノムは抵抗しようと触手を振り乱すものの、突き出た触手は即座に断ち切られていった。



 ジョアンも同じくノエルと共に『縮地』で攻撃を合わせ、ヴェノムの巨体を切り刻んでいった。



『……おのれ……おのれおのれおのれぇぇぇえええ!!!!』



 ヴェノムの注意が2人に向いた所で、背後から忍び寄っていたファウストが、ヴェノムの幹から露出していたフレイにナイフを突き刺した。



『ギャァァァアアアアアア!!!!』



 ヴェノムは触手でファウストを払い除けた。


 しかし、ファウストの突き刺したナイフはフレイの背中にズブリと突き刺さっており、痛みでのたうち回っている。



 ヴェノムは最期の抵抗にと無数の触手を出現させ、花粉を撒き散らしながら暴れ回る。



 ノエルは無数の触手の動きを目で的確に捉え、脳内で即座にヴェノムまでのルートを計算する。



 計算が終わり、ノエルが再度『縮地』でもってヴェノムへトドメを刺しにかかる。



 それにドンピシャのタイミングでヨークが風魔術を行使し、ヴェノムの花粉を散らした。



「……終わりだ……!!」



 ノエルは『縮地』で触手を躱しながら、最後は凄まじい速度でヴェノムの中にいるフレイごと剣戟を浴びせ、袈裟斬りにせしめた。



『……き……教皇様ァァァァァァァ……!!!!』



 断ち切られたフレイは断末魔をあげ、半身がドサッと転げ落ちた。


 残されたヴェノムはフレイの死と共に枯れてゆく。



 それを見送った一同は疲労とダメージによりドサッと腰から崩れ落ちた。

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