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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第24章 イブリース v.s 連合国
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触れてはならなぬ鱗

 リームスが放った浄化魔術をモロに受けたフィオナ。



 ボロボロと、自身を形成していた骨が崩れ、魂が抜け落ちていく。



「……フィオナ……ちゃん……!!」



 フィオナが倒れ込むその時、何者かがそっと優しく倒れゆくフィオナを抱き抱えた。



 フィオナはその者の腕に抱かれ、魂が抜け落ちてゆく中で、今自分を抱き抱えている者へと必死に想いを、感謝を述べた。



 ……例えそれが、伝わらなくとも……




 ――あぁ………ノックス様………どうか、そのような悲しいお顔はなされないでください………



 私の、大好きな王子様。



 貴方は、こんな私にですらお優しい御方でした。




 リッチにアンデッドとして囚われ何百年。



 『来世では幸せを』と願った私にリッチが齎したものは、深い深い絶望でした。



 ………醜く腐ってゆく自分の姿………



 死にたいと何度も願いました。



 こんな姿に変えられた私を救ってくださったのは……小さな………それはとても小さな王子様でした。



 貴方様は、骨だけとなってしまったこんな私にもお優しく、何よりも、『人』として……いいえ、それ以上に、『仲間』として扱ってくださいました。



 誰がなんと言おうとも、貴方様はこの私を解放してくれた救世主様なのです……



 白馬に跨る貴方様は、まさに私の理想とする王子様そのものでした。




 ……出来ることなら……




 …………出来ることなら……………




 ……貴方様と共に………生きたかった…………




 ……スケルトンとしてではなく……1人の女として……




 ……あぁ………ノックス様…………




 ………心より………お慕い申しあげます………




 ……わた……くし……は………………




 …………みじ……かい………あいだ………でしたが…………




 …………とても…………し……あわ……せ………で……し………………………




 フィオナは、ノックスの(かいな)に抱かれ、崩れ去っていった。



 フィオナの最期の想いがノックスに伝わったのかは分からない。



 だが、ノックスは、遺されたフィオナのドレスをギュッと抱きしめた。




「……馬鹿な………いい、一体どうやってあの封印術から抜け出したと言うのです……!?」



 リームスは解除不可能のはずの封印術が解かれた事に狼狽えていた。



 だが、ノックスにとってそんな事などどうでもよかった。




 ノックスの中で、何かが切れる音がした。




 それとともに、ノックスが身につけていた『抑制』の付与宝石が、バキンと音を立てて砕け散った。




「……お……おにい……ちゃん………?」



 ノックスは横たわるルナとシャロンに回復魔術を施す。


 それにより、シャロンの腕が再生した。



「「「「ノックス様!!!!」」」」



 ちょうどそこへナタリア達が到着した。



 惨状を見たナタリア達は、とんでもない事態が起きたことに改めて絶句する。



「……お前たちは……ルナとシャロン、アイザックを頼む。ルナたちは避難していろ。」


「……ノ……ノックス様………」


「……お兄ちゃん………フィオナちゃんは…………」


「………あぁ…………だが今はまず……………他にやらねばならん事がある。」


「………う……うん…………」


「……き……貴様ァァ!!!!」



 ナタリアが薙刀を構えリームスに飛び掛ろうとしていたが、ノックスはそれを静かに手で制した。


 ノックスは狼狽えるリームスに目もくれず、地中からのトゲに串刺しにされているアイザックの元へと歩み、トゲを破壊してアイザックを救出する。



 辛うじてまだ息があるのを確認したノックスは、すぐさま回復を施して横たわらせた。



「……ふ……ふふ………当初の予定とは随分と異なりますねぇ……残念ですが、これは私の手に負え…………!!!?」


「もう喋らなくて結構。」



 退散しようとしたリームスだったが、既にノックスの砂粒縛に囚われ、指先一つ動かすことが出来なかった。



「……ノックス様……」


「ナタリア、手分けしてルナとシャロン、アイザックを頼む。手の空いた者は、国内に群がる敵兵を根絶やしにしろ。

 手加減は要らん。

 ……全て………全て、血祭りに上げろ……!!」


「「「「…り、了解です……!!」」」」


「……さて、リームス。貴様には、この世のどんな地獄よりも恐ろしい罰を与えてやる……心して味わえ……!!」



 ノックスの眼光がギラりとリームスを睨めつけた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 レヴィアの奥義を受けた5人の出血量も凄まじく、すでに貧血気味の様相である。



「……待っておれ姉上………後はワシが………!!」



 レヴィアに変わってベリアルが5人を相手にしようと構えた刹那。



 ベリアルは………



 いや、ベリアルだけでなく、このイブリース王国にいた全員に激しい悪寒が襲う。



 それはまるで、氷のように冷たい手で、心臓を鷲掴みにされているような。




 ベリアルは、この悪寒の正体には身に覚えがあったが、それとは比べ物にならないものを感じ取っていた。




「……な………なんだ…………?」


「………どこから…………?」


「………ハハ…………ガハハ…………」


「……あん……?……なに笑ってやがんだ……?」



 ベリアルは、声こそ笑いはしたものの、目は笑ってなどおらず、冷や汗を滝のように流していた。



「……貴様らは……もうおしまいじゃ………」


「……何言って………」


「………貴様らは…………触れてしもうたんじゃ…」


「……さっきから何言ってんだ!!」


「……そうよ。それに、触れたって、何に………?」


「……貴様らは……決して触れてはならぬ鱗に触れてしもうたんじゃ………八龍であるこのワシですら恐怖で体が動かぬわ………」


「……あん……?……触れてはならぬ鱗だと………?」


「……ベリアルよ………まさかこの気配は………」


「そうじゃ姉上………ノックスじゃ………教会は、ノックスの逆鱗に触れてしもうたようじゃ……!」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ヴェノムと一体化したフレイであったが、そこに居た者らもノックスの気配を感じ取る。



 何度かノックスの驚異的な気配を近くで感じた事のあるノエルですら、今回のそれは只事では無かった。



「………は…………はははは……………」



 キリトは力無く笑う。



「……ど………どうやら…………ノックス様は………お怒りのようだ…………フレイ、お前はもう……お終いだ……………」


『……何を世迷言を……!!あの男ならば、必ずアズラエル教皇が!!』


「……お終いだよ…………俺と同じく……地獄行きさ………ははは…!」


『……黙れ………黙れ黙れ黙れぇぇぇぇえええ!!!!』



 ヴェノムから一斉に触手がキリトへと襲いかかる。


 すぐさまノエルが何本かの触手を斬り飛ばしたが、何本かの触手によってキリトは貫かれてしまった。



「……ガハッ………!!」


「キリト!!!!」


「………ノエ………ル…………頼む………………リー……ネを…………ま……も……………」


「……キリト……?……キリト……!!」



 キリトは最期にそう言い残し、力無く絶命した。



『あははははは!!裏切り者に相応しい最期であったようですわねぇ!!さて、次はお前たちの……!?』



 フレイが続いて何かを言いかけたが、ノエルは『縮地』を利用して一瞬にしていくつもの触手を切り飛ばした。



「……ノックス様がお怒りだが…………それは俺とて同じこと………フレイ、貴様は俺の手で完全に始末してやる……!!」


『……小癪な……!!』


「ジョアン、近くの触手と小さい方のヴェノムは任せる。ヨークは花粉を散らしてくれ。」


「「……了解……!!」」


「ファウストは透明化して奴の背後に回り込め。ただし、俺の射線上には入るな。」


「……んん〜……これほど巨大化した相手でも怯む事なく立ち向かうとはねぇぇ。」



 ファウストは頭をボリボリと掻いた後、すでに亡骸となったキリトを見つめて表情を改めた。



「……んまぁ、おじさんも頑張るとしますかね。」

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