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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第24章 イブリース v.s 連合国
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無情

 給仕室に1人残ったノエルは、罠として仕掛けられていた転移魔法陣を調べていた。



「……こんな所に転移魔法陣を敷けるとすれば、それは間違いなく内部の人間………

 ……裏切り者か………もしくはスパイ………」



 ノエルは即座に分析を行う。



 王城内に立ち入れる者と考えれば数はかなり絞られる。


 怪しいとすれば、元々教会員として在籍していたマイナ達の誰かか。もしくは衰弱病で囚われていた者か。


 もしくは、王国兵として選抜された誰かか。



 術式を見た時、妙な違和感が感じられた。



 なぜならば、この魔法陣はルナを転位させるためだけのものではなく、ノックス様をも巻き込む形で発動されている。


 誰かが足を踏み入れた瞬間発動するのならば、目的の人物を転位させることなど奇跡と言える。


 この魔法陣は、『ノックス様、ルナ様の両方を転位させる為に敷かれており、タイミングを見計らって魔法陣を発動させた。』



 そこに居合わせたのは、ノックス様とルナ様。それとシャロン。更にルナ様の護衛としてアイザック……か………

 ここに遅れて到着した者は俺を含め、アイン、ナタリア、リドル、マイナ、ハイゼル。



 ………だが、俺たちがこの部屋に踏み込んだ時にはすでに魔法陣は発動していた…………ふむ…………



 無論、魔法陣はここだけに仕掛けられているはずは無い。



 そもそも、これほどの仕掛けを使用人らもいる中でこっそりと仕掛けることができるだうか。



 もしそれが可能ならば、ヨハンナのような『透明』を使用しなければならない。


 が、ヨハンナは第2部隊配属となってからは国外への情報収集に忙しく、王城にいることの方が少ない。



 ………となれば…………




 ノエルはそこまで考えた後、スっと立ち上がり、導き出した答えを確認するためにある人物の元へと駆け出して行った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ロックゴーレムの巨体に踏み潰されたベリアルであったが、力に任せてロックゴーレムの足を受け止めていた。


 タクトに貫かれた腹の刺し傷から血が溢れ出す。



「……ぐぐっ…………こんな…もの………!!」



 ベリアルは魔力を練り上げてゴーレムの足を焼き払おうかとした時、コウスケがニヤリと笑みを浮かべてベリアルに10センチ大のボールのようなものを投げ込んだ。


 と同時にコウスケ含めデュバル達は黒い布を全身に覆う。



 ボールからカチッと機械音がしたかと思うと、青白い閃光が放たれた。



 紛れもない。


 アポカリプス照射時に発せられたあの光と同じ色の閃光である。



 ベリアルはすぐさま魔障壁を展開させたものの、無情にも右腕が魔障壁の範囲に間に合わず、一瞬にして何倍も膨れ上がったかと思いきや、ベリアルの右腕は爆散した。



「………ぐっ…………!!!!」



 右腕だけでなくベリアルの身体にはいくつか水膨れのような火傷のあとが幾つか散見される。



「……うひょーーー、あれ喰らってまだ生きてるとかしぶといねぇーー!!」


「……ふむ………どうやら魔障壁により防いだものと思われるな。しかしながら、いくら魔障壁と言えども放射線が全く通らなかった訳でも無さそうだ。」



 リョウヤはベリアルの身体に見られる火傷について冷静に分析していた。



「………お主ら…………もう、骨も残さぬ………!!!!」



 激高したベリアルの目が怪しく光り、体内の魔力を練り上げ龍形態へと変身しようとした。



 しかし、残念ながらそれは何者かによって阻まれた。



「ベリアル、控えよ!!」


「……あ………姉上………!?」



 レヴィアはゴーレムを一瞥し、水と土の魔術を混合させて泥の魔術をゴーレムの関節部へと纏わせた。


 それにより巨大なゴーレムを支えていた関節部が滑り、崩れ落ちた。



 ゴーレムは尚も再生しようとはするが、まとわりついた泥のせいで上手く再生出来ずに転げ回る。



「……あ……姉上、来てくれたの………ぶっ!!」



 レヴィアが援護に来てくれ、ゴーレムの巨体を受け止めていた所から開放されたことで多少の冷静さを取り戻したベリアルだったが、レヴィアから強烈な蹴りがベリアルの腹に貰い受けて悶絶した。



「……な……何をするんじゃ……姉上………」


「この愚か者め!!敵の攻撃に頭に血を昇らせたばかりか、このイブリースをも消し飛ばすつもりか!!」


「……ぐっ…………」


「あまつさえ敵の攻撃を良いように受けてばかりで反撃も対処も碌に行えんとは……この単細胞め!」


「……あ…姉上……何もそこまで言わなくとも……」


「あれ〜?誰か援護に来たと思ったけど、仲間割れ?んま、どっちだっていいけどさ。っつぅか、めちゃくちゃ美人じゃん!」


「気をつけろ。火龍が『姉上』と呼んでいるということは、八龍の可能性が高い。」


「…はぁぁ……一体何匹八龍いるんだっつぅの。」


「いつまでかがみ込んでおる。さっさと立て!この愚図め!!」


「……ひ……ひどい言われようじゃ………しかしながら姉上、この者ら、決して弱くなどないぞ……」


「そんなもの、貴様のような愚か者に言われずとも分かっておるわ。」



 レヴィアは改めてデュバルたち5人を睨みつけ、戦闘態勢へと移行させた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 コリンたちは海岸線から次々になだれ込んでくる兵らを相手に、ラインハルトらと共闘していた。



 兵となって2年目とはいえ、まだ実戦経験などないコリンらではあったものの、なんとか踏ん張っていた。



 時折ゴーレムから降り掛かってくる攻撃に気をつけながら、戦闘する。



「はぁ………はぁ…………数だけは多い………!」


「油断しないでコリン!!」


「こんんの野郎がぁぁああ!!!!」



 コンラッドは特に人一倍張り切って戦闘していた。



 ジーナとの魔術の連携には磨きがかかっており、後方からはフェリックスが狙撃銃にて敵兵の脳天を撃ち抜いてゆく。



「……僕らも、負けてられないな!!行くぞアテナ!!」


「もちろんよ!!」


「ち、ちちちち、ちょっとその、あ、あああ諦めてくださいよぉぉ!!」



 海岸線からは妙にオドオドとした男が現れ、コリンたちに投降するよう呼びかけた。



「……なんだよアイツ……諦めるわけ無いだろうが!!」


「あ、あああああなた達に、か、かか、勝ち目なんて無いんですよぉぉ!」


「……ふざけたことを………!!」



 コンラッドがそのおどけた男に駆け寄って斬り掛かろうとした時、突然コンラッドの腕が切り飛ばされた。



「………!!!?」



 コンラッドの血飛沫が何も無いハズの空中にかかる。



「……気をつけろ!!『透明』持ちだ!!」


「…このっ……!!」



 コンラッドが警告し、続いてジーナがコンラッドの血の跡目掛けて火魔術を放つ。



 火魔術は回避されたのか、着弾こそしなかったが、その後にスーッと男が現れた。



「……任務開始。」


「や、やや、やっぱり、そうするしか、な、なな無いんですよねぇぇ……はぁぁ………」



 そこに居たのは、かつてリームスと同行してウィンディアに潜入していたクーロとモーロックであった。



 コンラッドはジーナに回復魔術を施してもらい、止血させた。



「コンラッド、大丈夫!!?」


「チィッ……迂闊だったぜ……」


「反省は後よ!!コリン!!」


「分かってるさ…!!」



 コリンらはクーロとモーロックを睨みつけ、気を引き締めて戦闘態勢へと移行した。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 空中に漂うアズラエルが手を翳し、イブリース城目掛けていくつもの光弾を射出する。



 その破壊力は凄まじく、近くの森に当たると爆煙を巻き上げ破壊する。


 しかし、城に着弾したものは爆煙をあげても傷1つ付いた様子は無かった。



「……小賢しい魔族め……リームス、私はこれからイブリース城を落とし、この国の国民共を根絶やしにする。

 この場は貴様に預けるぞ。」


「かしこまりました。」



 そう言い残してアズラエルはイブリース城へと向けて飛び立っていった。



「さあて……私もそろそろ行動に移しましょうか……ふふふ………」



 リームスは囚われたノックスを見つめて不敵に笑みを零しつつ、続いて死に体となっているルナとシャロンを見やる。


 シャロンは血を失いすぎて意識を失ってしまっていた。



「おやおや、もう死にそうですねぇ……ふふふ………私は教皇とは違って魔族に何の恨みもありませんから、今楽にして差し上げましょう。」



 リームスが魔力を練り上げ氷柱を出現させ、狙いをルナとシャロンに合わせた。



 だが、氷柱が2人に直撃する瞬間、何者かが横から割り込んで氷柱を身体で受け止めた。



「……おやおや?…スケルトンですか……身を呈して2人を守るとは、随分と調教なされたようで……」



 現れたのは、フィオナだった。



 フィオナは刺さっている氷柱を引き抜き、すぐさまルナとシャロンに回復魔術を行う。



 とは言え、スケルトンでもあるフィオナにとって、回復魔術は自身に対しては猛毒と同じ。


 回復魔術を行うフィオナの指先が砂のように崩れていく。



「………フィ……オナ…ちゃん………だめ…………そんなこと……したら………貴女が…………」



 フィオナはフルフルと首を横に振りつつ、回復魔術を止めようとはしなかった。



「……ふふふ………スケルトンともあろう者が、自身のダメージも顧みずに回復魔術とは恐れ入りますねぇ………

 しかしながら、全て無駄なことですよ。」



 リームスが杖を掲げ、浄化魔術でフィオナを攻撃する。


 フィオナは避ける事もせず、ルナとシャロンの回復に努め、ボロボロと崩れ落ちる自分の体の事など気にもとめない。



「……やめて………フィオナちゃん……逃げて……!」


「中々にしぶといようですねぇ。さすがは魔王の配下だけはありますねぇ。」



 リームスは魔力を練り上げ、さらに威力の強い浄化魔術を準備する。



「どれだけ粘ったとて、結果は同じですよ……ふふふ………これで、お終いです……!!」


「……だめ…………だめ……………だめぇぇぇぇええええ!!!!」



 ルナの叫びも虚しく、リームスの浄化魔術が無情にもフィオナに直撃した。

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