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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第2章 ロンメア王国
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この世界で初めての会話

「…なんと……すさまじい……」


「す…すごい……」


「あれだけのハウンドを一瞬で……」


 衛兵達は皆驚愕していた。格の違いをまざまざと見せつけられた。



「…さて、聞きたいことがある。ノースという男を知っているか?」


 ノックスは衛兵達を意に介さずに質問した。


「え、ノース…ですか…?」


「知っているのか?」


「いや、聞いたことはない…お前たちはどうだ?」


「いや…」


「知らないです。」


「そうか…ならいい。」



 ノックスはそれ以上何も聞かずに立ち去ろうと踵を返そうとした。が

「あ、あの、待たれよ!」

 衛兵のリーダーがすぐさま引き止める。


「この度は助けていただき有難く存じ上げます。貴殿の助けが無ければ我々は全滅しておりました。」


「礼には及ばない。」


「いえ、謙遜なさらずとも。申し遅れました、私はロンメア国軍第3支部に所属しております中隊長のナバル・ドレアムと申します。」


「…ノックスだ。」



 ノックスは考えた。


(このままこの男にロンメア国に案内してもらえるだろうか?

 このままルナやノースを探すなら人族の街で情報収集のために過ごすことになるだろうし金もいる。

 ロンメアがどう言う国かはまだ不明だが。)



「…ロンメア王国はこちらの方向か?」


 ノックスは自分が来た方とは違う方を指さした。


「ええ、そうですが。我々も1度報告に参らねばと思いますので、良ければご一緒致しますか?」



(あとはもしも出自など聞かれた場合だが…素直に『悪魔の口』から出てきたなどと言えば騒ぎになる、か。

 ルナの安全を確保するまではなるべく控えるべきだな。といっても俺はこの世界の地理が全く分からん。)



「…あ、あの…?」


ナバルに話しかけられハッと我に返る。


「すまない、考え事をしていて。」


「あ、あぁ。いえいえ。それではさっそく王国へと案内致します。」


「分かった。」




 それから各衛兵達を紹介していった。


 とりあえずノックスは自分から話すことは辞めておいた。


 13年振りの他者との会話に、少しながらの不安と警戒をしたためでもある。



 ハウンド達の亡骸から魔石を回収する。



 衛兵達に魔石をいくつか分けようとしたところ、

「それには及びません。これらの魔石は貴殿が全て持って行ってください。」

 と丁重に断られた。



 魔石は大なり小なり全ての魔物の体内にある。


 ハウンドであれば小石程度の魔石だが、ヘルハウンドの魔石だけサイズがテニスボールほどの大きさであった。


 魔石は大きさと純度がものを言うのだという。


 ノックスはあまりその用途を使いこなしているわけではなかった。

 彼はせいぜい魔石を元に罠を設置する程度であったが、あまりに高レベルの彼が使用すると魔石は一瞬で砕け散ってしまっていた。

 だが『悪魔の口』では大いに活躍した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「貴殿はさぞかし、名のある御方なのでしょう。」


 ロンメアに向かう道中、ナバルはノックスに話しかけてきた。


「いえ、無粋な詮索は致しません。しかしながらハウンドを切り伏せた剣技、その後の魔法…。恥ずかしながら我々は足元にも及びませぬ。」


 他者と会話するのも13年振りなのだが、褒められた記憶はさらに古い。


 ノックスも『悪魔の口』にてハウンドの群れに危うく殺されかけたことがある。


「ハウンドは俺も昔手を焼いた…奴らは群れで狩りをするが故に、死角からの攻撃や手薄な場所から攻めてくる。」


「えぇ、我々も理解はしていたのですが…それにあの速度。」


「あ、あの…」


 ノックスとナバルの会話に魔道士と見られる女性が話しかけてきた。


「あ!す、すいません!あの…最後の魔法なんですけど!!」


 彼女の名は確かフェリスだったか。


「まったく詠唱をしていなかったように見えまして…まさかノックス様は無詠唱で魔術を…?」


「あぁ、独学で魔法を学んだので逆に詠唱法を知らないだけだ。」



周りがザワつく。



「無詠唱魔術……」


「初めて見た……」


 など様々な反応を見せる。



 するとフェリスはノックスに顔を近づけ

「あの!不躾でなければぜひ修練方法を教えてくださいませんか!!お礼はなんでも致します!!」

 と迫ってきた。


「おいフェリス!失礼だろう!すみませぬノックス殿。彼女は魔導師の中でもとりわけオタク気質なもので…」


「い、いえ。」


 フェリスはナバルに首根っこを捕まれて諌められシュンとなった。



「…俺のやり方は、魔力が体内に流れているのを感じ取り、あとはイメージでもって魔法を具現化してるだけだ。」


「……!!ほ、本当にそれだけなんですか…?」


「あぁ。最初はまったく発動はしなかったが訓練を重ねて形になった。」


「ノックス様、ありがとうございます!!」


 と彼女は直角にお辞儀をした。


 続いて

「頑張って私も無詠唱魔術を特訓してみます!!」

 と鼻息を荒くした。


 その様子にナバルは額に手を当ててやれやれといった表情を浮かべた。



 この一連のやり取りで一行は少しだけ緊張がほぐれたのであった。



 ノックスはやはり根は前世のままであった。

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