返り討ち
教会本部の地下へと急いでいたレヴィアたちは、道を塞ぐ衛兵らをなぎ倒しながら地下牢を探す。
地下には堅牢な扉があり、通常では破壊することすらままならないほど頑丈な扉であったが、レヴィアのウォータージェットにより扉を切り刻む。
扉の先には地下牢が現れ、看守らはすぐさま攻撃を仕掛けるもレヴィアたちに敵うはずもなく一瞬で無力化された。
地下牢には数多くの収容者がいた。
奥から次々に看守が現れ、一行の前に立ち塞がる。
「邪魔をするでないわ!!」
レヴィアが水球を出現させ、ウォータージェットにより看守らを一瞬にして真っ二つにする。
討ち損ねた看守にはベリアルが飛び出して行き、炎の槍を出現させて次々と薙ぎ払っていった。
一行はそのままさらに地下へと続く階段を降りてゆき、囚われているであろう白龍の救出へと地下牢の最深部へと向かっていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ははは!センパーイ、どうです?俺らのコンビネーション。やっぱレイカには俺がお似合いだったってワケですね!」
「いきなりあたしらを拉致してきてさ。それにしても、あんたみたいな奴が国王名乗っちゃうなんてホント笑っちゃうわ。」
「『のっくすさまー!』ってさ。ははは!!さぞいい気分だったろうね。」
「あんまり笑うと悪いわよヒロキ。レベル2000だか、それだけでホイホイとついて行っちゃう馬鹿しかいない、所詮は猿山のボスよ。」
「俺TUEEEE!!って思ってたってわけっしょ。それで妹?助け出せて良かったですよね。ま、それも無駄なんですけど。」
「今頃はあんたの国、エライ事になってるでしょうし。」
「……何だと……?」
「教皇がここに居ないのはさ、先輩がこの国にしたように、教皇も先輩の国に攻め入ってるからですよ。今頃はもうイブリース国に各国から寄せ集めた軍隊が攻め込んでるかなぁ。」
「…………」
「何とか言ったらどうです?先輩はまたしても奪われる側なんですよ?はは!!また俺らを拉致ります?ははははは!!」
「…………………」
「格好付けようとして、ホント無様。ヒロキを選んだあたしは間違えて無かったってわけ。」
「ねぇ?何か言ったらどうですセンパーイ?もしかして泣いちゃったりしてますかー?」
「………らん………」
「……え?…何か言いました?」
「くだらん。」
「はあ?何がくだらないんですかねぇ?」
「お前らの戯れ言だ。」
「……戯れ言……?……この期に及んで、戯れ言なんて言えちゃうなんて、もしかして俺らが先輩を殺さないとか思ってます?」
「あたしらの良いように弄ばれてるだけなのに、もしかして頭でもイカレちゃったのかしら。」
ノックスは傷ついた体を起こし、スっと立ち上がる。
「あれ?まだやれるんですね。ま、別にいいんですけど。」
「知ってると思うけど、あんたの魔術はぜーんぶ『吸収』して無効化するわよ。もうあんたに勝ち目は無いわ。」
「あ、もしかして地下に行った仲間らにでも助け求めます?言っておきますけど、地下組はヤバいですよ?」
「12使徒の中でも最強と名高いハデス様がいらっしゃるのよ。それと、ヨミ様もね。つまり、ノコノコとこんな所へ現れた時点で、あんた達の負けってわけ。」
「もしかして、今こうして俺らに負けかけてるのも演技のつもりだったりします?ははは!」
「……さっきから聞いていると、ベラベラとよく喋る。」
立ち上がったノックスが動き始めようとした時、動きを封じるべくノックスの影を操作して斬り掛かる。
影からの攻撃を避けつつ、光魔術で影を消失させようにもすぐさまレイカが『吸収』を行い魔術を封じた。
「だから、無駄だってば!諦めが悪いですよ先輩!!」
ノックスは『吸収』されながらも気にせずに魔術をどんどん使用する。
その度にレイカは『吸収』を行い、水の鏃で動きも封じる。
そこに集中しているとヒロキから剣戟が飛んでくる。
2人は長年こうして連携を極め、相手に何もさせないまま倒す訓練をしていたようで、洗練されていた。
だが、ノックスとてやられっぱなしという訳では無かった。
ノックスは膨大な魔力を練り上げたかと思うと、不敵にニヤリと笑った。
「『吸収』しなければ死ぬぞ。」
ノックスはとてつもない火力の火魔術をレイカに向けて放つ。
その火力は凄まじく、近くにあった木製の椅子などは熱気だけで炭化する。
「このっ!!」
レイカは『吸収』を使用しノックスの火魔術を無効化させようとするも、とてもじゃないが間に合わない。
「聞いてもいないことをベラベラ喋ってくれたおかげで、アズラエルが何処にいるのかは分かった。
感謝の印に、いい事を2つ教えてやる。」
ノックスはそう言うと最大速度でヒロキに迫る。
ヒロキは咄嗟に反撃を試みるが、ノックスの素早さに影の攻撃が追いつかない。
「……なっ……!!」
ノックスは最大速度のままヒロキの横っ腹をなぎ払い、最後の足掻きと魔障壁を展開させたものの、魔障壁ごと横っ腹を両断する。
ノックスはそんなヒロキに目もくれず、そのままの速度でレイカへと襲いかかり、レイカもヒロキと同じく、胴を両断された。
「……こ………こんな事って………!!」
「ば……馬鹿な………なんで先輩の動きが………こ、こんなの……ステータスに無いのに………!!」
刀を納刀したノックスは、2人に告げる。
「その『吸収』を使用している間は、ヒロキの魔術をも吸収してしまう。それに、大きい魔術を吸収するなら時間がかかる。これが1つ目のお前らの弱点だ。
それともう1つ。
俺は2年前のステータスより更に力をつけている。お前らはリームスが得た情報で俺のステータスを知ったんだろうが、あの頃より遥かに力をつけている。」
「……な………そ、そんな…………」
「……けて…………たす………けて…………」
「さて、お喋りは終わりだ。死ね。」
ノックスが再度刀を抜き、死に体の2人にトドメを刺そうとしたが、どこからともなく現れた謎の男が現れた。
「おーっと、ちょい待ち。俺は怪しいモンじゃないよ?」
「……何者だ?……いや、いい。」
ノックスは男を無視してヒロキとレイカにトドメを刺すべく刀を構える。
「ちょちょちょ!!待って待ってって!!……いや、こりゃだめだわ。」
男はノックスが問答無用で2人を殺そうとしていることに気付き、慌てて両者の元へと一瞬で移動し、2人の上半身を抱えて即座に消え失せてしまった。
忽然と姿を消したヒロキとレイカに、トドメを刺せなかったことに腹立たしさを覚えたノックスであったが、事は急を要することだと即座に切り替えることにした。
その時、礼拝堂の扉が開き、見やった先にはノエルとノアがノックスと合流した。