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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第23章 全面戦争
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飛空艇

 サントアルバ教国へと近づき、ノックス一行は近くの岸へと着岸させた。



 このまま海上から攻め入るにしては、アポカリプスの存在がある以上危険すぎると判断したためだ。



 明日以降から本格的に始まる戦闘に向け、一旦ここで小休止しようということになった。



「しかしじゃ、ノックスよ。ワシが空から教会を焼き尽くせばよかろう?」



 唐突にベリアルがノックスへと提案した。



「無用な犠牲は望んでいない。100%保証はできんが、出来ることなら民間人の犠牲は極力避けたい。」


「……分からぬのう。奴らが気に入らないのならば、全て滅ぼしたほうが早かろう。生き残りを作れば、其奴らが武器を手に取り復讐となるじゃろう?」


「全て滅ぼす、というのは、言葉で言うほど簡単なものじゃあない。戦争は始めるより終わらせる事のほうがよっぽど難しい。」


「……そんなものなのかのう………しかして、この後はどう攻め入るのじゃ?」


「教会は恐らく、陸と海を警戒し、ベリアルが空から攻め入るのを警戒する。」


「奴らのアポカリプスは厄介なものじゃしのう。見えぬ光など、ワシならともかく船ならば格好の餌食じゃ。」


「実際にアポカリプスを見てみると、致命的な欠陥がある事が分かった。そこを突く。」


「……ん……?……致命的な欠陥じゃと?」



 ベリアルとの会話が気になったのか、他の面々も興味を示して集まり始めた。



 ノックスはアポカリプスを実際に見て考察していた欠陥について皆に説明をした。



「まずは、アポカリプスは原理に関しては至ってシンプル。

 底部の球体の中に放射能物質が有り、それから発せられる放射線を1箇所に集めて照射させている。

 だが、有効射程を伸ばすためにあれほど大きな装置になってしまっている。

 そのせいで容易に持ち出すこともできず、使用するならば船に載せて照射するか、固定台座からの照射となる。」


「……なんの事だかさっぱりじゃが……?」


「要は、簡単に動かせない、という事だ。故に、高速で動き回る対象に当てるのが難しい。」


「ならば、先と同じ戦法を教国付近でもやるというわけか?」


「…いや、同じ戦法は使わん。先の戦法は水深がある程度深いからできたもの。教国付近となると水深が取れず、船を意図的に沈めるには浅すぎる。」


「ならばどうするのじゃ?」


「……なるほど、ノックス様!いよいよアレを使うわけですかい…!?」


「その通り。」



 副船長のドレッドが嬉しそうにノックスに話した。



「……む?なんじゃなんじゃ?ワシ聞いておらぬぞ!?」


「え!?なんッスか!?俺も聞いてないッスよ!?」


「ならば2人とも、明日を楽しみにしていろ。」


「うわーーー!!チョー気になるーーー!!」


「……ふふふ……実は、私もものすごーーく楽しみにしておりました……」


「な、なんじゃと言うんじゃ!?気になって眠れんぞ!!」


「ともかく食事の準備を。」


「「「はっ!!」」」


「「気になるーーーーー!!!!」」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 翌日、朝日が昇るやすぐさまアインとベリアルは何が始まるのかとワクワクしていたが、それはどうやらノエルやナタリアらだけでなくノックス自身も高揚していた。



 テントを素早く片付けた後、停泊させていた船の帆を全て取り払う。



「陸から攻めるんッスか?」


「陸から、と言えばそうではある。歩いて行く訳では無いがな。各員、船に乗り込め。」



 帆を片付けさせたにも関わらず船に搭乗させられることにアインもベリアルも首を傾げていた。



 所定の船に全員が搭乗したところで、無線機からノックスの指示が飛ぶ。


「レヴィア、ベリアル。舵輪の後ろにある部屋が見えるか?」


『あぁ、見えておるぞ。』


『そこの中へ入ればよいのか……?』


「そうだ。その部屋の中にも無線機がある。」



 ノックスの指示で2人が部屋の中へと入った。



 そこには机と椅子が置かれており、机にはメーターが取り付けられ、椅子には受容体となる水晶が設けられていた。


 2人は早速椅子へと腰掛けると、無線機から指示が飛ぶ。



「2人とも腰掛けたな?椅子に取り付けられている水晶に雷魔術を流し込め。そうすれば机のメーターが動き出す。

 詳しいことは省く。1番右のメーターが『Full』を指すまで雷魔術を流し続けろ。」


『……そうすると何があるのじゃ……?』


『……ノックスよ……これはもしや……!?』


「説明するより見てもらったほうが早い。2人とも、良いな?」


『……仕方ないのう。スイーツを弾むのじゃぞ。』


『ガハハハハ!!何をするのか読めてきたぞ!!』



 3人は水晶に雷魔術を流し込み、やがてメーターが『Full』を指す。



「他は準備、出来ているな?」


「本船、準備完了であります!」


『アルファ、準備完了であります!』


『ベータ、同じく準備完了であります!』



 セイレーン号含め、3隻の船のマストにいくつものプロペラが取り付けられ、プロペラの下には風を受けるための魔石が付けられていた。


 何が起こるのか理解したアイン他、皆は胸を踊らせながらその時を待つ。



「……では、全船、浮上する!!」



 ノックスの合図と共にプロペラが回転し始め、そこで生み出された風は魔石を介して船の底部から噴出される。


 船は徐々に陸から離れ、世界で初めての飛空艇が大空へと浮上した。



『…な、なんと……!!』


『すっげぇ………すっげぇッスよノックス様!!フライトボードとみたいに空を……!!』


「仕組み自体はフライトボードと同じだ。むしろ、フライトボードを製作したのは、この飛空艇を作るために製作したんだ。」


『……ふ…船が空を飛んでおるなど……信じられぬ!!』


『で、でもノックス様…こんなのがあるなら最初から飛んでいけば…』


「飛空艇は風の影響をモロに受ける。それと、最初から飛行していくとなると魔力消費も大きい。

 更には、アポカリプスの性能自体が未知数だったからな。」


『……た、確かに……』


「2人とも、メーターの残量には注意してくれ。

 では、サントアルバ教国に向けて、発進する。」


「「「「はっ!!!!」」」」



 3隻の飛空艇は大空へと舞い上がり、サントアルバ教会を目指し飛び立っていった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ノックス様、サントアルバ教会が見えてきました。」



 リドルから報告があがる。



「総員、戦闘配置。」


「「「「「はっ!!」」」」」



 船首に取り付けられている砲撃に兵が付き、魔道舞台は魔障壁をいつでも展開できるよう船首に並び立つ。


 更には発見を遅らせるためにも高度を落とした。



 よもや大空を飛行する飛空艇から進撃してくるとは思っても無い教会兵らは海岸線に兵を多く配置させており、飛空艇を目視出来るようになってから初めてノックスらの接近に気づく。


 慌てた教会兵は飛空艇に向けて矢や魔術を放つも、全て魔障壁が跳ね除け、逆に飛空艇から放たれた砲撃が教会兵らを襲った。



 飛空艇からノックスが飛び降り、ノエルも続いた。



 大地へと降り立ったノックスは教会兵らを一瞥する。



「手荒い歓迎、感謝する。アズラエル教皇との謁見を希望する。」


「……ふ……ふざけた事を……!!……貴様ら魔族は滅ぶがいい!!」


「ならば勝手に会わせてもらおう。」



 ノックスが手を挙げ合図をすると、シュエットから放たれた矢が教会兵らの脳天を次々と射抜く。


 飛空艇を着陸させ、ベリアルとレヴィア、ナタリアらも続いて飛空艇から降り立った。



 コリンら新兵はスケルトンと残って飛空艇の防衛に徹する。



 ノックスは部下たちを率いて正門から堂々とサントアルバ教国へと足を踏み入れた。



 完全に意表を突かれた教会は易々とノックスらの侵入を許してしまったのだ。



 教国内は魔族の進撃を許してしまったことでパニックを起こし、悲鳴を上げて逃げ惑う。



 それをかき分けて教会兵がノックスらの前に立ちはだかった。



「こ、これ以上は進ませんぞ!!」


「立ち向かってくるなら命の保証はせん。死にたくなければ剣を収めよ。」


「……くそっ……魔族風情が……!!舐めるな!!」


「…ノックス様。ここは私めが。」



 ナタリアがノックスの前に出、尚も立ち向かう教会兵らと対峙する。



 ナタリアは薙刀でもって次々と教会兵を切り伏せてゆき、教会兵らは全くもって相手にならなかった。



 その後もノックスは歩み続け、教会本部を目指してゆく。



「……そこまでにしてもらおうか。ノックス国王。」



 立ち塞がる教会兵らと共に、1人の青年が躍り出た。



「……アンタは……!」


「……ロザリオ……!!」



 リッチ討伐の際に協力していたロザリオが、ノックスらの前に立ち塞がる。



「貴様がロザリオか。」


「初めまして、だね。この教会に、いよいよ本格的に戦争を仕掛けにきたのかい?」


「アズラエル教皇はどこにいる?奴に会いにわざわざイブリースから来てやった。」


「……残念だけど、貴方を教皇にお会いさせる訳にはいかないね。」


「ロザリオ、貴様は知っているのか?教会が非人道的な兵器を作り上げ、それを教会の奴隷相手に実験をしたことを。」


「……何……?………何のことだ……?」


「……その反応が真実だと言うのならば、アズラエルは真の外道であり、ロザリオを信用していない、ということだ。」


「……僕には………」



「聞く耳を持つで無いわ!!」



 何者かが両者の間に割って入り、会話を中断させた。



「…ジオード…!」


「魔族の妄言に耳を貸すなロザリオ!!此奴らは我らの敵!!神聖なる教国に足を踏み入れた事、死に値する!!」


「……ジオード、ということは貴様も12使徒か。敵対するなら相手をしてやるが、俺の見立てでは貴様はノアで十分だ。」


「フーーーーッ!!」



 ノアはジオードを睨みつけて威嚇する。



「……侮りおって………たかが猫に俺が負けるとでも……!!」


「ロザリオ。貴様はどうする。」


「……如何なる理由があれども、僕は引き下がる訳にはいかないよ。」


「なるほど。」


「……ノックス様。ここは私にお任せを。」



 ノエルがロザリオの相手を引き受ける。



「……いいだろう。ではこの場はノエルとノアに一任する。先に行くから必ず追いついてこい。」


「……ありがとうございます……!」


「ミャウ!!」



「待て!!誰が貴様らを行かせると……!?」



 ノックスが尚も教会本部へと歩き始め、それを阻止しようとしたジオードだったがノアがジオードに襲いかかって立ち塞がった。



「……このっ……!!」



 ジオードはノアをさっさと始末してノックスを阻止しようとするも、ノアはジオードから繰り出される槍をヒョイヒョイと軽々躱し、時折隙を見ては反撃を行っていた。



「……やはり、僕らは戦い合うしかないようだね。」


「……残念だが、そうなるな。手を引くと言うのならば、見逃してやる。」


「はははっ。それはお優しいね。

 ………でも、分かっているだろう?そういう訳にはいかないってことを……」



 ロザリオはゆったりと剣を抜き、ノエルもまた双剣を構え対峙した。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ノックスたち一行は足を止めることなく教会本部へ向けて進行する。



 教会兵の数が増していく一方ではあるが、ナタリアを筆頭にアインとマイナ、ハイゼルが薙ぎ倒してゆく。



 ベリアルは退屈そうに欠伸をしていた。



「…数だけは多いな。」


「所詮数だけは多い雑兵どもじゃ。妾らの足止めにすらならぬわ。」


「退屈じゃのう。もう少し歯ごたえのありそうな奴は出てこんのか。」



 ノックスらは一切歩みを止める事無く一直線に本部を目指す。



 その間でも教会が何か仕掛けてこないかを警戒していたものの、教会は今回のノックスらの襲来は想定外だったようだ。



 やがて教会本部前へと到着した。



「ここが教会本部か。」


「アズラエル教皇がいるとしたら、ここ以外には考えられません。」


「……にしても、やはり警備の数が多いな。」


「ノックス様、ここは我々が…」


「いや、構わん。俺がやる。」



 そう言うとノックスは隠密スキルを解除させ、とてつもない気配により教会兵らが腰を抜かす。



「『砂粒縛・礎』!!」



 そこへすかさず砂粒縛を展開させ、周囲にいた教会兵らの動きを強制的に止めさせた。



「……な……か、から……だが………」


「悪いが貴様らの相手をしているほど暇ではない。通させてもらう。」


「……ま………ま…て………!」



 動きを封じた教会兵らを押しのけ、ノックスら一行は教会本部となっている建物内へと足を踏み入れていった。

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